さて今回は、民主党の動きを評価したいと思います。
民主党幹事長の座から小沢一郎氏が滑り落ちて、早速、変わったなあと感じる事例があったので報告します。小沢氏は夏の参院選をめぐり、2人区に2人候補を立てる小沢氏の方針に「ご無理ごもっとも」と唯々諾々と従わなかった静岡県連や候補者などに対し、本来は党本部から支給されるはずの活動費を止めていましたね。逆らう奴にはカネは渡さないという小沢流の報復というか恫喝というか、まあそんなところです。
そして、次のように述べて、選挙にからむ党のカネは自分の判断で動かしているんだからいいんだ、という趣旨のことを強調しました。
「資金については、最終的に私のいろいろな判断を基礎にして、財務委員長(佐藤泰介、元愛知県教組委員長)と相談して決定している。マスコミの諸君に言う必要も理由もない。(平成18年に)代表を引き継いで以来、選挙を一任されてきた。私なりの判断で選挙戦を戦い、今、政権を任されている」(5月24日の記者会見)
ポストとカネで他議員を支配し、生殺与奪の権は自分が握っていると誇示する小沢氏の手法そのものでしたが、それが、今度の首相交代に伴う党人事で、やはり変化してきました。小沢氏の幹事長辞任と合わせて、党財務委員長も小宮山洋子衆院議員へとタッチしたところ、早速、今まで止まっていた活動費が支給されたのです。小宮山氏はきょう、党本部で参院選6選挙区の候補者や県連代表らに、交付金の不足分を、袋詰めの現ナマで手渡しました。以下、小宮山氏と記者団のやりとりです。
小宮山氏 前の執行部のなかで、各選挙区の候補者に支部の交付金がへこんでいるというか、少ないところがあったので、スタートラインは公平にということで、足りない分のお金を差し上げた。問題になっていた静岡県連には、県連への交付金が支払われていなかった部分があるので、全部公平な形にした。
記者 対象はどこか
小宮山氏 選挙区が6つ。あと、県連は静岡県連。(選挙区は)秋田、群馬、神奈川、静岡、岡山、長崎だ。
記者 公認料とは別の話か
小宮山氏 公認料はまた公認証を渡したときに渡す。それぞれの選挙の活動資金として各候補者の総支部に出されていたものが不平等だったので、そろえた。
記者 本来なら何月にでたのか
小宮山氏 1月前ぐらい前に出たと聞いている。現職は総支部の交付金があるので、大体、新人に現職の2倍出た。そのなかで、現職のなかに差があったところをしっかりと埋めた。
記者 なぜ差があったのか
小宮山氏 いやー、それは。前のお金を扱った方に聞いてほしい。
記者 金額はいくらか
小宮山氏 言えない。
記者 総額は。
小宮山氏 総額を言ったら、6人だから分かってしまう。
記者 へこんでいた額は
小宮山氏 大体一緒だが、静岡だけ、一層へこんでいた。
記者 少しは6候補にも出ていたのか
小宮山氏 ほんの少し出ていた。はい。
記者 逆に出過ぎている人はいるか
小宮山氏 現職が一定のライン。新人には、およそその2倍が出されていた。
記者 改めて新執行部の対応について
小宮山氏 新しい菅政権はクリーンな政権に戻る。クリーンのスタートラインに立った。どなたがみても、執行部の使い方は公平ではないし、理由が分からないので透明でもない。そういうイメージをなるべく早急に払拭したい。選挙も近いからおかしいということは、なるべく早く是正するということで、私は出しました。
記者 県連は47都道府県で差があるのか
小宮山氏 いいえ。静岡だけ足りなかった。
記者 なぜ不公平だったか、前執行部に説明を求めることはするか
小宮山氏 色んな意味で、財務についてクリーンにということが、菅新政権の一つの方針だ。前政権の場合(小沢執行部時代)に、どのような財務処理が行われていたか。専門家にチェックしてもらいたい。
記者 理由は小沢さんとの関係になるのか。特に静岡とかは
小宮山氏 いや、私に聞かないで下さい。小沢さんに聞いていただければ。
記者 静岡がへこんでいるのは
小宮山氏 候補者が2人いて、現職の方が足りなかったと。
記者 他の5県と比べても
小宮山氏 5県と比べてもちょっと足りなかった。なぜか、静岡だけは特別視されていた。
記者 選挙資金にかかわらず、前執行部のお金の使い方を検証していくか
小宮山氏 今説明したのは全体の話。当然、政党の財務処理だから、きちんと行われていると思っているが、クリーンで透明性、公平性を大事にする菅新政権としては、新しい目でもう一度専門家にチェックしてもらおうと思っているところだ。
記者 確認だが、袋に入れて直接手渡したのか
小宮山氏 そうだ。(静岡)県連代表の牧野聖修さんに渡した。
記者 渡したのは(枝野)幹事長から直接渡したのか
