6015 地方の疲弊をどうするのだろうか 古沢襄

一泊二日の信州旅行だったが、地方の疲弊を身をもって感じる旅となった。上山田温泉郷といえば、信州でいえばもっとも栄えたところである。十数年前に倒産した信州観光ホテルだが、最盛期にはバスを連ねて温泉客が繰り込み、景気づけに花火をあげたという。
今は山の中腹にある信州観光ホテルが廃墟の姿をさらしている。私の母方の祖父一族が信州観光ホテルの建設に当たって発起人の名を連ねていただけに他人事とは思えない。タクシーの運転手さんは「まだ大きな旅館の倒産が続いている」と言っていた。その大きな旅館も壊すだけの資金がなくて無惨な姿をさらしている。
上山田温泉郷そのものが火の消えたような寂れ方をしていたのがショックだった。運転手さんはふたつの理由をあげていた。長野冬季五輪景気を当て込んで、多くの旅館が銀行借り入れをして、増改築をしたという。その後のデフレの嵐で銀行借り入れが仇となって倒産した旅館が多いと言っていた。
また長野新幹線が上山田温泉郷を素通りして停車駅がないことも衰退に拍車をかけたという。昔日の上山田温泉郷の賑わいが戻るのは、いつのことになるのであろうか。国の財政再建も必要なことだが、衰退している地方を元気にさせる景気回復の方がもっと緊急にして必要な施策ではないだろうか。
上田市は母の実家があるところだが、養蚕で栄えた街の賑わいがみられない。シャッターをおろした商店もある。観光客も想像以上に少ない。帰りの長野新幹線に乗ったのだが、グリーン車には私と次女の二人だけ。軽井沢で数人が乗車してきただけであった。観光シーズンだというのに暗澹たる気持ちに襲われた。
民主党政権が悪いというわけではない。20年に及ぶ不況には自民党政権の責任もある。不況脱出に思い切った景気回復の手を打ってこなかったツケを地方が背負っている。
菅首相は財政再建に不退転の決意でのぞむと国会の予算委員会で言った。景気回復のために不退転の決意でのぞむとは言わない。それでいいのだろうか。
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コメント

  1. 柴わんわん より:

    大好きな信州の記事、興味深く拝読しました。
    物心ついたときから夏のひと時を上高地で過すことにしていますが、河童橋周辺の俗世間化に辟易とし、静かさを求めているうちに、穂高のテッペンまで登るようになって数年が経ちました。いつも、お世話になっているホテルの方が
    「良い道ができて通過地点のような観光地になってしまった。上高地の良さは宿泊していただいて、さらに伝わるのに・・・これは新幹線が通って宿泊客が減った軽井沢も同じらしい・・・」
    と嘆いておられました。
    全てが無駄な公共事業だとは思いませんが、結果的に地方の害になっている政策は多いのだと思います。
    話題が変わって申し訳ありませんが、後ろに手が回りそうな小沢氏と、子供手当て1500万の前総理は国民から総スカンを食らっているのに、どうして子分は未だに持ち上げるのでしょうか?小沢派、鳩山派との立場を選挙区で表明すれば自分の支持者が激減することは明白なのに、それでも親分を持ち上げるということは、それぞれ相当額の子分手当てが支給されているからなのでしょうか?
    自民党が改革しようとしている派閥政治の、二番煎じの茶番のようなドタバタを見せつづける民主党に失望です。

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