5605 子ども手当を憲法違反で訴えよう 松沢神奈川県知事の論文 古森義久

民主党の子ども手当への反対論は勢いを増しています。なかでも新刊の文藝春秋6月号に神奈川県の松沢成文知事が寄せた「『子ども手当』は地方自治の仇」という論文は一読二読に値します。
その主要部分を紹介しましょう。とくに迫力のあるのは憲法違反の訴訟を考えようという提案です。
「(阻止の方法の一つは)子ども手当の正当性を法律面で問うことだ。今年2月に神奈川県は『国の政策と自治行財政権に係る検討会議』を設置し、子ども手当への一方的な地方負担の導入は重大な憲法上の疑義があるのではないかという点について議論している。政府が各自治体の了解なく、事実上、児童手当の財源を子ども手当に振り替えたり、地方の自主財源である住民税の一部を国の施策のために勝手に召し上げることは、憲法92条の『地方自治体の本旨』に反するのではないか。さらに憲法94条も含めて解釈すれば、憲法により授権されている自治財政権を侵害するのではないかと考えている」
そのほかにも松沢知事は子ども手当への反対の理由をあげています。その一つはばらまきによる国家財政破綻の危険です。
「今年度、子ども手当に必要な財源は約2・3兆円、来年度以降は5・3兆円となる。ちなみに、国の防衛費は約4・7兆円である。国家を護る予算よりも大きな税金をバラまき、それは巡り巡って、将来世代が負担する国の借金となる。『子どものため』といいながら、当の子どもに莫大な借金を残す矛盾した政策といってよい」
さらに松沢論文で注目されるのは、子ども手当の背後にある思考は独立自尊の考えに反するという点です。国民の依存心を強めるというのです。
「二番目の(反対の)理由はばらまき政策は国民の依存心を強めるからだ。
民主党は当初、社会全体で子育てをしていくために子ども手当を創設するのだと主張していたが、途中から景気対策の面もあると言い始めた。
『不況だから』といって、現金をばらまく政策は、自立して生活ししよう、自前努力で経済を成長させていこうという国民の意識を着実に蝕んでいく。
政府の役割とは、端的に言えば、税金を国民から集め、それを効果的、効率的な公共サービスとして国民に提供することである。例えば、学校を建てる、先生を雇う、福祉施設を作る、道路を作る、お金を欲しがっているところや、選挙で票になりそうなところへ、現金を右から左へばらまくのは政府の仕事ではない。税金を集めて、それを現金のままで配り直すのであれば、そもそもの税金を安くすればいいだけである」
以上の点以外にも松沢知事はいろいろ子ども手当と、それに象徴される民主党政権のばらまき政策をきわめて説得力のある記述で徹底的に批判しています。
現職の県知事、しかも国政でも活躍してきた松沢氏の言、重みがあると感じるのは私だけではないでしょう。
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