韓国で平和運動などに取り組む非政府組織(NGO)の「参与連帯」が、韓国哨戒艦沈没事件について「北朝鮮の魚雷攻撃」とする合同調査団の調査結果に疑問を呈する文書を国連安保理理事国などに電子メールとファクスで送信した。
これに対して韓国の朝鮮日報らメデイアは、民主労働党の李正姫(イ・ジョンヒ)議員、アルファ潜水技術(海難救助業者)のイ・ジョンイン代表ら、専門家以外の主張に基づいたものだ・・・と厳しく批判した。
軍事政権下であったなら北朝鮮の代弁・スパイ活動として圧殺された少数意見だが、今の韓国社会では「参与連帯」の活動が許され、「魚雷攻撃を立証する証拠が不足している」と国連にアピールすることが出来る。韓国外交通商省は「わが国の外交努力を阻害するものだ」と批判しているが、見方を変えれば、それだけ成熟した自由な社会になりつつある証拠といえる。
「参与連帯」は会員が1万人を超える有力NGO。金大中・盧武鉉政権下で育った親北朝鮮色が濃いNGOだが、単純に北朝鮮の代弁と決めつけるのも片手落ちになる。むしろ李明博政権が軍事対決も辞さない方向に流れてしまうことに、慎重な国内世論があることを示している。だからこそ地方選挙で李明博与党が敗北を喫した。
それだけ第二次朝鮮戦争の勃発を本能的に嫌う民衆感情が根深いといえる。とはいえ、「参与連帯」の主張内容には、確固たる物証や科学的説明がない弱点がある。それを韓国メデイアは鋭く指摘している。言論と外交努力で北朝鮮の非を唱える道は、迂遠かもしれないが、短兵急に軍事衝突を招くよりも”賢い道”であるのは間違いない。
<哨戒艦沈没 参与連帯が11日に国連安全保障理事会の理事国15カ国に送付した電子メールで指摘した疑問点は、合同調査団が科学的な説明と証拠を基にすでに何度も説明したものばかりだ。参与連帯が資料で提起した疑問のほとんどが一部のインターネット報道、民主労働党の李正姫(イ・ジョンヒ)議員、アルファ潜水技術(海難救助業者)のイ・ジョンイン代表ら、専門家以外の主張に基づいたものだ。外交部当局者は「自分たちの主張を後押しする証拠はなく、すでに証明された事実でさえも信じようとしない。まさに“疑惑の総合セット”というレベルの主張ばかりだ」と述べた。
参与連帯が提起した疑問点は、「天安が魚雷の攻撃で沈没したという証拠は不十分」というものだ。しかし天安が魚雷と接触せず、水中爆発によって生じたバブルジェットにより二つに切断された点に関しては、大きく水面に浮上し、船首と船尾が無残に引き裂かれた船体を見ただけでも説明が可能だ。当初、北朝鮮の犯行という結論に多少疑問の声を上げていたロシアでさえも、海軍専門家チームの調査によって、「外部での爆発による沈没」という点を認めている。合同調査団は魚雷攻撃が行われた証拠として、北朝鮮製魚雷のスクリューなどの残骸(ざんがい)を海底から回収した。また魚雷による爆発の衝撃で、ガスタービン室・煙突は船体から完全に消失しているが、参与連帯はこれらの点にはあえて言及しようとしない。
その一方で参与連帯は、「天安の切断面には爆発の痕跡と見なせるだけの激しい損傷はない」「天安が二つに割れた瞬間を撮影した熱線観測装置(TOD)の映像は本当に存在しないのか」という過去の疑問を再び提起した。TODの映像については、軍はもちろん、軍を監視して指揮官の一部に対して懲戒処分を求めた監査院でさえも、「事故当時の動画が本当に存在しないことを確認した」とコメントしている。
さらに参与連帯は、北朝鮮製魚雷のスクリューから検出された白い吸着物と、天安の船体から発見された物質について、「魚雷爆発の証拠ではなく、自然界におけるアルミニウムの酸化現象によるものだ」と主張している。しかし合同調査団は、「魚雷の爆薬には重量に対して18-30%のアルミニウム粉末が含まれている。船体から発見された非結晶体の酸化アルミニウムと魚雷の残骸から発見された成分は同一のものだった」と発表した。自然に酸化したものではなく、魚雷の爆発時に出たアルミニウム物質が、魚雷の残骸と船体の双方に付着したという説明だ。
参与連帯はまた、水柱が本当に存在していたかについても問題視しているが、調査団は▲ペンニョン島の哨兵が水柱を目撃した▲左舷にいた見張り兵が「顔に水しぶきが飛んできた」と証言した▲爆発の際に発生する吸着物質の残骸が、水柱によって船体のあらゆる位置から検出された-という事実を根拠に反論した。
参与連帯が今回改めて提起したヨノ型潜水艇の実体、ガスタービン室問題などは、北朝鮮国防委員会が反論した内容とよく似ている。これは、すでに衛星写真に撮影されたヨノ型潜水艇と、大きく破損したガスタービン室を韓国軍が公開したことで決着がついている。(朝鮮日報)>
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