民主党の代表選挙で菅直人氏の対立候補となった樽床伸二氏が獲得した129票の評価が分かれる。樽床氏は次世代の有力リーダーかもしれないが、党内的には無名に等しい。小沢G(グループ)の山岡国対委員長は「100票に及ばないと思っていたのが、129票とは善戦した」。
だが、これは本音ではあるまい。150人の小沢G、一時は菅氏の対立候補と噂された海江田万里が所属する50人の鳩山G、北沢防衛相が所属する15人の羽田Gは、自由投票だったが、樽床支持票が170票ぐらいは出ると予想されていた。
菅氏の周辺からみれば、129票の樽床支持票は善戦かもしれないが、小沢氏の求心力にかげりをみせた票数とも映る。4日に菅氏が291票の大差で代表に選ばれたら、反小沢の急先鋒だった仙谷由人の副総理・官房長官、枝野幸男幹事長説が菅氏の周辺から流れた。
仙谷・枝野ダブル起用は小沢Gに衝撃を与えた。小沢氏は9月の代表選挙で菅氏を支持せず、対立候補を立てると明言した。菅Gからも極端な「反小沢」人事を短兵急に進めることへの慎重論が出た。
しかし菅氏は枝野幸男氏の幹事長起用を変更するつもりはない。むしろ鳩山Gの海江田万里氏を要職で起用するつもりだという。見方によって小沢支持グループの分断を策したともいえる。7日に党役員人事、8日に閣僚人事を決めて一気に中央突破の姿勢を示した。やはり”攻め”の菅直人なのであろうか。
<4日の国会で新首相に選出された菅直人副総理・財務相が組閣を8日に先送りした背景には、天皇陛下の日程変更による批判を避ける思惑だけでなく、極端な「反小沢」人事を短兵急に進めることへのためらいがあったと見られる。
民主党内では、先送りで生じた時間が、小沢幹事長を支持してきたグループと、「反小沢」「非小沢」系の議員との一層の摩擦を生むと懸念する声も出ている。
民主党は当初、小沢執行部の構想通り、4日に党代表選、首相指名選挙、組閣、認証式まで一気に片づけようとする勢力が目立った。菅氏に近い議員の間でも同調する動きはあった。その一方で、「再出発を印象づけるために、しっかり人事を考える時間を確保すべきだ」とする意見が、小沢氏と距離を置く議員を中心に広がっていた。
菅氏が最終的に後者の考え方に乗ったのは、天皇陛下の静養日程への配慮ばかりではなく、党内の「小沢幹事長色」を排する動きが極端になったことへの懸念が作用したとの見方も出ている。
天皇陛下は4日から8日まで神奈川県葉山町の葉山御用邸で静養される予定だったが、鳩山首相の退陣表明直後、小沢氏ら党執行部は4日中の組閣を念頭に、「静養に入られる日を5日に変更できないか」と宮内庁に日程調整を要求した。郵政改革法案など重要法案を今国会の会期を延長せずに成立させるには、新体制づくりを急がなければならないという事情があった。会期延長を嫌ったのは、新首相就任に伴う内閣支持率や政党支持率の上昇に期待して、その勢いが衰えないうちに参院選に突入したいという思惑からだった。
しかし、昨年暮れの中国要人の来日の際、宮内庁のルールを無視する形で天皇陛下との会見を決めて反発を招いた経緯もあり、民主党内では「再び、皇室軽視と言われかねない」との懸念も出ていた。菅氏周辺も「スタートから批判を浴びてつまずきたくない」と、天皇陛下の予定変更を伴わない「8日組閣」とすることに傾いた。
一方で、「反小沢」の議員ばかりで政府や党執行部を固める構想には、小沢氏に近いグループが強く反発したばかりでなく、党内融和を重視する中間派や、菅氏側近と目される議員からも「やり過ぎだ」と懸念が示されていた。
「参院選対策を一手に握ってきた小沢氏の反発を招き、マイナスの影響が大きすぎる」との判断も作用した。小沢氏やその支持グループが、参院選後に民主党を割ることを心配する声まで出た。菅氏が4日の記者会見で、閣僚人事や党役員人事を熟考する立場を強調したのも、こうした党内の動きを見極めたいとの考えがあったものと見られる。(読売)>
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