6144 反小沢と親小沢で思い切ってぶつかれ  花岡信昭

*いま重視すべきは「小沢待望論」の背景分析
民主党の代表選挙(9月14日)は、菅直人首相と小沢一郎前幹事長が真っ向からぶつかる構図となった。当コラムでは小沢氏の出馬の可能性をかなり高く見てきたが、やはりその通りになった。
だが、世論調査では7~8割が「小沢首相」に反対しており、小沢氏出馬に対するメディアの評価も散々である。朝日新聞の社説(27日付)は「あいた口がふさがらない」という見出しだ。 メディアの多くは小沢氏の出馬をあり得ないと見てきたようで、そのため、非難の舌鋒も鋭くなる。
「政治とカネ」の問題での説明不足、憲法75条との関連(国務大臣は首相の同意がなければ訴追されない)、幹事長辞任に至る経緯などを考えれば、小沢氏の出馬を否定的に見るのも分からないではない。
だが、いま重視すべきは、これほどの反発があっても、民主党内に「小沢待望論」が浮上した背景とその政治力学の分析ではないか。
「菅VS小沢」で党内が二分され、激しい攻防が展開された結果、党の分裂といった事態になるのであれば、むしろすっきりするようにも思える。 政治の混迷打開のために、「ガラガラポン」が必要だという声をよく聞く。これはもう一度、大がかりな政界再編を求めようとするものだ。
この代表選がそこに結び付くのであれば、日本政治の成熟という観点からしても、歓迎していい。
*検察は「小沢ゼネコン疑惑」を立証できず
小沢氏を擁護するわけではないが、たとえば「国会での説明責任を果たしていない」といった批判などは、国会の場に引っ張り出すだけの政治力がなかったことをこそ指摘すべきだろう。 小沢氏の政治的パワーだけが突出していて、どうやってもかなわないのだ。であるならば、そういう政治状況をまず克服する努力を費やさねばなるまい。
メディアにしてもそうだ。小沢氏をここまで徹底して叩き続けてきたが、それでもなお小沢氏の力量が政界ナンバーワンであるという実態を変えることができなかったのだから、これはメディアの非力さを証明することになってしまう。
検察当局は小沢氏をめぐる「ゼネコン疑惑」を立証できなかった。 検察審査会の2度目の「起訴相当」議決が10月にも出る見通しだが、これは政治資金収支報告で土地購入に関する記載が不明朗であったというものだ。秘書3人が逮捕、起訴され、小沢氏に「共犯」の疑いがかけられたが、検察側はこれも立証できなかった。
政治的道義的な責任があるという指摘はもっともだが、幹事長辞任によって一定のけじめはつけた、という見方もできないわけではない。 以上は、あえて小沢氏側の主張に立った「理屈」である。
ものごとにはさまざまな側面があるのであって、みんなが同じ方向をむいた一方的な「小沢断罪論」は危うさをはらむ。
*菅・小沢両陣営の対立構図ばかりが浮き彫りに
小沢氏は代表選への出馬要請を行った議員に対して、菅政権は本当に大丈夫なのかといった懸念を示したという。 喫緊の政治テーマに即応できているのかどうか、不安感が強いのであろう。
民主党代表選は野党時代と違って、国家リーダーの選出に直結する。代表選がそうした厳粛な認識を踏まえ、国家観、国家戦略を踏まえて行われるのであれば、これは重要な意味がある。
ところが現実にはそうはなっていない。「菅再選支持」「親小沢」両陣営の対立構図ばかりが浮き彫りにされている。
民主党内の「派閥」は自民党とは違って、ゆるやかな「グループ」である。 いくつもあるが、それぞれのメンバーを全部足すと所属国会議員の総数よりもかなり多くなる。だぶって参加している人がいるためだ。
代表選に臨んで、菅首相の再選支持をまず打ち出したのは、菅グループ(国のかたち研究会、50人)、前原グループ(凌雲会、40人)、野田グループ(花斉会、30人)の3派であった。
*いまのところ国会議員数では小沢氏優位だが……
いわゆる小沢グループは150人規模を誇るとされるが、一新会、一新会倶楽部、旧自由党系などから構成されている。
