6214 菅首相に具体策はなにもない――日米関係を読む(4) 古森義久

古森の講演内容の紹介を続けます。今回はアメリカ側識者たちの菅直人評です。辛口のコメントが続出します。
                   ======
経済政策については疑問視
菅さんに対するアメリカ側の評価についてさらに紹介しますと、ウォールストリートジャーナルの社説では以下のようなことを言っています。「菅氏は鳩山氏よりは有能に見え、より明確な政策指向を有し、より強いリーダーシップをこれまでも発揮してきたかもしれない。しかし普天間問題への自分自身の見解は不明。国家安全保障に対する考え方も分からない。菅政権下で普天間基地移転が日米合意通りに履行されるかまだ予断は許されない」と。
また同紙は経済に関しては、「菅氏の経済感覚は希望を持てるものではない。財務大臣としてデフレ対策を講じた時の彼の主な戦略は日銀をただ脅しつけて、既に緩やかだった金融政策をさらに緩和するよう迫ることだけだった」、「菅氏は日本経済を活性化する構造的な改革の具体案を持っているわけでもない。彼は最近日本の財政赤字対策として消費税の増税を提案したが、その提案は現在のデフレ下での消費を抑制してしまう危険をはらんでいる」と、その能力を疑問視しています。
同じく経済に関して先程のマイケル・グリーン氏も次のように言っています。「菅氏は日本の経済を成長させることができるだろうか? 彼は財務大臣になるまで経済政策については何も知らず、ボール・サミュエルソンが書いた経済学の入門書を買って一生懸命読んでいたと言われる。菅氏は反官僚のスローガンを声高に叫びながらも、財務大臣としては財務官僚たちに依存してきたという」と。これらが当たっているかどうかは別として、きめ細かい論評であり、辛辣な指摘であると思います。
菅さんへの評価としては、先述のジム・アワー氏も次のようなことを言っていました。「菅氏は就任当初の数日ではアメリカをほっとさせる言明を続けている。だが長期には安倍、福田、麻生、鳩山という四代の日本の総理大臣ができなかったことを実行できるかどうかが鍵となる。それが何かと言うと、ガバナンス、統治だ」と。そう言われてみると、我々としては鳩山政権には統治、ガバナンスというものがあったのかなかったのか、あったとすればどういう内容だったのかと、ちょっと考えさせられる指摘だというふうに思います。
日米関係の基本構造には揺るぎがない
アメリカでの菅さんの評価についていろいろと紹介しました。七月十一日に参議院選挙が行われます。その結果が出ていない今の段階で菅政権の展望を論じても意味がないという側面はあるのですが、現段階での識者とかメディアの見解を総括すると、「鳩山首相が退任してほっとした。菅新首相は未知の部分が多いけれども、ひとまず日米危機の度合いは減った。しかし菅政権の展望は長期はもちろん中期で見ても不確実である」ということになろうかと思います。(つづく)
杜父魚文庫

コメント

タイトルとURLをコピーしました