6174 日本の衰退はしばしとまらない 宮崎正弘

GDP519兆円を475兆円に下落させた犯人は民主党政権ではないか。予算緊縮、所得激縮、雇用収縮、悪性デフレを将来した無能政権。
政権与党の民主党は党首選というコップのなかの嵐。誰がなろうと、この未曾有の不況から脱することは出来ないのではないか? 乱暴者オザワ待望論もあるが、所詮、かれにも経済の舵取りは出来ない。
海外の投機筋は日本の政治リーダーシップの欠如を狙って、悠然と円高を仕掛けている。日本はおろおろするばかりで、いまが危機であるという認識さえできない。
だから投機筋は、世界一の金利安なのに日本の国債と円を買って、ますますの円高を仕掛けて濡れ手に粟のごとくに、しこため稼ぎだし、それでもあきたらず、執拗に次の円高を仕掛ける。貨幣が「商品」に化けて、つまりは狐が木の葉を黄金にみせて狸に渡し、だましあう。
たとえばドイツは輸出が向上し始めている。「ユーロはギリシア・ショック以降、対ドルレートを19%切り下げたが、対円レートはじつに36%! 中国向けドイツ車は全体の5%、増加率は9・1%である」(ヘラルドトリビューン紙、9月3日付け)。
ならば日本が円安をしかける番ではないのか?すくなくとも国益を守るためには「国際協調」は後回しになる場合もあるのだ。
それにしても無能な人々が政権を担い、ますます日本の衰退傾向が加速された。麻生政権末期に、財政出動が功を奏して、GDPは519兆円に恢復したことがあった。
▲危機意識を認識できないほどに無能な政府と日銀
政変があって鳩山政権となるや短時日のうちに希望はかき消え、夢は潰え、徒らな緊縮財政と大衆受けを狙った「仕分け」とやらに狂奔してGDPを押し下げ、つまりは国益を踏みにじって外国投機筋に絶好の商機を提供し、国内経済を灰燼に帰すまでに衰退させてもテンとして恥じず、管政権となると「恐慌」の窓があいた。
日銀に至ってはなすすべを知らず、世界の投機筋のカモとなった。
GDPを構成する四つのファクターは「個人消費」「設備投資」「財政出動」「貿易黒字」である。デフレのため個人消費はのびるどころか明らかに下降し、設備投資は101兆円から、なんと76兆円に落ち込む(日本企業は円高のため国内工場をやめて中国へ、或いは外国に進出し国内空洞化が加速したためである)。
くわえて円高は「貿易黒字」も激減させた。貿易黒字は90兆円から59兆円に陥没した。「日産は為替差損で15億円,SONYは20億円、トヨタは30億円を失った。キャノン、ホンダなど上に同じ」(同ヘラルド紙)。
小学生でもわかるように「円安」に導く政治力がないとなると残る可能性は「財政出動」だけが頼りである。ところが民主党は誰に煽られているのか、自主判断が出来ないのか、財政を拡大するべきところを縮小方向にしたためGDPが激減し、日本経済の沈没が確定的となるのだ。
ギリシア・ショックを梃子として、ユーロ圏は「ユーロ安」を演出し、このため日本から欧州向けの輸出がとまる一方でドイツの輸出は激増する。フランスもイタリアも輸出を伸ばしている。韓国も円高の隙間を塗って輸出を大幅に増やした。
米国の圧力をはねのけて人民元は安いままだから、中国の輸出競争力は維持される。オバマ政権は「輸出二倍増」という国家目標を掲げてドル安を続けるために、日本企業は米国工場の増設も視野に入れる。
▲日本の衰退は確定したのではないのか
あまつさえ欧・米・中は、そろって通貨を増発し、通貨供給量を空前の規模で拡大させて景気回復に努めるときに民主党政権は緊縮、仕分けを馬鹿の一つ覚えにとなえ、くわえて消費税率アップを獅子吼した。タイミングを計る能力もないようだ。
日本の予算は「拡大再生産」には使われず、すべてが後ろ向きの「介護保険」「子供手当」「生活保護」「年金」など非生産部門に巨額が投じられ、経済の根幹である公共事業はストップし、金融、ゼネコン、不動産業界を襲った失業の拡大も留まるところがない。
自ら墓穴を掘っているのである。新卒にも就職口が激減して社会は暗くなる一方である。
菅も小沢も、この未曾有の危機を突破する構想力が備わっておらず、民主党への期待を抱くのはもはや愚かである。日本の衰退はしばしとまらないだろう。
杜父魚文庫

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