やっぱりそうか。甘粛省チベット自治州舟曲県を襲った土石流被害。砂防ダムの手抜き、補助ダム無しが原因と香港紙が報道。
2010年8月8日、中国甘粛省の甘南チベット族自治州舟曲県を襲った土石流は未曾有の被害、すぐさま温家宝首相が現場に飛んだ。死者行方不明二千名と言われた。
奇しくも一年前の8月8日、台湾南部を襲った台風は最南端の屏東市の郊外に「存在」した、小林村を全滅させ、しかも馬英九政権は軍の派遣を遅らせてしまったため、致命的打撃となった日。後日、ダライラマ法王が現場を慰問に訪れ、慰霊式を行った。
今回、未曾有の被害にあった舟曲県は海抜1800メートル、四川省に隣接し、人口十四万五千人の三割がチベット族。
この少数民族を襲う不測の事態にまたも暴動と治安悪化の悪夢をみた胡錦涛政権は災害対策本部を設置し、相当数の軍を投入する。
翌日、早くも現場近くに入った産経新聞の矢板記者は、西安からジープを雇って850キロを突っ走り、しかも白龍江がせき止められて土石流が発生し、就寝中の民家を襲ったため、泥の層が厚く現場へ近づくにスコップで土砂を取り除く作業をしながら軍が進んでいると報告した。
結局のところ死者行方不明二千名。中央政府は国家レベルの追悼行事を再興し、開催中の上海万博も一部のアトラクションを自粛して追悼した。
また四川省などからの国内メディアの取材を自粛させる一方で海外メディアの取材を自由とするなどちぐはぐな対応も目立った。
8月23日のサウスチャイナ・モーニング・ポストは「舟曲県の災害は砂防ダムに欠陥」と報じ、「土石流の強度に耐えられない設計であったばかりか補助ダムが造られていなかった」と建設の手抜きを指摘した。
おりから北朝鮮新義州と中国遼寧省丹東に挟まれた鴨緑江が氾濫し、堤防のある丹東でさえ十数万の市民が避難し、犠牲者はいなかったものの市内の川岸一帯は一メートル以上の冠水、しかし北朝鮮側のちゃちな堤防のため田畑すべてが冠水した。北朝鮮側の被害は明らかではない。
◎ブックレビュー◎ ●BOOK REVIEW● 書評 ◎ブックレビュー◎
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石平VS加瀬英明『徹底解明 ここまで違う日本と中国』(自由社)
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惻隠の情から相手を思いやるという日本人の特徴は、中国人から見れば「こいつ、はやくもこれだけ譲歩したのだから、もっと突っ込もう(もっとたくさん要求しよう)」という百八十度ちがう考えになる。つまり中国人は相手を思いやるという優しい発想はなく、つねに「相手が悪い」と思うのである。
いきなりどぎついパンチで本書がはじまる。
つい先日まで中国の地方へ行くと(福建省、広東省あたりでは都会でも)、おはよう、の替わりに「飯食ったか?」と聞かれた。評者(宮崎)も最初にアモイからバスで四時間半、客家土楼のある永定という町でタクシーをチャーターしたときに、乗るなり運転手から聞かれた。「めし食ったか」と。
<こいつ、いきなり飯をたかろうというのかな?>といささか不快になり「食った」と応えたが、それはそれで「おはよう」「こちらこそ、おはよう」というくらいの意味しかなさないことを後で知った。
表現が直截で敬語がほとんどないという中国語は難しい漢字だけが日本語の語彙より多いが、意味の深い語彙は少ないか、語彙はあっても庶民にはまったく通じないという言語状況も斟酌しておく必要がある。
儒教とて、それがペーパーの上で存在していることを知っている中国は99%に近いだろうが、儒教の教えを実践している中国人は9%以下だろうと評者の独断と偏見。
これを演繹して言えば、日本の紳士の高級な遊びは中国人には絶対にわからない。
おそらく永遠にわからない。たとえば吉原や島原の花魁遊び。和歌の教養を競ったり、京都の茶屋遊びもそうだろう。茶室は知識人のサロンでもあり、政治家の密談の場でもあり、限りない日本的文化の粋である。和歌や古典の素養がなければ花魁から相手にされなかった。
いまも銀座で高いカネを支払い「ぶんか」の話に花を咲かせてホステスの手も握らない。これが銀座紳士である。その銀座や京都の茶屋がすたれるという現象はそれだけ日本文化が衰退している証拠でもあるのが・・・。
中国人は「相手とセックスをやるか、やらないか」だけの世界であり、日本の紳士たちが繰り広げる夜の接待など「時間の無駄」「馬鹿のやること」という定義づけになる。その替わりスノビズムはカネをいかに乱暴に使うかに現れるのだ。
四月に北京(ほかの都市でもそうだが)で水商売、風俗関係の手入れがあった。
驚くなかれ。中国の「紳士」が通った、一番高級なクラブは座っただけで十五万円、ボトルは世界最高のブランディとか年代物のフランスワインとか。一本百万円はざら。トップのホステスは5分、横に座るだけでチップが三十万という世界だった。
愛人志願の女性も夥しいが、交際相手(というよりスポンサー)がいかに金持ちかを自慢しあう(ベンツ何台、私のお小遣い幾ら、マンションを買ってくれた等々)。
そして当然だろうが愛欲はカネの問題に直結し、犯罪に繋がりやすい。日本のように痴情のもつれ、奥さんとの関係という情緒的三角関係の破綻という金銭にあまり絡まない関係は、ドライに便宜的に全てを割り切る才能のある中国人には興味の薄い世界だ。
三年前、済南で自動車の爆発事故があり若い美人が爆死した。
これは爆弾を仕組まれた事件で犯人はなんと済南市議会議長。その議長の情婦が「黒河の手帳」ならぬ賄賂のリストを持っており、お手当が足りないと要求したことが原因だった。
四月の北京の豪華クラブ手入れも、直前に美人の評判があったトップ売り上げのホステスが惨殺された事件が発端。
この女はBMWでクラブへ通い、豪華マンション暮らしで預金が数千万円ということが後日判明した。賄賂、汚職の天国に対しての警告的メス入れだった。
▲おごる中国人の潜在的な野心とはなにか?
余談からおおきく脱線した。本書は中国人の凶悪無比の特質を短い言葉の中からあぶり出す。
たとえば石平氏はこう指摘する。「洪秀全は落ちこぼれ知識人。キリストを利用して天下を盗もうとした」「毛沢東はマルクス主義を利用して政権を奪った」が「マルクスを読んでいないかもしれない」
これに対して加瀬英明氏は「洪秀全も毛沢東も中身は儒教」との指摘を忘れない。こうして目から鱗が落ちる対談がユーモラスに続く。
もうひとつ余談を最後に書く。太平天国の乱は広東から反乱がはじまって首都南京を落としたが、その洪秀全記念館は壮大で、巨大な壁画に洪秀全の銅像がある。いまも英雄視され、洪秀全の座った玉座がある。生まれ故郷は広州郊外の花都だが、この生誕地に立派な記念館。市内には古色蒼然とした博物館があり、歴史的に「評価」されている事実が浮かび上がる。
それは清朝末期に政権をがたがたに揺らして共産革命の下地を敷いてくれたからで、洪秀全の太平天国の乱が五千万を殺戮した事実には、どの博物館の展示でも一二行の記述はあるが、それほどの興味がないようだった。
杜父魚文庫
6120 チベット舟曲県の災害は砂防ダムに欠陥 宮崎正弘

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