畏友・渡部亮次郎氏から「李承晩ラインを思い出しますね」とメールを頂戴した。「一方的に設定された排他的経済水域での拿捕」の記事を読んだ方は同じことを連想したのではないか。英ロイターの「北朝鮮が主張する排他的経済水域(EEZ)」記事を転載しながら、EEZの説明文をつけようか、と思ったのである。
しかしEEZの説明文だけで一本の記事になる。それを書き始めると敗戦後、日本の漁民が拿捕被害を受けた李承晩ラインに触れざるを得ない。まずはウイキペデイアの李承晩ラインを見てみよう。
<<李承晩ライン=1952年1月18日、大韓民国(韓国)大統領・李承晩の海洋主権宣言に基づき、韓国政府が一方的に設定した軍事境界線。韓国では「平和線(평화선)」と宣言された。
海洋資源の保護のため、韓国付近の公海での漁業を韓国籍以外の漁船で行うことを禁止したものであるが、本当の狙いは韓国で獨島(日本の漢字では「独島」)と呼ばれている竹島と対馬の領有を主張するためであるとする説もある。
これに違反したとされた漁船(主として日本国籍)は韓国側による臨検・拿捕の対象となり、銃撃され殺害される事件が起こった(第一大邦丸事件など)。
日米側は「国際法上の慣例を無視した措置」として強く抗議した。日韓漁業協定の成立(1965年)によりラインが廃止されるまでの13年間に、韓国による日本人抑留者は3929人、拿捕された船舶数は328隻、死傷者は44人を数えた。
李承晩ラインの問題を解決するにあたり、日本政府は韓国政府の要求に応じて、日本人抑留者の返還と引き換えに、常習的犯罪者あるいは重大犯罪者として収監されていた在日韓国・朝鮮人472人を収容所より放免して在留特別許可を与えた。また、韓国政府は日本人抑留者の返還と引き換えに、日本政府が摘発した韓国人密入国者の強制送還を拒否するとともに日本国内に解放するよう要求した。>>
李承晩ラインは日本の漁業者に大きな被害を与えたが、日本領土である竹島が海域内に含めていたために、昭和28年(1953)には韓国守備隊が日本の海上保安庁巡視船に発砲する事件が発生した。翌年にも韓国側が竹島に近づいた日本警備艇に砲撃をくわえている。
李承晩ラインの廃止後も竹島は韓国によって軍事占領され、その領有権を主張する日本との紛争事項になって今日に至るも解決していない。竹島そのものは岩山に過ぎないが、周囲の広大な排他的経済水域の漁業権や海底資源の権利が存在するから漁業者にとっては死活問題になっている。さらに北朝鮮も竹島の領有権を主張している。
北朝鮮警備艇によって韓国漁船が拿捕されたことは、同じ日本海で操業する日本の漁民にとって他人事ではない筈だが、それが大きな声にならないのは、日韓間で竹島問題が解決せず、さらには周辺の豊富な漁場から閉め出されている国民感情が背景にある。
しかし、だからといって北朝鮮の無法な拿捕行為は許されるものではない。記者会見で質問されたら、仙谷官房長官はどう答えるのであろうか。
杜父魚ブログの全記事・索引リスト
6040 「李承晩ラインを思い出しますね」 古沢襄

コメント