中国が北朝鮮の味方をすると、韓国と中国の関係が微妙になる・・・当たり前ではないか、と言われそうだが、韓国の軍事情報を追跡していると、当たり前が当たり前でなくなる。
韓国の中央日報が「米軍のトマホーク巡航ミサイルに匹敵する射程距離1500キロ級の国産巡航ミサイル”玄武(ヒョンム)3C”が実戦配備された」と報じている。6月に東亜日報が”玄武3C”は、中国の北京、上海、南京など数十の都市を射程に入れることができるので中国メデイアが反発を示したと報じていた。
射程距離1500キロというのは、中国のみならず日本の各都市を射程に収める。北朝鮮のノドン・ミサイルは1500キロ。北朝鮮のノドンだけでなく韓国までもが、1500キロの国産巡航ミサイルを保有したとなると穏やかな気持ちではおれなくなる。韓国は米国、ロシア、イスラエルに次ぐ長距離射程をもつ巡航ミサイル国家となった。
韓国が北朝鮮のミサイル基地を攻撃するつもりなら、射程距離500キロの弾道ミサイルがあれば十分であろう。巡航ミサイルは遮蔽物がない海上から海岸線の軍事施設を攻撃するのに適している。山あり谷ありの陸上で地上50メートルから100メートルの低空を飛び、速度も遅いから途中で撃破される危険性も伴う。北朝鮮の地形も精査して、巡航ミサイルにインプットしておく必要があろう。
2006年10月25日の杜父魚ブログで「脅威となる韓国の巡航ミサイル」の記事で、盧武鉉政権が射程1000キロの国産巡航ミサイルの開発を進め、試験発射に成功したことを伝えた。その時にも韓国が北朝鮮の攻撃に備えるのなら射程400キロの巡航ミサイルで事足りる。盧武鉉政権は日本に対する巡航ミサイルを開発しているのではないかと批判した。韓国が金大中・盧武鉉政権という対北融和政策を進めた時代に巡航ミサイル化に着手したのは謎といえる。
http://blog.kajika.net/?eid=409122
あれから6年、李明博政権の下で1500キロの韓国産巡航ミサイルが実戦配備された。日本だけでなく中国も北京、上海、南京が韓国の巡航ミサイルの脅威に曝されていると問題視しだした。
韓国側は日本や中国などを攻撃目標にしているのではなく、あくまで北朝鮮の攻撃に備える巡航ミサイルだと弁明している。また韓国が巡航ミサイルの開発に力を入れた理由を次のように説明してきた。
<<米韓合意によって韓国の弾道ミサイルは射程300キロ以内に制限されている。しかし北朝鮮のスカッド・ミサイル基地は射程300キロの外に配置されている。北朝鮮の韓国攻撃に対応するには、射程400キロ以上の巡航ミサイルの配備が必要である。>>
ここで盲点となったのは、米韓合意には巡航ミサイルに射程規制が含まれていないことだった。韓国側は300キロを越える攻撃ミサイルを弾道ミサイルから巡航ミサイルに移してきた。
東亜日報はこの事情を次のように伝えている。
<<韓国政府は、70年代に米国とミサイル交渉を行った結果、弾道ミサイルの射程は180キロメートル、弾頭重量は500キログラム以内に開発を制限することで合意した。その後、政府は米国にミサイル再協議を地道に求め、01年、金大中政権下で、MTCR加盟とともに弾道ミサイルの射程を300キロメートルに増やした。
しかし、咸鏡北道花台郡舞水端里(ハムギョンプクト・ファデグン・ムスダンリ)など、北朝鮮軍の主要長距離ミサイル発射基地までの距離は300キロメートル以上で、有事の際に直接攻撃が不可能だった。
これを補完するために、軍はミサイル指針の制約を受けない巡航ミサイルの開発に力を入れた。巡航ミサイルは、弾頭重量が500キログラムを越えなければ、射程に関係なく開発することができるためだ。>>
だが、これらの説明だけは、韓国が射程1500キロの巡航ミサイルを保有するに至った理由が明示されていない。少なくとも菅首相は韓国政府に対して、日本が持つ懸念を言うべきであろう。
<米軍のトマホーク巡航ミサイルに匹敵する射程距離1500キロ級の国産巡航ミサイル「玄武(ヒョンム)3C」が実戦配備された。
軍関係者は18日、「国防科学研究所が08年から開発した射程距離1500キロの地対地巡航ミサイル玄武3Cの生産に成功した」とし「今年から中部地域に配備していると把握している」と明らかにした。
この関係者は「玄武3Cはすでに海軍艦艇に配備された射程距離1300キロの国産艦対地巡航ミサイルの天竜(チョンリョン)を地対地巡航ミサイルに改造したもの」とし「誤差範囲は3メートル以内で正確だ」と説明した。
米軍のトマホークと国産の天竜はともに艦艇から発射する艦対地巡航ミサイル。玄武3Cには重さ450キロ以下の従来式弾頭が搭載されている。玄武3Cが配備されたことで、韓国軍は韓国型駆逐艦などに搭載された天竜、F-15Kに搭載されたJASSM(370キロ)などで北朝鮮の戦略標的を地上・海上・空中で立体的に打撃できるようになった。
別の関係者は「その間、朝中国境地域に構築されて対応が難しかった北朝鮮のノドンミサイル基地や核施設を効果的に制圧できるだろう」と説明した。(中央日報)>
<韓国軍と国防科学研究所(ADD)が、射程1500キロメートルに及ぶ国産巡航ミサイルを開発し、近くこれを実戦配備するという。このため、北朝鮮全地域への精密攻撃能力が大きく向上するものとみえる。韓国は、米国、ロシア、イスラエルに続き、世界4番目に射程1500キロメートル以上の巡航ミサイルの開発国となった。
