韓国を訪問した中国の温家宝首相は李明博大統領と会談したが、哨戒艦沈没の問題で微妙な言い回しに終始した。国営新華社通信など中国メデイアも温首相の発言を、短い速報形式で報じたが、韓国の朝鮮日報は「目立たないように報じる意図とみられる」と批判した。
とくに中国中央テレビが「事態の是非をわきまえ、誰であってもかばわない」とした温首相の発言が全く報じられなかったとしている。韓国メデイアがどのように報道しようとも、中国の国内では表立った北朝鮮批判はしないという中国首脳の意図がはっきりしている。
<李明博(イ・ミョンバク)大統領と温家宝首相の会談が終わってから3時間たってやっと会談結果を報じた。温首相の発言が摩擦を引き起こす可能性に苦心した形跡は明確だった。
国営新華社通信は同日午後6時20分(韓国時間午後7時20分)から、「中国は韓半島(朝鮮半島)の平和と安定を破壊するいかなる行為にも反対し糾弾する」「責任ある国家として、韓国が他国と共に行った調査の結果とそれに対する各国の反応を重視する」「韓国が『天安』事件を適切に処理することを望んでおり、中奥はこの問題で韓国と密接な意思疎通を続けたい」といった温首相の発言を、短い速報形式で報じ始めた。
そして、会談全体が報じられたのは午後8時半を過ぎてからだった。新華社は「温首相と李大統領は両国関係と北東アジアの国際問題について、率直で突っ込んだ意見交換を行った」と会談の雰囲気を伝えた。
中国中央テレビ(CCTV)も温首相の訪韓を主要ニュースの一つとして伝えたが、「天安」沈没事件に関する発言は報道の末尾に報じられた。目立たないように報じる意図とみられる。しかし、「事態の是非をわきまえ、誰であってもかばわない」という発言は全く報じられなかった。
それでも北京の外交関係者の間では、予想よりも踏み込んだ立場表明だと受け止められている。韓国側の調査結果について、「重視する」という前向きな評価を行い、「国際社会の反応を重視する」と表明したことも、今後の対北朝鮮制裁で中国が中立的な立場を取ることを示唆したものだ。
中国政府はこれまで、韓国側の調査結果について、「評価中だ」と説明するだけで、調査結果に対する具体的な言及を避けてきた。「誰であってもかばわない」という発言は、北朝鮮に対する警告と受け止める見方が有力だ。
北京の外交筋は、「温首相が首脳会談で中国政府が既存の立場を繰り返すにとどまるとは考えていなかったが、予想よりも踏み込んだ言及だ。今回の韓中首脳会談が、3カ月目を迎える事件処理の重要な締めくくりになる」と指摘した。中国国際問題研究所の晋林波研究員も、「韓国の立場では、温首相の発言を踏み込んだものと解釈可能だろう。今回の事件が北朝鮮の仕業だとすれば、北朝鮮は温首相の発言で相当の圧力を感じることになる」と分析した。
一方、温首相の発言を中国の立場変化と見るのは時期尚早だとする指摘もある。中国人民大国際関係学院の時殷弘教授は「『天安』事件で損ねられた韓中関係を念頭に置いた言及であり、中国政府の『天安』事件に対する立場が変わったとは言いにくい。『天安』事件が国連安保理で協議されれば、国際社会での名分と中朝関係の板挟みで中国の苦悩はさらに深まる」と述べた。(朝鮮日報)>
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5666 韓中首脳会談:中国メディアは三時間後に報道 古沢襄

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