5770 擬人化した「はやぶさ」君の宇宙物語 古沢襄

日本の小惑星探査機「はやぶさ」が7年に及ぶ旅を終えて地球に帰還した。月以外の天体に着陸して帰還した人類初の探査機だという。日本の宇宙技術の高さを世界に示した一瞬だが、長文の科学記事を読んでも門外漢には分からないことばかり。
だが「はやぶさ」が大気圏突入の衝撃で大破して燃え尽きる映像の美しさには心を奪われる。「はやぶさ」から飛び出したカプセルの光跡が天空に光の線となって地球に落ちてくる。科学記事の文章では言い尽くせない感動を映像が伝えてくれた。
往復7年60億キロの苦難の道だっただけに、ひとつの物語となった。そしてカプセルを地球に送り出して、「はやぶさ」は大気圏で燃え尽きた。擬人化すれば「はやぶさ」君の短い一生は、感動的な宇宙物語になる。誰かがこの物語を書いてくれるだろうと期待したい。
<【グレンダンボ近郊(オーストラリア南部)=本間雅江】宇宙航空研究開発機構の小惑星探査機「はやぶさ」が13日夜、7年に及ぶ旅を終え、地球に帰還した。飛行した距離は、地球―太陽間の40倍にあたる60億キロ・メートルで、満身創痍(そうい)の奇跡の帰還だった。機体は大気圏突入で燃え尽きたが、突入前に分離した耐熱カプセルは、ウーメラ(南オーストラリア州)付近に着地した。宇宙機構は今後、カプセルを日本に運び、内部の確認を行う。はやぶさは、月以外の天体に着陸して帰還した、人類初の探査機となった。
カプセル内には、小惑星の砂が入っている可能性がある。小惑星の砂や石は、ぎゅっと固まる過程を経た惑星の岩石と違い、太陽系の初期の状態をとどめているとみられる。米アポロ計画で採取した月の石などに続く、貴重な試料として、世界の研究者の期待を集めている。
はやぶさは、2003年5月に地球を出発。05年11月に地球から3億キロ・メートル離れた小惑星「イトカワ」に着陸し、砂などの採取を試みた。小惑星に軟着陸したのは、史上初だった。
しかし、離陸後に燃料漏れで制御不能になり、通信も完全に途絶した。奇跡的に復旧し、07年に地球への帰路についたが、帰還は3年遅れとなり、劣化の激しい電池やエンジンでぎりぎりの運用が続いてきた。
はやぶさは13日午後8時21分(日本時間午後7時51分)、インドの上空7万4000キロ・メートルでカプセルを分離した。同11時21分(同10時51分)ごろ、まずカプセル、続いて本体がオーストラリア上空で大気圏に突入し、夜空に光跡を描いて落下した。
本体は大気との摩擦で燃え尽きたが、カプセルは底面が断熱材で覆われており、パラシュートを開いて減速した模様。位置を知らせる電波を発信しながら降下して、同11時37~38分(同11時7~8分)ごろ、ウーメラ付近に着地した。宇宙機構は、着地点をヘリコプターから確認した。14日にもカプセルを回収する。今後、日本へ空輸し、専用施設で慎重に中身を調べる。
イトカワで試みた砂の採取は、装置が正常に作動しなかった。しかし、着陸の際に舞い上がった砂煙が、カプセル内に入った可能性があると期待される。
はやぶさは、新技術のイオンエンジンを搭載した。延べ4万時間稼働して、小惑星へ往復する長距離の航行を完遂。日本の宇宙技術の高さを世界に示した。(読売)
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