5626 児童連続殺人事件の連鎖と中国社会の病理 宮崎正弘

ジニ係数は0・61、これでも中国は国家といえるのか?広東省、江蘇省、福建省の児童連続殺人事件は悲しみと怨念の連鎖。
TIME(5月31日号)が特集を組んでいる。中国における児童、幼児連続大量殺人、殺傷事件の背景を貧富の差、虐げられし人々の怨念と分析している。
 
三月に江蘇省泰州市でおきた32人の傷害事件。犯人の徐玉元には死刑判決がでた。徐は賭け事に全財産をすり、失業と貧困に絶望し、「社会へこの怒りをぶつけるためにやった」と公判で述べた。
福建省南平市では小学生13人(うち八名が死亡)を殺傷した犯人、鄭民生は4月28日に死刑が執行された。かれは失恋が原因で精神異常となったと報じられた。
その日、広東で教師が教員らを殺傷する事件がおき、さらに翌日は江蘇省で、その翌日には山東省に飛び火し、同様な殺人事件は広東省仏山市でも起きた。
悲劇の「連鎖」だが、共通のパターンはみられず、中国のメディアはさかんに「精神異常者」とばかりを報じる。
五月十二日には山西省の幼稚園で園長に解雇されたことを恨んだ犯人がまず81歳の母親を殺し、つぎに園長を殺し、幼稚園児七人を殺し、あげくに自殺した。
中国のメディアは「精神状態のおかしな人間が増えて、これでは和階社会などあり得ないのではないか」と報道した。
これがかえって類似犯罪を惹起させる引き金をひく。当局は、現在、このような報道の規制に乗り出した。「連鎖を生むおそれが高いので、報道を控えるように」指導しているらしい。
▲社会病理として、精神異常者が増えたからという原因究明だけで良いのか?
「犯人に共通するには友人がいない、家族との絆が希薄な点である」などと中国の犯罪心理学者の分析をTIMEが引用しているが、そういう表面的なことですまされる問題ではない。
 
富の独占が行われ、汚職が横行しているのに、高級幹部や共産党それ事態の犯罪を見逃し、およそ国家の体をなしていない現実に末端の民衆は「怒」を示しているのではないのか。
国家の富を寡占し、一部の特権階級だけが太り、その子らが通う高級な幼稚園は、おそらく自分の子や孫を通学さえさせられない庶民からみれば怨念の対象であり、物理的行動に出やすい心理状態が生まれる。
2002年におきた「南京大毒殺」(ライバルのレストランを恨んで店主が毒を入れ、49名が死亡)事件以後、毒物が厳しく規制されたため、ナイフが凶器として登場する。
「幼児や婦女子を狙うのは凶器がナイフという殺傷力の問題もあるが、社会的衝撃が大きいのも怨念を溜めこんでいる犯人にとって考慮に入れている」(同誌)。
北京だけでも保育園、幼稚園に2000名の武装警察が警備の任についたほか、私設ガードマンの需要も増えている。身分証明がないと学校、保育所、幼稚園にも近づけないことになっている。
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