鳩山連立政権にとって最大の危機を迎えた。鳩山首相は28日夜、首相官邸で社民党党首の福島消費者・少子化相と会い、沖縄の米軍普天間基地移設問題を巡る政府方針に理解を求めた。しかし福島氏は名護市辺野古への移設は認められないとして拒否、首相は福島氏を罷免した。
外交・安全保障政策で”水と油”の関係にある民主党と社民党だから、いずれは対立が表面化するのは目にみえていた。参院選を目前にして福島氏が罷免されたことの影響は見逃せない。社民党は30日の全国幹事長会議で、連立離脱の可否について最終決定するが、離脱する公算が大きい。
連立離脱となれば、政治的に見て鳩山政権に与える打撃は深刻なものになる。
振り返れば、この問題で鳩山首相が5月末決着を設定したことに原因がある。みずからの発言で、鳩山首相が手足を縛られた”自縄自縛”が、閣僚罷免を招いたことになる。選挙を預かる小沢幹事長としては、内心で憤懣やるかたがないものがあるだろう。
社民党は参院比例区で三百万票の集票力がある。全国で29選挙区がある一人区では、社民党は候補者を立てないので、この票が選挙協力によって民主党の候補者に投じられることが期待されていた。二人区以上の選挙区においても、社民党が候補者を立てないところは、民主党候補に流れるとみられていた。
福島党首の閣僚罷免→社民党の連立離脱となれば、社民党の支持層は民主党にすんなり投票するであろうか。閣僚を罷免されて、民主党に投票する義理はない。少なくとも沖縄県の選挙民は、そう思うであろう。といって社民党の支持層が自民党候補に投票することはあり得ない。社民党も深刻なジレンマを抱える。
<鳩山由紀夫首相は28日夜、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題への対応をめぐり、社民党党首の福島瑞穂消費者行政担当相を罷免した。官邸で開いた臨時閣議で決定した。名護市辺野古に移設するとした日米共同声明を受け、首相は基本政策閣僚委員会で政府方針の閣議決定に署名するよう求めたが、福島氏が拒否した。社民党は連立政権を離脱する公算が大きく「重大な決定をせざるを得ない」との声明を発表した。
首相は記者会見で、3党の連立体制を維持する考えを強調。「沖縄の基地問題に取り組み続けることが自分の使命だ」と述べ、夏の参院選に向けて続投に意欲を示した。
だが「県外移設」を公言しながら実現できなかった上、閣僚を罷免する事態となり、首相の責任が問われるのは必至。社民党との連立が解消されれば、参院選への影響は大きく、進退問題に発展する可能性もある。
福島氏の職務は平野博文官房長官が代理で務めるが、鳩山首相は連立維持のため社民党内から後継を選びたい意向とみられる。ただ同党の反発は必至だ。
福島氏は会見で罷免について「沖縄を切り捨てることだ」と首相を批判した。社民党は30日の全国幹事長会議で、連立離脱の可否について最終決定する。(共同)>
<米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設問題をめぐり、党首の福島瑞穂消費者・少子化担当相が罷免されたことを受け、社民党は28日、連立政権から離脱する方針を固め、政府・民主党との関係を見直す方向に舵を切った。ただ、すでに新潟などで行われている参院選での選挙協力については28日、民主党の小沢一郎幹事長と社民党の重野安正幹事長の間で維持していくことで一致した。
小沢氏は同日午後、重野氏に電話し、「福島氏の罷免に関係なく、選挙協力はお願いしたい。『それはそれ、これはこれ』ということで」と持ちかけた。
連立離脱による最大の懸念が民主党との選挙協力の破(は)綻(たん)だっただけに、重野氏も小沢氏の申し出を受け入れた。
もっとも、これまで連立維持に躍起になっていた党執行部からも「選挙協力も当然、ご破算だ」と、民主党との関係を見直す発言が出ている。連立離脱で民主党との「対立軸」を鮮明にした上で支持拡大につなげたいとの考えからで、小沢-重野ラインの選挙協力維持は、今後党内で論議を呼ぶ可能性もある。
社民党は30日の全国幹事長会議で連立離脱を正式決定する方針で、辻元清美国土交通副大臣も辞任させる方向で検討している。党執行部が当初模索していた連立維持から連立離脱でまとまったのは、閣外協力などの形で政権にとどまるより、野党に徹して政府・民主党への攻勢を強める方が得策と判断したためだ。
