参院選の投票日を目前にして報道各社の世論調査で内閣支持率が揃って低下したのは、民主党にとって深刻な問題となった。仙谷由人官房長官(64)は5日の記者会見で「メディアが自らのポジションを棚に上げている。何が重要か立場を明らかにして議論すべきだ」と切れた。八つ当たりと言っていい。
世界的な傾向だが、リーマン・ショック以来、閉塞感が世界を覆っている。一人勝ちをみせているのは中国だけであろう。大学を卒業しても就職先がないから留年する学生も戦後最大の規模になった。七年間も大学でゴロゴロしていてアルバイトに明け暮れた私だが、それでも教師の口がまだあった。
今は教師も地方公務員も狭き門。こんな世の中が恒常的になれば、若い世代の不満はいずれ爆発する。それは民主党の責任ではない。また消費税を増額しても子供手当を満額支給しても解決できるものではない。
韓国の盧武鉉政権が倒れたのも大学を出ても就職先がない学生デモがひとつの引き金になった。日本だって同じではないか。若者にとって希望が持てない国家は破綻する。菅内閣の支持率が低下傾向をみせたのは、その処方箋を出し得ないところにあるのではないか。民主党を批判する野党にも処方箋がない。だから自民党の支持率も低空飛行を続けている。
新聞やテレビをみているだけでは、鬱積した若者の不満がみえてこない。もの言わぬ大衆だからである。どうもファシズムが台頭した昭和初年の社会情勢に似てきた。二・二六事件を起こした青年将校たちは、重臣や首相を殺害すれば、”昭和維新”が達成できると軍事クーデターに走った。
軍事クーデターは戦後日本ではあり得ないが、現状打破を掲げた独裁に近い保守右派が不満を持つ若年層の心を掴めば、日本の右傾化が大きく進む可能性がある。だが右傾化で閉塞感が打破できるだろうか。むしろ、もっと悪くなる。それよりも挙国内閣を組織して、若者に不安を与えない国造りをすることが先決ではないか。参院選で勝った、負けたは二の次になる。
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5870 参院選の勝った、負けたは二の次 古沢襄

コメント
まったく、同感ですね。いまの時代ほど国民の希望と政治家の思惑が乖離している時代はないでしょう。口先三寸で、騙してきた政治ばかりに国民は白けているいる選挙のようで、熱心なのは、そこに利権を見出していてここぞチャンスを見逃すまいとの連中だけのようにも見えます。
「就職留年7万9000人、大卒予定7人に1人」とあります。新聞報道を見ると、企業業績は上向きで上昇傾向にあると報道されています。しかし、この現実とどう符合するのでしょうか。
企業側は、今の学生たちは使いものにならない人物が多い、就職しても我慢できずすぐ辞めるし、会社の待遇ばかりを聞きたがると酷評ばかりだそうです。巷間、聞こえて来る声では、日本の学生は駄目だ、中国人や韓国人の方が使えるとそれほど子育て育成に劣化現象が出ているのです。
また、選挙の遊説演説の声が議員たちの就職活動のように聞こえるのもむなしい国です。もっと使命感を持って、勝った負けたではなく、この国の現状を打破するだけの人物は出て来ないのか、指導者はそこをどう考えるのかで選ぶべきだと思うのですが。(なみお)