鳩山グループ(政権公約を実現する会、60人)は軽井沢の鳩山由紀夫前首相の別荘で研修会と懇親会を実施、これに小沢氏、輿石東参院議員会長が参加したことで、小沢氏の出馬ムードが一気に高まった。
鳩山氏は菅首相に対して、小沢氏との仲立ちをするとして、「脱小沢シフト」からの脱却を求めたが、これを拒否され、「菅再選支持」から「小沢支持」に転換した。
鳩山氏は首相退陣のさい、今期限りでの政界引退を表明したのだが、それはどうやらカラ公約だったようで、小沢氏との「復縁」を印象付けて、存在感を高めようということだったらしい。
民主党内にはそのほか、横路グループ(旧社会党出身者、新政局懇話会、30人)、民社協会(旧民社党出身者、30人)、羽田グループ(15人)、リベラルの会(20人)、樽床グループ(15人)などがある。
菅首相側、小沢氏擁立側それぞれが詳細な票読みを行っている。 いまのところ、国会議員数では小沢氏優位とされているが、無記名投票であることもあって、代表選の結果は予断を許さない。
*「待望論」の背後にいまなお息づく「剛腕神話」
小沢氏に対しては、ぎりぎりまでチキンレースを演じておいて、副総理格入閣など人事での妥協が成立すればホコをおさめるといった話も伝わっていた。だが、その次元の話に終わっていたら、これは小沢氏にとって「恥辱」以外のなにものでもない。
それにしても、世論の猛反発を承知の上で、党内になぜ「小沢待望論」が沸き起こったのか。 結論的に言ってしまえば、やはり小沢氏の「剛腕神話」がいまなお生きているということだろう。
衆参ねじれ構造になんらの対応もできないまま推移すれば、来春の通常国会はとんでもない事態になる。法案は衆院を通過しても参院で立ち往生する。
自民党は政権担当時代、同様のねじれを抱え、民主党にいやというほどかき回された苦い思いを持つ。そのリベンジに出ようと、手ぐすねひいて待っている。
予算案本体は衆院の可決だけで自然成立するが、関連法案はそういうわけにはいかない。関連法案が成立しないと予算を執行できない。
となると、衆院解散との引き換えで法案成立をはかるという「話し合い解散」の道しか残されていない。議員心理として、これ以上の脅威はない。
*妥協工作をやめ、「反小沢―親小沢」でぶつかれ
ならば、参院での多数派を形成するにはどういう手があるか。菅執行部はテーマごとの部分連合で臨む方針のようだが、それには相当の腕力も必要だ。
手っ取り早いのが、公明党やみんなの党との連立であり、足りない分はほかから探してくるという策だ。だが、これは部分連合以上の力仕事になる。
要は、菅首相にそうした大技を期待するのは無理だが、小沢氏ならなんとかしてくれるのではないかという思いが「待望論」の下地になっているということだ。
小沢氏には「大連立」構想もある。大連立となったら、あと3年間、選挙はないことになる。解散回避を願う議員心理としては願ったりかなったりだ。
民主党は、ここはへたな妥協工作などいっさいやめて、反小沢―親小沢で思い切りぶつかってみることだ。その結果、党が分裂するというのであれば、政界大再編が次の局面として待っている。そこにかけてみたい気がする。
民主党代表選はそのくらいの壮大なステージで展開してほしいのである。
杜父魚文庫

コメント

  1. 志士 より:

    小沢氏の検察によるイメージ落としとマスコミによる反小沢キャンペーンの嵐、検察が問題とした内容は本質些細な内容であり、日本を背後支配する勢力の傘下にあるマスコミと組んで政治的マイナスイメージを造り出すための作為的な計算された検察行動である。事実、違法を立証できてない。マスコミはその力を行使する公器たる大前提を逆手に国民を誘導してはいないか?我が国はまだ独立できていない。マスコミも操作されているという仮定が容易に推察できる。日本の真の独立を成しうる政治家は小沢氏のみである。

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