社民党は28日夜「罷免に抗議する」と題した声明を発表。「連立政権のあり方について重大な決定をせざるを得ない。誤りのない最終判断を下すこととしたい」と宣言した。しかし、選挙協力を維持したままの連立離脱が国民の理解を得られるかは未知数だ。(産経)>
<「言葉に責任を持ちたい」。米軍普天間飛行場移設問題をめぐり、消費者行政担当相を罷免された社民党の福島瑞穂党首は28日夜、党本部で記者会見。「言葉の軽さ」を指摘される首相を意識したかのような言い回しで政府方針に従わなかった理由を説明し、「罷免は沖縄の切り捨てだ」と語気を強めた。
予定より約15分遅れ、政府方針を決定した臨時閣議終了の直後に始まった会見。会場に入った福島氏は少し疲れた表情で視線を左右に動かした。罷免されたことを淡々と説明し、「わたしは言葉に責任を持つ政治をやっていきたいと思います」と言い切った。
100人以上の報道陣を前に、マイクを握り締めた福島氏は「その言葉に従ってサインをしませんでした」と強い口調。「社民党、私は沖縄を裏切ることはできない。沖縄の人たちにこれ以上の負担を押し付けることに加担できない」と話したが、政権離脱については明言を避けた。
この日の福島氏は大臣の職務をこなしながら、与党内の水面下の交渉を続けた。大臣として会議出席後の午後3時前には、突然執務室から出てきて、報道陣に「罷免するということはわたし個人を切ることではなく、社民党を切ること」と一気にまくしたてる場面もあった。
正午すぎから開かれた党の両院議員の会合。閣議で署名はしないとの従来の方針を確認した。会場から出てきた阿部知子政審会長は「連立を維持すべきは大原則だが、向こうの出方による。望んで(連立を)破棄しようとは思わない」と訴えた。
別の議員も「(政府方針に)サインをしたら鳩山首相と同じ。二枚舌と言われる。ここで踏ん張らないといけない」と話していた。(共同)>
<普天間移設>民主も首相批判噴出 小沢氏沈黙、助け舟なし
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題で迷走を繰り返した末に「辺野古」に回帰した鳩山由紀夫首相に対し、足元の民主党内からも批判が噴き出している。鳩山内閣の支持率低迷が夏の参院選候補者を直撃しており、首相の退陣を期待する声も漏れ始めた。社民党の反対に揺れる政府に助け舟を出すこともなく沈黙を守る小沢一郎幹事長の姿勢が首相を突き放していると受け取られ、首相批判に歯止めがかからなくなっている状況だ。
普天間問題をめぐり最近の小沢氏は24日の記者会見で「代表(の発言)と党の公約は基本的に同じ」と首相に苦言を呈したほかは表だった言動を控えている。
周辺には「社民党との連立維持は不可欠だ。政府は何をフラフラしているのか」といら立ちも見せているが、一方で党幹部に「普天間問題は政府に任せるように」と深入りを避けるよう指示。側近は「小沢氏は首相との連絡もとっていないはず」と言う。首相と小沢氏が顔を合わせる政府・民主党首脳会議も定例日の26日の開催が見送られた。
本来、党内への抑えになるはずの小沢氏が政府と距離を置いていることで、党内に募る首相への不満が表面化した形だ。輿石東参院議員会長が26日の議員総会で「国民にはマイナスの面しか見えてこない」と批判したのに続き、27日に国会内で開かれた参院民主党の会合では夏に改選を迎える議員から「一刻も早く何とかしてほしい」と暗に鳩山首相の退陣を求める声も出た。党内には「鳩山政権は八方ふさがりだ」(党幹部)との困惑が広がる。
「現行案回帰」の修正を促す動きも出ている。川内博史衆院議員らが27日夜、将来の国外・県外移設実現を求める与党議員約180人分の署名を首相官邸に届けた。応対した松野頼久官房副長官は「まだどう決着するか分からない。首相と相談し、文言調整にどう反映できるか」と述べたという。呼びかけ人には社民党の照屋寛徳国対委員長らとともに、小沢氏に近い奥村展三・民主党総務委員長や、有力支持労組の日教組や自治労の出身議員も名を連ねている。
輿石氏らの発言や署名活動に沈黙を続ける小沢氏の側近議員からは「鳩山内閣は完全に統治能力を失っている」とあからさまな首相批判も飛び出し、政府と党側の相互不信も高まっている。(毎日)>
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5663 小沢氏は「福島氏の罷免に関係なく、選挙協力はお願いしたい」 古沢襄

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