鳩山首相が普天間移設で名護市辺野古への日米合意案に回帰する意向を固めたのは昨年の12月だったという説がある。ルース米駐日大使との会談で、その意向を洩らしたが、政局に与える影響を考慮してパンドラの箱に深くしまい込んだ。
5月末決着は日米関係を考慮した岡田外相の進言だという説もある。半年近い時間をかけて、辺野古回帰を徐々に軟着陸させることに首相は腐心したのであって、ブレたわけではないと鳩山側近は弁護する。民主党にとって、まさしくパンドラの箱なのだから、少なくともパンドラの箱を開けるのは、参院選後にした方が良かったのではないか。
米国との合意、沖縄県民に対する説得と納得、連立三党の合意形成という三点セットを同時に5月末に決着させるのは最初から無理がある。結局は日米合意を優先させて、成算がないままパンドラの箱を開けてしまった。その結果、辺野古回帰の日米共同声明の実行は、かえって難しくなった。
<沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題で、ヘリコプター部隊の訓練移転先として「徳之島」が明記された日米両政府の共同文書が発表された28日、徳之島の3町長は「移転に反対する民意は変わらない」と改めて受け入れ拒否を明言した。地元の反対を無視した形で盛り込まれた徳之島案。町長らは「これは政府との闘い。島民の総意で勝ち抜いていく」と対決姿勢を鮮明にした。
県庁知事室での3町長と伊藤知事の協議は約40分間、非公開で行われた。3町長によると、伊藤知事が「これからも民意を守っていく」と発言し、4人で足並みをそろえて政府に反対の意向を伝えることを確認した。
協議後に記者会見した3町長は、共同文書と政府の対応を口々に批判した。
大久保明・伊仙町長は、「5月末決着」にこだわった鳩山首相の姿勢を「参院選に向けて政府の事情があったのだろう」と分析した上で、「7日に鳩山首相に絶対的な(反対の)民意を伝えた。首相は『民事は大事だ』と言ったのに、共同文書は民意を無視した」と厳しく指弾した。
平野官房長官が16日に移転推進派の島民らと会談したことにも触れ、「島民の気持ちはますます反対に向かっている。民意が変わることはない」と強調した。
大久幸助・天城町長は「国策といえども、政府が民意を抑えつけようとした場合、成田闘争以上に(激しく抵抗することに)なるだろう」とけん制。高岡秀規・徳之島町長は「本当に徳之島で訓練をやる意味があるのか、政府と意見交換をしないといけない」と対話に応じる姿勢を見せながらも、「民意は断固反対だということを伝え、しっかり反対する」と断言した。
3町長と伊藤知事は6月10日までに再度、首相官邸で政府側と会談する予定。7日は約2万6000人分の反対署名を鳩山首相に手渡したが、その後に集まった約1万5000人分の署名を提出するという。
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伊藤知事はこの日の定例記者会見で、「『適切な施設が整備されて』という文言は、どういう意味なのか分からない」と述べ、徳之島空港が軍用機の離着陸に必要な舗装厚が足りない点に言及。「緊急な事態と言いながら、(空港の整備には)相当時間がかかる」と、政府の対応の矛盾を指摘した。参院選への影響については「必然的に大きな問題になる」と語った。
金子万寿夫・県議会議長は「地元の理解が得られる状況にはないと考えており、断固反対する」とのコメントを出した。(読売)
パンドラの箱=ギリシア神話に出てくる。パンドーラー(Pandora, Πανδ?ρα)は、ギリシア神話に登場する女性で、神々によって作られて人類の災いとして地上に送り込まれた。
神々は彼女に決して開けてはいけないと言い含めて箱(壺ともいわれる)を持たせ、さらに好奇心を与えてエピメーテウスの元へ送り込んだ。
美しいパンドーラーを見たエピメーテウスは、兄であるプロメーテウスの「ゼウスからの贈り物は受け取るな」という忠告にもかかわらず彼女と結婚した。そして、ある日パンドーラーはついに好奇心に負けて箱を開いてしまう。
すると、そこから様々な災い(疫病、悲嘆、欠乏、犯罪など)が飛び出した。この神話から、「開けてはいけないもの」「禍いをもたらすために触れてはいけないもの」を意味する慣用句として「パンドラの箱」が言われている。
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5664 成算がなくパンドラの箱を開けた鳩山首相 古沢襄

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