6264 為替介入で東京ニュースが注目の的 古沢襄

英ロイター通信が「菅改造内閣は内憂外患の船出、予算編成や税制改正で問われる調整能力」という東京発の記事を書いている。
だが在京の海外特派員の関心は日本の政局というよりは、改造内閣が二度目の為替介入に踏み切る点に注目している。市場原理に逆らう政府介入と欧米は日本を非難するが、日本はそんなことを言っておれない。野田財務相は今後も介入を継続する方針を明らかにした。
日本が為替介入の長期化という可能性があるわけだから、日本の円高を好機にして輸出を伸ばしていた欧米にとって無関心ではおれない。東京情報に一喜一憂する事態となった。
米ブルームバーグに至っては、野田財務相が為替介入について「市場を注意深く見ながら必要な時に断固たる措置を取る」と発言したことを取り上げ、記者の質問に答える形で「7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)や20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の場で、為替介入を受けて円について説明する」と述べたことまで詳しく報道している。
<[東京 18日 ロイター] 17日夕に正式発足した菅改造内閣は、小沢一郎・元民主党代表の影響力を極力排除し、政策の継続性を重視した布陣を敷いた。菅直人首相は内閣改造後の会見で、下振れリスクが高まっている景気への対応を最優先課題に位置づけ、追加経済対策を盛り込む2010年度補正予算に前向きな姿勢を示した。衆参で与野党勢力が逆転する「ねじれ国会」への対応や、民主党内を2分した代表選のしこりも残る「内憂外患」のなか、追加対策の早期実現や来年度予算編成、税制改正に向けて菅首相のリーダーシップと調整能力が問われることになる。
<為替介入長期化の可能性、日米首脳会談に注目>
新生・菅政権が直面する最大の課題は、世界経済の減速懸念や、進行する円高などを背景とした日本景気の下振れリスクへの対応だ。菅首相は会見で、景気への対応を最優先課題に掲げ、「金融政策、財政政策をしっかり打っていく」と景気下支えに政策を総動員する考えを強調。「何らかの景気対策が必要」とし、追加経済対策を含む2010年度補正予算の編成に前向きな姿勢を示した。
政府は15日、6年半ぶりに円高是正の為替介入に踏み切り、今後も介入を継続する方針を明らかにしているが、単独介入の効果の持続性には懐疑的な見方も多い。欧米経済の先行き不透明感が強まるなか、市場でも為替介入は長期化せざるを得ないとの指摘が聞かれ、「金融政策との連携による大胆な追加対策を打ち出さなければ、消耗戦に終わる」(民主党議員)との懸念も根強い。国会のねじれ状況を踏まえ、菅首相は補正予算の内容や規模について、与野党協議で合意形成を目指す意向を示しているが、調整に手間取れば政治リスクが再び意識される可能性が大きい。
また、日本の為替介入に対して海外から批判的な声も上がるなか、介入効果を持続させるために国際社会の理解を得る努力を続けることも必要だ。菅首相は今月下旬にニューヨークで開催される国連総会に出席する機会を利用し、オバマ米大統領と会談することも明らかにした。為替介入についても議論される可能性があり、菅首相の交渉能力が問われることになりそうだ。 
<補正予算が最初の与野党対決へ、野党内にはマニフェスト執行停止前提の議論も>
追加経済対策については、自民党や公明党など野党は4兆円─5兆円規模を求めており、臨時国会では最初の与野党対決となる見通し。自民党は8日に5兆円規模の「緊急経済危機対策」をまとめた。財源では「民主党マニフェスト施策の執行停止」7000億円も盛り込んでおり、民主党マニフェスト事項の見直しも迫る勢いだ。補正予算審議が民主党内の不協和音を表面化させる可能性も出てきた。
<税制改正・来年度予算編成 財源論で難航も>
年末の来年度予算編成と来年度税制改正議論では、新規国債発行を今年度の44.3兆円以下に抑制する方針を堅持できるかが焦点。菅首相は財源の制約からマニフェストの修正も辞さないが、党内のねじれ状況の中で財政規律をどこまで貫けるかは不透明。その後の与野党ねじれ国会での紛糾は必至だ。
税制改正では、法人税引き下げや雇用促進税制、投資・開発促進税制が焦点となる。菅首相は「一に雇用、二に雇用、三に雇用」と雇用対策の重要性を強調し、10日に閣議決定した経済対策では、2011年度税制改正で、雇用促進減税や企業の環境関連の設備投資・技術開発促進税制を打ち出した。同時に、来年度税制改正では、国際競争力強化のための法人実効税率引き下げの結論を得ることも決めた。法人税を5%下げれば1兆数千億円の税収減が見込まれる。法人税引き下げは「課税ベースの拡大等による財源確保」を前提としているが、既に経済対策の柱として閣議決定された税項目に、財務省内では「財源確保は厳しい」と当惑の声が漏れている。
税制面では、基礎年金国庫負担引き上げに伴う2.5兆円の財源確保も課題だ。国民年金法では税制抜本改革によって安定財源を確保した上で国庫負担を3分の1から2分の1に引き上げることが規定さている。しかし、2009年度、2010年度については、将来の税制抜本改革を前提に臨時措置として財政投融資特別会計からの繰り入れでしのいできた。しかし、「埋蔵金」が枯渇するなか、財源確保は年末の大きな課題になっている。
この点でも、消費税を含む税制抜本改革の議論は待ったなしだが、結論を出す時期を含め、抜本税制改革の工程表はなお不透明だ。仙谷由人官房長官は、菅改造内閣の閣僚名簿を発表した会見で、強い経済・強い社会保障・強い財政の「一体的改革を本格的に行っていく」と胸を張ったが、具体性はまだ未知数だ。(ロイター)>
<9月18日(ブルームバーグ):野田佳彦財務相は17日深夜、財務省で記者会見し、景気対策として浮上している今年度補正予算の編成について、「現段階でまだ財源の検討はしていない。具体的に補正予算編成に入ると確定したわけではない」としながらも、その必要性や内容、規模について「与野党とも胸襟(きょうきん)を開いて検討していく」と述べた。
野田財務相は一方で、「補正予算編成に伴う国債の追加発行については「基本的に望ましくない」とし、「中身や財源確保の問題で共通点があるのかどうかという議論になる」との見通しを示した。
補正予算編成をめぐっては、菅直人首相が同日夜の改造内閣発足後の会見で、「国民生活に直結する景気対策なら野党と合意形成は可能」との見通しを示した上で、「補正予算は野党と協議する中で提出時期も考えたい」と述べていた。
財務相はまた、来年度税制改正について「新成長戦略や経済対策に法人税の実効税率の見直しや雇用促進税制の検討という宿題がある」と指摘。「それぞれ課税ベースを広げながら、財源確保する観点の中でその実現を図っていきたい」と述べた。
このほか、菅首相からは為替問題を含んだ経済情勢への対応や今年度予算の着実な執行などについて指示があったことを明らかにした。
野田財務相はこれより先に官邸で行った会見で、為替介入について言及し、市場を注意深く見ながら必要な時に断固たる措置を取る決意をあらためて表明するとともに、為替介入に対する国際社会の理解を求めることを強調した。その上で、記者の質問に答える形で、7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)や20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の場で、為替介入を受けて円について説明する方針であることを明らかにした。(ブルームバーグ)>
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