5636 ヒラリーは米中が世界の未来を創世すると演説 宮崎正弘

米中「経済戦略対話」は、事実上のG2、経済より政治を優先対話。クリントンは日本に立ち寄ったが、ガイトナー財務長官はまた頭越し。
日本に三時間だけ立ち寄って不気味な愛想を振りまき、急いで機上の人となったヒラリー・クリントン米国務長官は北京にいる。24日から人民大会堂ではじまった「米中戦略経済対話」に出席するためだ。
上海万博を皮切りに五日間、ヒラリーの中国訪問は、200名の財界人を同道している!ガイトナー財務長官も。迎え入れる中国側のボスは王岐山・副首相だ。王岐山はリリーフ投手として豪腕をふるい、近年は対米経済政策の中心人物と見なされており、端倪すべからざる指導者である。
もっとも上海万博のアメリカ館はおそまつなモノで、日本館にくらべると見劣りがするという。
これは上海万博に積極的ではなかったアメリカ館の建設を昨年訪中したヒラリーが、「やってみましょう」と北京に確約し、しかし米国では国家予算は取れず、ヒラリーがかけまわってコカコーラなど中国進出企業から拠金を集め、それでも足りず、ヒラリーの選挙マシンを駆使して、建設資金を工面した経緯があり、ヒラリーにとっては思い入れが深い。
ともあれ小沢訪中団は600名だが、クリントン訪中団は実力をともなったビジネス・エグゼクティブを同道しているから北京の扱いも丁寧。
この米中戦略経済対話とは、当初は「経済」政策だけをはなしあう機会として設定されたが、昨年から様変わり。事実上のG2の機能を果たしている。すなわち米中が「世界秩序」「世界経済」を話し合い、イラン、北朝鮮、ユーロ問題を討議しているからだ。
「しかも昨年からは従来の、米国が北京に対して世界経済秩序や規則を説得するというスタイルが豹変し、米国に中国が説得するという逆の図式になっている。それもこれも中国の外貨準備高を米国が見守っているからだ」(キャサリン・マクラーリン『グローバルポスト』、5月24日付け)。
「ガイトナー財務長官は、演説の中に人民元切り上げ要求を挿入しなかった」(ヘラルドトリビューン、5月25日付け)。
▲胡錦濤がいきなりでてきた
中国側は冒頭に胡錦濤が演説し「人民元改革は緩やかに」と先制のパンチを浴びせた。そして米国はアジェンダから人民元問題をとり払った。
「ヒラリーは米中が世界の未来を創世すると演説した」(在米華人の『多維新聞網』、25日)。続けて、「両国はイランの核、北朝鮮の引き起こした韓国哨戒艦沈没、ギリシア債務危機、貿易不均衡等の問題で緊張しているが」としたうえで、ヒラリーは中国古代の詩を引用して会場を和ませた、と同紙が報道している。
「山窮水尽疑無路、柳暗花明又一村」(ヒラリーが引用。同紙)。
ガイトナー財務長官は、人民元切り上げ要求を一切述べず「公平な貿易」と抽象的曖昧な語彙を選んだ。(ウォールストリートジャーナル、24日)
ようするにG20のシステム化に中国は協力すべきであり、さらには公平な貿易の確率には創造性がなによりも必要と間接的に中国を批判したのだが、直接表現を避けたということである。
肝心の北朝鮮とイラン制裁でも中国は国連にその解決の場をゆだねることに同意しながらも、積極的な制裁姿勢を一切見せなかった。
米中関係はかくも様変わり。ヒラリーの頭の中では、三日前に立ち寄ったばかりの日本のことを「なんと御しやすい国か」と感嘆したことだろう。
       
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