参院選で特徴的だったのは、スポーツ選手や俳優だったという知名度だけでは、当選できない傾向がみえ出したことではないか。もうひとつ、地方のテレビ局でお馴染みのキャスターが必ずしも選挙に強くないという結果も出ている。農村や無党派層の目が肥えてきて、人気だけでは動かない傾向があった。
四日間の東北旅行で柄ではないが「政局展望」の講演もしてきた。東北は小沢一郎氏の影響が強い地域である。岩手は相変わらず小沢王国。その衆院岩手四区の講演で民主党が当選出来そうなのは、一人区の岩手と二人区の宮城、福島の三人だけ。自民党は一人区の青森、秋田、山形と二人区の宮城、福島の五人、3対5になる・・・と占った。結果はその通りとなっている。
聴衆は驚いている。東北は民主党の金城湯池といわれてきた。そこで地殻変動が起こりつつあると言ったのだが、にわかには信じ難いという空気であった。とくに秋田は地元の報道関係者が現職だから、落選する筈がないと誰もが思っている。だが鳩山政権の末期から菅政権になって、地方の農村対策で民主党はみるべき政策を打ち出していない。
口蹄疫で大揺れに揺れた宮崎で、民主党は若き大手新聞の元記者を擁立したが、あえなく討ち死にしている。地方の本格的な農村対策を欠いたままメデイアの関係者の知名度に頼る選挙戦術には限界がみえる。それほど地方の農村は疲弊し、農民の危機感がある。
自民党の農村対策も立派とは言い難いが、各地では政権交代した民主党の農村対策に期待外れという切実な声が高まっていた。やはり菅民主党は都市型政党に先祖帰りしたという印象を持たれたマイナスが一人区での惨敗につながったのではないか。こども手当だけでは、農村の心を掴むことが出来ない。
民主党は参院選惨敗の総括をすると言っている。無党派層の支持がみんなの党に流れたという分析だけでは不十分であろう。野党なら政権党の農村対策を攻撃していれば、こと足りる。野党なら財源の裏打ちのないバラマキ政策を訴えれば票を集めることが出来る。
しかし民主党は政権党になった。疲弊している農村対策を本格的に打ち出さないことには、来るべき衆院選挙でも勝利することは出来ない。民主党の弱点は外交・防衛政策と財政政策にあると批判されている。もうひとつ、農村対策でも抜本的な政策を出さないことには、離れつつある農民の心を掴むことが出来ない。この十五年間、杜父魚塾の塾長になって農村地帯の町おこし、村おこしに汗をかいてきた私の率直な感想である。
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5908 民主党に欠落していた本格的な農村対策 古沢襄

コメント
古沢先生の慧眼に敬意を表します。福島・二本松の酪農農家の大会で政談演説を聞いた者です。夜の懇親会で日本の山間地酪農はアメリカ型からヨーロッパ型に変えるべきだと力説されました。
東北の野ブドウに着目し、野ブドウによるワインを起こすことも主張されました。幻の魚・イトウの稚魚を放流してユニークな釣り堀計画など村おこしの提言が具体的でした。
過疎を怖れる必要がない。観光によって人の流れがくれば、人口増と同じ効果が出るとも言われました。これが10年前の提言でした。