韓国軍関係者は18日、「国防科学研究所が08年から射程1500キロメートルの地対地巡航ミサイル『玄武3C』の開発に着手し、量産に成功した。これは、弾道ミサイルの射程が制限されている現状を補完するために、巡航ミサイルの開発に力を入れてきた結果だ」と明らかにした。
この関係者は、「年内に中部前線に実戦配備する予定だ。戦争発生初期に、北朝鮮の主要軍事施設を精密攻撃できるようになり、効果的な戦争抑制手段になるものと期待する」と話した。韓国は01年に加盟したミサイル技術管理レジーム(MTCR)や同時期の米国とのミサイル再協議によって、弾道ミサイルの開発が射程300キロメートル以内に制限されている。
●北朝鮮全域の精密攻撃が可能
軍関係者は、「開発された巡航ミサイルは、射程が伸びただけでなく、精密攻撃の能力が大きく向上したのが特徴だ。巡航ミサイルは、戦争発生初期に敵の主要軍事施設だけを集中攻撃する戦略兵器だ」と話した。実戦配備されているという射程1000キロメートルの「玄武3B」がすでに北朝鮮の全域をカバーしているが、精密度では今回開発された「玄武3C」が優れているという。
中部前線の誘導弾司令部と近隣基地に配備される「玄武3C」は、北朝鮮の両江道嶺底里(ヤンガンド・ヨンジョリ)、咸鏡南道虚川郡上南里(ハムギョンナムド・ホチョングン・サンナムリ)、慈江道龍林郡(チャガンド・ヨンリムグン)などの地下に建設されたノドンやスカッドミサイル基地だけでなく、核施設まで精密攻撃の射程圏にとらえている。
戦闘機を利用して北朝鮮の領空に進入することなく、望む戦略施設を攻撃できるという点で、北朝鮮の対空防御網を無力化する効果を上げるものとみえる。地上50~100メートルの高度を維持して飛行する巡航ミサイルの特性上、数発を同時に発射すれば、蜂の巣のような防御網であってもすべてを迎撃することは難しいというのが、軍事専門家たちの説明だ。
●射程制限の壁を越えた
韓国政府は、70年代に米国とミサイル交渉を行った結果、弾道ミサイルの射程は180キロメートル、弾頭重量は500キログラム以内に開発を制限することで合意した。その後、政府は米国にミサイル再協議を地道に求め、01年、金大中(キム・デジュン)政権下で、MTCR加盟とともに弾道ミサイルの射程を300キロメートルに増やした。
しかし、咸鏡北道花台郡舞水端里(ハムギョンプクト・ファデグン・ムスダンリ)など、北朝鮮軍の主要長距離ミサイル発射基地までの距離は300キロメートル以上で、有事の際に直接攻撃が不可能だった。
これを補完するために、軍はミサイル指針の制約を受けない巡航ミサイルの開発に力を入れた。巡航ミサイルは、弾頭重量が500キログラムを越えなければ、射程に関係なく開発することができるためだ。
その結果、射程500キロメートルの「玄武3A」、射程1000キロメートルの「玄武3B」巡航ミサイルが相次いで開発されて実戦配備され、今回、射程と精度を上げた射程1500キロメートルの「玄武3C」の開発に成功した。「玄武3C」は、精度が落ちる北朝鮮のスカッド系ミサイルとは違って、ターゲットに1~2メートル誤差で命中することができる。(2010・6 東亜日報)>
<韓国と米国が進めている合同軍事演習に対して、「外国の軍艦の西海(ソヘ・黄海)進入は、第2次アヘン戦争と日清戦争に敗北した中国のつらい過去を想起させる」と中国メディアが報じた。また、韓国軍が射程1500キロメートルの巡航ミサイルを実践配備する計画と関連して、敏感な反応を見せた。
香港のサウスチャイナ・モーニング・ポストは18日、「西海での連合演習の目的についてどう説明しようと、中国の領域に外国の軍艦が接近すれば中国は憤慨すると、政治軍事アナリストらは見ている」と報じた。
カナダで発行されている軍事専門雑誌「漢和亜洲防務月刊」のアンドレ・チャン(平可夫)編集長は、「今回の戦争ゲームは、日清戦争(1894~1895年)以来、外国の軍艦が初めて黄海に現れることを意味し、第2次アヘン戦争(1856~1860年)と日清戦争で敗北した痛みを思い出す中国としては、恥辱の象徴だ」と指摘した。
北京で活動する安保専門家の高海寛氏は、「西海の韓米連合演習は、中国と米国の関係にも悪影響を及ぼすだろう」と話した。
いっぽう、新華社通信は、韓国軍が射程1500キロメートルの「玄武3C」巡航ミサイルを開発したとことを伝え、すでに配備されているミサイルは、射程500キロメートルの「玄武3A」と射程1000キロメートルの「玄武3B」だと、高い関心を示した。
「成都晩報」は、「韓国が開発した巡航ミサイルの射程は、これまで米国、ロシア、イスラエル以外は開発しておらず、中国よりも先を行っていると韓国メディアが報じている。『玄武3C』は、北京、上海、南京など中国全域の数十の都市を射程に入れることができる」と報じた。そして、「最近、西海の韓米連合演習で北東アジアの安保情勢が微妙な時期に、このようなミサイル開発の事実が伝わり、注目される」と付け加えた。(2010・6 東亜日報)>
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5943 周辺国の懸念を呼ぶ韓国の巡航ミサイル 古沢襄

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