5613 官房長官が『いい』と言ってるから大丈夫だ 古沢襄

北朝鮮が「全面戦争も辞さない」と声明しても誰も本気にしなくなった。今の北朝鮮の軍事力では米韓軍の敵ではない。「断固対処していく」「無慈悲な懲罰で強力に対応する」という脅し文句が空しく響くだけである。だからと言って、この事件が朝鮮半島情勢を緊迫化させ、日本の安全保障にも深刻な影響を与えた事実を看過することは許されない。
21日にクリントン米国務長官が来日するが、普天間移設の問題よりも、朝鮮半島有事も視野に入れた日米間の緊密な連携を確認の方が重要事項となった。朝鮮半島の緊張が高まった場合、周辺事態法に基づく自衛隊による米軍の後方支援活動や、在外邦人保護・輸送の安全確保が課題となる。
「自衛隊の警戒レベルを引き上げなくていいのか」と20日の衆院本会議場で、中井洽国家公安委員長が首相にささやいたという。首相の返事は「平野博文官房長官が『いい』と言ってるから大丈夫だ」と答えるだけだった。
韓国海軍哨戒艦が沈没した水域は比較的に浅く、水中爆発させた魚雷の破片・部品が回収されたのは、北朝鮮にとって誤算だったろう。北朝鮮によるテロ攻撃は、今度が初めてではない。その度に北朝鮮は捏造だと主張し、制裁が加えられれば「全面戦争も辞さない」と脅しをかけた。
韓国の朝鮮日報は特集を組んで、国際社会が北朝鮮の挑発行為に前例のない強い語調で憤りを表明したというキャンペーンを張っている。韓国海軍の軍人46人が命を奪われた事件だから、李明博政権も強硬な姿勢を崩すわけにはいかない。
しかし、その一方で李明博政権が韓国海軍哨戒艦の沈没調査で示した客観性と厳密性によって、米国やEU各国の韓国に対する信頼が高まった。英外相は「イギリスは北朝鮮の今回の蛮行について多国的措置を考慮すると共に、韓国と緊密に連携する」と述べた。中国ですら調査報告書の客観性と厳密性を高く評価した。
このことは、むしろ追い詰められた北朝鮮が、どのような次の行動に出るか、予測出来ない面がある。官房長官が『いい』と言ってるから大丈夫だ・・・という話ではない筈だ。
<【ソウル=水沼啓子】北朝鮮の対韓国窓口機関「祖国平和統一委員会」は21日、韓国海軍哨戒艦沈没の調査結果発表を受け、事態を「戦争局面」と見なし、南北関係で提起されるすべての問題について「断固対処していく」と警告する声明を発表した。朝鮮中央通信が伝えた。
祖国平和統一委員会は、韓国が制裁措置などを取る場合、南北関係の全面断絶や南北不可侵合意の全面破棄、南北協力事業の全面撤廃など「無慈悲な懲罰で強力に対応する」とした。
韓国政府は、今回の調査結果により哨戒艦沈没原因が北朝鮮による魚雷攻撃と断定されたのを受け、国連安全保障理事会への問題提起や独自の対北制裁を行う方針だ。北朝鮮側の声明は、こうした韓国側の動きを牽制(けんせい)する狙いがあるとみられる。
調査結果が発表された20日には、北朝鮮の国防委員会が声明で、調査結果について「捏造(ねつぞう)だ」とし、「制裁措置が取られれば、全面戦争を含む強硬措置を取る」と強く反発していた。(産経)>
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