消費税の増税は、いずれは避けて通れない道なのだが、国会が衆参両院で議員数を削減するなど、徹底した経費の削減で実をみせないことには、国民の理解は得られない。マスコミ各社の世論調査をみても、消費税の増税については賛否が相半ばしているが、国民の理解を得るにはなお時間が必要である。
鳩山政権は外交・安全保障政策に十分な理解がないままに普天間移設に踏み込んで、ダッチロールを繰り返し失速した。それを反面教師にしたのか、菅政権は財政再建のテーマとして消費税の増税に踏み込んだ。しかし増税の具体策については触れていない。
いわば消化不良の財政再建策だから、V字回復した内閣支持率が再び下降現象を招いている。むしろ国会議員の定数削減を訴えていたら、内閣支持率は上昇傾向を辿っていたであろう。V字回復に気をよくして短兵急に消費税の増税に触れ、火傷をしたことになる。NHKの世論調査でも内閣支持率は12%も下落、49%と50%の大台を割った。
それでも鳩山政権末期の20%の大台割れに較べれば、菅政権の支持率はまだ高い水準にある。民主党の政党支持率も自民党を引き離している。鳩山政権末期に支持離れをみせた無党派層が、菅政権になって回帰したのがV字回復の要因だった。
V字回復が下降したとはいえ、無党派層がすべて支持離れをみせているわけではない。無党派層の中で消費税の増税に反対する層が支持離れをみせたと解するべきであろう。
参院選に与える影響はどうであろうか。菅首相は勝敗ラインを54議席から50議席に置いた。ひそかに54議席以上を目論んでいたのは、想像に難くない。一度、下降現象をみせた支持率を再び上昇に戻すにはかなりのエネルギーが必要になる。現状では50議席を割る可能性がある。
それでも自民党が民主党を抑えて第一党に躍進する可能性は少ない。何故なら自民党も消費税の10%を政権公約として掲げているから、民主党の失点が自民党の得点にはなり得ない。参院選の帰趨を決めるといわれている一人区でほぼ当選ラインに達したとみられるのは、民主党も自民党も29選挙区の中、まだ10選挙区にも達していない。互角の戦いとなっている。
政党支持率の調査でも比例区は民主党が自民党を引き離している。とはいえ民主党には前回選挙のような勢いがみられない。やはり参院選後の菅政権は新たな連立の枠組み構築が、最大の政治課題になるのではないか。
V字回復がストップしたことによって民主党内の小沢グループの動きが気になる。参院選で民主党が50議席を割り込むことにでもなれば、菅支持勢力と小沢支持勢力が激突する政治状況が生まれかねない。参議院選挙の公示日・24日が目前に迫った。
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5814 ちょっと火傷をした菅総理大臣 古沢襄

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