5788 地元紙が小沢氏に引退勧告 渡部亮次郎

NHKの記者時代、わたしは岩手県に4年、勤務したので愛着がある。代表的な地元紙は「岩手日報」現在22万部発行。歴代社長が友人である。
その岩手日報が16日の「論説」で同県選出の前民主党幹事長小沢一郎氏に対して政界引退を勧告した。些か驚きだ。余り小沢氏に噛み付いた事は無かったからでもある。
<いつも政局の中枢にあり、影響力を発揮してきた小沢一郎民主党前幹事長が今「一兵卒」としての日々を過ごす。通常国会が16日閉幕。参院選に突入するが、「脱小沢」の布陣を敷いた菅直人新政権に国民の審判が下る。 
鳩山由紀夫前首相と小沢氏の2トップが辞任した陰で激しい主導権争いが繰り広げられたことは想像に難くない。鳩山氏の後継に菅氏を選んだことも、前政権に見た既視感を覚えた。本来ならば野党時代に主張したように、政権内のたらい回しではなく解散・総選挙を実施し、国民に信を問うのが筋だった。
民主政権の交代劇で主役を演じた3人は、4年前に小沢氏が偽メール問題で辞任した前原誠司代表の後任に就いた時に「トロイカ体制」を組んだ仲だ。その1人が首相に就き、ほかの2人が身をひく事態に時の流れを感じる。
新政権への国民の期待度は世論調査にも表れているが、参院選の結果次第では与野党の再分裂や政界編成が視野に入ってくるだろう。だからこそ「豪腕」「壊し屋」と言われる小沢氏の次の行動に政界の注目が集まる。
しかし、小沢氏は辞任時の会見などで「一兵卒」と言いながら、9月の代表選に向けて「先頭に立つ」と意欲を隠さない。最大の小沢グループも一連の党人事や閣僚人事で「脱小沢」を鮮明にした菅首相とは一定の距離を置く。
先の代表選びで田中真紀子元外相や海江田万里氏らに出馬を促したとも伝えられる。表向きは「自主投票」だったが、グループの後押しを受けて善戦した樽床伸二氏が国対委員長に就いた。
「小沢グループの協力なしに参院選は戦えない」-との声が聞かれる一方、小沢氏自身も樽床氏の得票数に「非常によかった。悲観する数字ではない」と語っている。
9月の代表選は参院選の結果次第で大きく違ってくる。民主党にとって、最大の課題は参院選を勝ち抜くことだ。単独過半数でなくとも連立維持できる状況ならば、菅首相の続投が前提になるだろう。それなのに、参院選を前に小沢氏が9月の代表選に言及したことは不可解だ。
不意の「ハト鉄砲」を食らって冷静な判断ができなかったか。「しばらくは静かにして」と注文した菅首相の言葉に心を乱したのか。
昨年夏の衆院選で「政権交代」を果たした原動力が小沢氏であることは周知の事実。「参院選に勝ち、政権安定と改革実行が可能になる」-とは本人の言葉だが、世論は鳩山、小沢両氏につきまとった「政治とカネ」に嫌悪感を抱いているのが明らかだ。
どうだろう。この辺で鳩山前首相と共に政界から身をひくことを考えてみては。
かつて評論家江藤淳氏が陶淵明の詩「帰去来辞」を引用して小沢氏に「帰りなん、いざ。田園まさに蕪(あ)れんとす。なんぞ帰らざる」と帰郷を勧めたことがある。すでに十分に「使命」を果たしたのではないか。執筆者 宮沢徳雄=常務、論説委員(2010.6.16)>
小沢氏のことだからこれは無視するだろう。一方、小沢氏にすべてを支配されてきた岩手県民は目を覚ますかもしれない。「一定の効果」どころか「相当な影響」を与える事は確かである。
岩手県民は概ね貧しいが、人間としての「矜持」は持っている。だからこそ東北6県で唯一、総理大臣を何人も輩出してきた。その県民を代表する「岩手日報」に勝てる何かを今の小沢氏が持っているのか。小沢氏の持っているのは「怪しげなカネ」でしかない。
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