九月・・・秋風が立ち、冬までの束の間だが、秋の夜長を読書に耽る。一年のうちで一番好きな季節である。だがことしは違う。窓をあけると猛暑の熱風を感じる。政治の世界は菅VS小沢の隠微なチャンバラ劇。
読書といっても私の場合は読む本が偏っている。大学で東洋史とドイツ近代史のチャンポン史、膠州湾のドイツ租借問題を専攻した延長で、清王朝を作った満州の女真族や北アジア史の本を山の様に積み上げて、閑さえあれば読んでいる。
膠州湾(こうしゅうわん)と言っても知る人は少ない。支那の山東半島にある港湾なのだが、1898年に二人のドイツ人宣教師が殺害されたことから、ドイツ戦艦カイザー、プリンセスウィルヘルム、コルモランなど六隻が700のドイツ兵を派遣して占領、清王朝に膠州湾の割譲を迫った。日本は1894年の日清戦争でアジア最強の北洋艦隊を撃滅し、この年には日本で最初の政党内閣が誕生している。
脱線するが戦前には東京・九段下に山東料理を食わせるチャン料理屋があった。北京料理や広東料理、四川料理よりも遙かにうまいと思う。北宋の頃に誕生した歴史が古い料理で清王朝の宮廷料理。北京料理の原型で「魯菜」と呼ばれている。
戦後、山東料理を横浜の南京街で食べたが、九段下のチャン料理屋にはかなわない。九段下の店も戦災で焼けてしまった。本場の山東省曲阜あたりに行けば、繊細な昔の味に出会えるのかもしれない。
最近は古代出雲王朝に関心がある。日本全国ほとんどの土地には行っているが、縁がなかったのか、山陰地方だけは行っていない。大和朝廷に滅ぼされた出雲王朝については、歴史研究家の本がいくつもあるが、史料が十分でない古代だけに謎が深い。
梅原猛氏の「葬られた王朝 古代出雲の謎を解く」の著作を耽読したが、スサノオやオオクニヌシの出雲王朝の謎は深まるばかりであった。この地を訪れたことがないから、肌で実感するものがない。それだけに謎が謎を呼んで、興味が深まる一方である。古代朝鮮の統一国家であった新羅と出雲の関係も定かでない。
というわけで、ことしは秋が深まれば古代出雲王朝の文献を読み漁ってみようと思っている。菅VS小沢のチャンバラ劇よりも遙かに面白く、興味が尽きない。
杜父魚文庫
6169 秋の夜長を出雲王朝の謎解きで過ごす 古沢襄

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