5789 対外的取引に不慣れな中国が餌食か? 宮崎正弘

不動産投機熱を急冷却した政策効果がマイナスにではじめた中国。株式にも先物、オプション取引が中国国内に存在しない弊害。中国全土で新たに建築を開始したマンション(戸建て住宅を含む)は、2010年第一四半期だけで18億7000万平方メートル。前年同期比で36%増加。
主要70都市の平均値で不動産価格は09年に12・8%上がったが、これは控えめの数字だろうと英誌『エコノミスト』は推定した(5月29日号)。販売額は3846億元(邦貨換算で5兆4000億円弱)
住宅ローンの普遍化が主因のひとつ。05年比で50%の上昇ぶり、それでも米国と異なり、ローン残高はGDPの15・3%でしかない(サブプライムの米国はピーク時にGDP比79%だった)。だから不動産バブルはおきないと不動産関係者は一斉に楽観論を言い張る。
 
はたしてそうか。中国GDPの10%が不動産ならびに建設部門である。中国人は従来、住宅を買うのも車を買うのも全額キャッシュ。多くは地下銀行や親戚から寄せ集め資金を調達した。
しかし住宅ローンが普及し、優遇策が講じられると新婚カップルも中産階級もマンション購入に走り、この結果、全取引の53%がローンを組んでの事となった。
不動産投機ブームがおこり、実需より賭け事の対象となったのが物件であり、夜、行くとゴーストタウンの様相に近いマンション群があちこちに現れた。北京、上海、広州、深せん四大都市の不動産価格は、平均サラリーマンの年収の17倍となり、誰も手が出ない。買える人はどういう階層の人間かといぶかる声があがる。
▲ずいぶんと思い切った手段にでたものだ
中央政府は不動産暴騰、投機を沈めるため、ついに荒治療にのりだした。五月から頭金の比率を上げ、金利を上げ、さらに一年分の固定資産税の前払いを命じた。二軒目の不動産を買う場合は、頭金を50%と規定した。たちまちにして売れ行きは13・4%も落ち込み、先行きに赤信号が灯る。別荘地の売れ行きも急ブレーキがかかった。
株式投資について言えば、中国国内市場には「空売り」が認められておらず、「先物」取引も「オプション」も中国の国内株式市場には存在しない。インデックス取引もまれにしか行われず、つまり大規模な政策介入による株価調整が表向き不可能である。
そこで外国人のヘッジファンド筋が仕掛けたのは、中国が重厚に関与する原油、鉄鉱石、大豆取引での中国ファクターによる価格乱高下、さらには中国と取引が巨額な豪州ドル、ブラジル・レアルへの先売りであった。
このドルにペッグする人民元の固定相場を見越して通貨投機に逆張りを仕掛けるなどという、新手で乱暴な外的要因は欧米ならびに華僑系のヘッジファンドが仕掛けているもので、中国は対外的取引に不慣れなため、格好の餌食になっている側面もある。かくて中国は、経済的にみだれるだろう。
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