5714 小ずるさとカンの良さで権力をかすめ取った子ネズミ政権 宮崎正弘

小沢一郎には最後の滅私奉公のチャンスが来る。いざ、民主党を割れ。鳩山首相は「明るいニヒリスト」だった。自ら造成した政治危機に対しての説明責任を果たさず、米国におしかりを受けてシュンと縮こまり、あげくに「小さな小さなマキャベリト」=オザワも最後に切って、世界から嘲笑された小鳩政権を放り投げた。
お坊ちゃまに特有の歴史感覚の欠如だが、似ているとはいえ、日本新党とつくった細川にはまだ最小限のモラルがあった。
この滅多にないチャンスに機敏に動く本能がひらめき、ひとを裏切るのは当然、どんなエゴを通してでも機会はいかす。菅直人は「ネアカの機会便乗主義者(オポチュニスト)」としての面目躍如。
他人に嫌われようが、目的のためには他人の不幸はかまわない。培った信用を踏みにじってもてんとして恥じない能力も政治家の器量の内だ。この無法な政治家の条件を一晩でクリアした、ぬけめのない子ネズミ男の名は菅直人。
鳩山はたまりたまった小沢への怨念を最後になって噴出させた。生来なかった能力を振り絞って幹事長にも詰め腹を切らせ、誰にも相談せず、唐突に辞職した。
同時に党内に反オザワ感情が噴出した事態も想定外だった。なるほど、外面とは別に、民主党のなかでも、これほど小沢は嫌われていたんだ。
つまり世論の批判は小鳩の金銭汚職印象に対してのものだが、党内では独裁者への鬱積した心理、屈折した感情との苦渋の選択が各派を反小沢で糾合させるダイナミズムを生み出し、一夜にして小沢派を少数派へと追い込んでいたのだ。戦局が一夜にして不利となり周囲は楚の歌を歌っていた。
まさに四面楚歌、小沢一郎は項羽の心境だったのでは?
筆者は、この政変劇のあいだ、たまたま講演旅行をしていたので、旅先のホテルで外出も控えてテレビをみた。日頃テレビも見ないので、ニュース番組をこれほどながく見たのは数年ぶりである。
▲小沢君、秋に民主党を割って、つぎの野合時代をひらけ
呆然自失の党内にあって、この機をとらえる計算高い男が俊敏に動いた。さすが、東工大理系、麻雀の得点カウンターを発明して特許を取得しただけの管はカンが絶妙によく、計算力が冴える。
およそ党内に人望なく、派閥なく、金もない。指導者としての基礎条件を欠いているのに、めぐりきたチャンスには強かった。前原も岡田も原口も油断した。対抗馬で名前をあげた樽床も、その意味ではオポチュニストたりうる。
情勢を穏健に読めば、前原も岡田も「次の次をまつ」から、参院選挙惨敗を前に、一期見送るのが得策と順当に分析される。
しかし政治家たる者は、権力が目の前にある時に一期見送ると次の永遠のチャンスはない。河野一郎も大野伴睦も安倍晋太郎もそうだったように。
小沢と距離を置くというのは美辞麗句のたぐい、管はここで報復人事をやらなければ政権の長期化は望めないだろう。妥協的総花人事となれば、いずれハードランディングがまつ。民主分裂、ふたたびの野合時代がくるだろう。
しかしいずれにせよ、小沢には最後のチャンスが九月にはやってくる。いでよ、民主党を。そして乱世を、その「豪腕」とやらで切り開き、非民主党野合のあと、自滅せよ。それが、もし君に多少の愛国心があれば、最後にのこす仕事ではないのか。
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