5588 優れた戦略思想家・内田良平 宮崎正弘

西アフリカの資源地帯も破天荒に掻き乱すチャイナ・マネー。ナイジェリアの油田開発に230億ドル、ガーナとケニアにも触手。
ナイジェリアと言えば、英国から見ればビアフラ戦争の悲惨な想い出。欧米メジャーから見れば、これまでの特権的利権がゲリラの油田襲撃によって危ぶまれる危険地帯。つねに部族対立が尾を引いて統治の難しい国である。
だが中国にとっては戦争であれ、内乱であれ、部族衝突であれ、ゲリラ討伐であれ、社会騒擾であれ、カネが儲かると聞けば構わない。
どこへでも進出する逞しさは、韓国民も同じだが、規模が異なる。ひ弱になった日本人は逆立ちしても、このエネルギーには適(かな)わないだろう。
ナイジェリア・デルタは湿地帯。小舟にロケット・ランチャーを積んだ反政府ゲリラは葦の影をすいすいとボートを漕いで目標に接近し、欧米メジャーの精油所を襲撃し、爆破を繰り返した。ほとほと嫌気がさした欧米企業は大規模に撤退した。
いまもナイジェリアに残るイタリアの石油会社もエンジニアの誘拐を懼れ、高い塀で囲まれた施設に暮らしている。
そこへ中国がやってきた。
欧米も見て見ぬふりをするようになった。なにせIMF増資にポンと500億ドル、アジア通貨基金に380億ドルを拠金したた中国はカネにあかせて“アジアの盟主”顔をしはじめる。
「ロシアには石油代金を250億ドル前払いという気前の良さ。合計300億ドルを豪州の資源鉱区開発に投下し、ナイジェリアとガーナとケニアにこれから投下する金額は合計で700億ドルに達する」(ウォールストリートジャーナル、5月15日付け)。
中国とナイジェリアは「資源パートナーシップ」を締結し、三つの精油所を建設することに合意した。投資金額は230億ドル。
  
▲ナイジェリアをコントロールできた国はない
産油国としてのナイジェリアは国内のガソリン消費に追いつかず、しかし精油所は設備が老朽化し、効率が悪く、新しい設備建設を欧米メジャーに呼び掛けたが、欧米は消極的だった。
替わりに色気を見せたのはインドだった。
2006年に300億ドルの入札に応じたが、結局、詳細を詰める契約段階でインドは飲めない条件があり、プロジェクトから降りた。ガソリンをナイジェリア国内に利益を度外視した廉価で供給する義務をうたう条項があったと言われる。
現在、中国が輸入する石油量は一日477万バーレル。昨年、中国がナイジェリアから輸入した石油は一日2万8000バーレルに過ぎず、これから建設する三つの精油所は一日25万バーレルの生産が予測されると豪語している(同上ウォールストリートジャーナル)。
だが、ナイジェリアは政情不安、しかも商売のずる賢さはインド商人(印僑と言われる)の上をいくこすっからさで有名であり、中国は、いったいこの国のビジネスマンを御することが出来るのか?石油関係者は興味津々で事態の成り行きを見守っている。
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(読者の声1)貴著(宮崎正弘 + 内田良平研究会編著)『シナ人とは何か ――内田良平の「支那観」を読む』(展転社)を読んでの感想です。
近頃の日本外交は中国の外交に手玉を取られて面白くない。日本は軍事力を補う意味でも戦略的布石による外交力の強化、発揚、発揮があって然るべきである。
明治二十年代より大正にかけて内田良平の実地調査に裏付けられた国家戦略に基づく対支戦略への献策、論述の確かさは支那社会構成の三層性と個、集団として、もっともバラバラの国民性の観たてだが全体としてその特性を捕らえ国の全ての基本となることを論じている。
一方、よく云われる日本の大陸進出は単なる侵略とは云えず、当時の支那が列強のイギリス、ドイツ、フランス、ロシアの云うまま領地の割譲化を許し、南北二派の内乱情況の中、日本を頼って日本に亡命した自国の国士とその一体化した在野の日本をあろうことか諸外国側に立って敵視している当時の支那の状態を無視しては成り立たない話である。
日本は対岸のその情況に対していずれは日本にもと、国防上見逃すわけには行かなかった。腰の据わらない本国にあって日本を見習い独立を目指して日本に亡命してきた孫文を含め少なからぬ支那人を日本官憲からも守った多くの日本人宮崎滔天、頭山満等など、又武装蜂起に加わり革命戦に殉難した有名無名の日本人の烈士あり。内田は孫文を信用してなかったものの結果としても裏切られた。
中国は孫文を国父としながらそのような日本、日本人の志士の存在を無視するのみならず後年に、あり得ない南京事件をデッチあげ己れの助けとして内外に宣伝し政治的に悪用している。
内田は真に命を懸けて支那及び支那人に対する援助を通じ支那の国民性の性悪さに日本政府に対し同情的な感情移入し誤ることなきように献策した。
いまの中国というのは、チベットに対する政策とか資源あさりによる他国に対する動きとか乱入といってよい。このような国に経済的問題であっても目先不用意に仕事を進めることは戦略的に問題がある。
周囲の国々をよく観察し特にシナに対抗的な大国インドとは歩調を合わせバランスをとりながら諸事進めていくことは極めて有効である。
中国の突出を警戒しているアメリカのアジア戦略とも一致し、アジア、世界平和に寄与すること大である。今の政権の感覚は極めて危うい。
そのような広い思考を進める意味でも優れた戦略思想家であるうちだ良平にいま学ぶことの意義は極めて大きいと思われる。(YS生)
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(読者の声2)アフガニスタン戦争の泥沼化ですが、結局、オバマ大統領は軍部、共和党に嵌められたのです。「罠」ですね。ワシントンポストの記事には400ぐらいのコメントがあったが、100%が「敗戦宣言をして撤退しろ」です。ベトナム時代の将校までが。
しかしオバマは恐いのです。軍産複合体(軍需産業+ペンタゴン+CIA)の脅迫です。イラクも、アフガニスタンも防衛産業に巨大な利益を齎す。ケネデイは、MIC(軍産複合体)に殺された。ならばなぜ、鳩山を殺さないか? 三文の価値もないからです。
ところで『アトランテイック・マガジン』(6・7月号)にRobert D Kaplanが、「地政学・チャイナの拡大」の単稿を書いたことで、出版人でチャイナ・ウォッチャーの、James Fallowsが、反対意見を書いている。ほかノーム・チョムスキーなどは、痛烈に「Kaplanは極右・事大主義者だ」とか。
チャイナがUターンしてベアに向かう経済記事と合わさり、かってのベストセラーを書いたゴードン・チャンの『中国の崩壊がおこる』が売れる。最近、Glen Fukushima は日本エアバスの社長になり、チャイナを批判しなくなっている。(伊勢ルイジアナ)
(宮崎正弘のコメント)前節、刀が錆びる、ってやつですか。後節、チョムスキーなんて、いまや時代遅れの極左ですが、まだ活躍していること自体が驚きです。ファローズも、四半世紀ほど前にインタビューを申し込んで断られました(苦笑)。米国の左翼も保守とは議論したくないようですね。
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