小宮山氏 幹事長と選対委員長と財務委員長の私の3人で渡した。
…さて、これに対して、ようやく受け取るべきカネを受け取った民主党静岡県連の牧野聖修氏は記者団にどう話したか。以下がそのだいたいのやりとりです。
記者 枝野幹事長とはどんな話を
牧野氏 幹事長、選対委員長、財務委員長と話し、「静岡県連に大変ご迷惑をおかけして申し訳なかった」と。県連に活動費が入っていないので、今日渡すと。そのことによって、今まで党本部から県連にかけたご迷惑は解消して、今後も連携を密に、県連ということで、仲良く活動できるように言われ、こちらにとっても有り難いことなので、活動資金をいただいて感謝した。県連としても受け止めて党本部と連携を密にして、私から話をした。
今回、県連の活動費が止まっていたのは、全国で我が党としてなかった。二度とないようにお願いした。選挙活動費、公認候補にも選挙直前になって初めてもらったと。数人から、かなり不公平だったという声も出てきた。だから、幹事長には、静岡の(活動費が支給されなかった)藤本祐司さんだけじゃなくて、ちゃんと調査して、二度とこういうことがないように、民主党らしい民主党になるように、注文をつけた。そのように努力するという話だった。
記者 わだかまりは
牧野氏 それはもうない。新しい執行部が地方の声を大切にするという雰囲気だったので、ない。
記者 2人擁立は変わらなそうだが
牧野氏 県連は一本化してほしいという切実な思いはあるが、選挙も1か月という日程もある。もう一人もポスターをはり、街頭演説をして、一生懸命やっている。ここまで努力している人を直前にやめろというのは切ない。そのことについては、党に一任すると。党の采配は受け入れると約束してきた。
だから、党が今の情勢を調査分析して、どうしたらよいかた、県連に来ると思う。甘んじて受け入れて一生懸命やろうと思う。 選対委員長からは「改めて静岡にきて話をする」という言い方だった。新執行部はなぜ、静岡だけ出さなかったのが不思議だという感じだった。ありがたかった。これから、風通しがよい、クリーンな、現場の声を大切にしてもらう党運営をしていただくと思う。
記者 旧執行部へのわだかまりはあるか
牧野氏 もういい。ただ、2人擁立になれば、小沢前幹事長は、幹事長を退いても、自分の仲間は自分が責任をもって応援するといっている。民主党静岡県連が擁立した藤本さんと、小沢一郎さんが擁立した中本さんという構図で選挙をやることは間違いない。
共同してうまく助けあいながらやる方向にはならない。あくまで選挙だ。この間は、足で引っ張り合う血みどろはやめてほしいと。共倒れになるという状況だったが、(支持率が)V字型に回復したから、ギリギリしないでもっと円満に努力すれば、状況が変わってきたので党勢拡大にはなるだろう。でも、2議席をもらえるような状況でないことだけは事実だ。だからこの1議席を何としても自民党に勝って1議席とりたいというのは必死なものだ
…菅首相も、クリーンな党を標榜しているのですから、小宮山氏のいう「専門家のチェック」は、ぜひ、実行してもらいたいものです。そして、その結果を公表してほしいと。まあ、それほどあてにしないでかすかに期待しながら待つこととします。小沢氏のカネの使い方の実態が明らかになれば、それは大きな意味を持つでしょうから。
今回の小宮山氏の対応について同僚記者たちと雑談していたところ、先輩記者は「小宮山氏が財務委員長を引き継いで金庫を開けたら、ほとんど空だったんじゃないか」と冗談を言っていましたが、まあ、少なくとも、静岡県連などに渡す分はあったようですね。週刊文春の先週号(6/10号)には、小沢氏の秘書を20年間務めた高橋嘉信元衆院議員の次のような証言が載っていただけに…。
「私は小沢の指示で、経世会(竹下派)から(世田谷区深沢の)小沢邸まで派閥のカネの十三億円を車で運びました。それには当時、派閥の金庫の鍵を預かっていた八尋事務局長と、小沢夫人の和子も関わっています」
「すべて完了した旨を小沢に伝えたところ『わかった』の一言で、既に八尋さんから報告を受けているようでした。それから数日後、小沢が『八尋は(鍵を渡せと要求する橋本龍太郎氏に)鍵を渡さないでよくやってくれたな』としみじみと語っていたのを覚えています」
実際、民主党の財務にかかわる事務方は、ほとんど小沢氏の息がかかっていると言われますから、洒落にならない部分もありますね。菅首相個人への評価はともかく、民主党の新執行部は小沢体制下の膿を出してほしいものだと願っています。
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