菅改造内閣がスタートした。ご祝儀相場かもしれないが内閣支持率も上昇している。とはいうものの菅首相の政策実行能力に対する評価が低い。支持率の上昇は”脱小沢”を鮮明にした閣僚の布陣が好意的に受け止められたためであろう。この点では党内に抵抗勢力を見立てて、支持率を高めた小泉元首相の手法と似ている。
だが小泉時代と違う点がある。
一つには小泉氏は解散・総選挙を断行して抵抗勢力を公認せずに積極的に対立候補を立てて大勝した。これが小泉内閣の支持率を一気に高める原動力となっている。多くの抵抗勢力は離党して党内から一掃されている。
菅政権は党内を二分した小沢支持グループを抱えたままで、閣僚人事、党役員人事で脱小沢色を鮮明にした。これが内閣支持率を高める要因となっているが、党内的にみれば片肺飛行の危うさを残している。副大臣、政務官人事で、閣僚がゼロとなった小沢グループを登用して挙党態勢の形を整えるというが、政権の主導権は脱小沢グループが握っていることに変わりはない。
もう一つは小沢氏の息の根を絶ってない。むしろ小沢氏は来年三月に予算関連法案が野党が多数と参院で否決され、菅内閣が立ち往生するとみている。七ヶ月改造内閣とみて、そこが第二の勝負所と見定めている。いわば党内に爆弾を抱えて、来年三月を迎える点が小泉時代とは根本的に違っている。
外交路線では前原外相という親米派が登場した。対中国外交では厳しい点では小泉外交と似ている。しかし小泉時代と違うのは、中国が経済力で世界第二の経済大国になり、軍事力を飛躍的に強化した点である。日本は否応なしに大国になった中国という大陸国家と向き合わねばならない。
日米関係を基軸としながら、大陸国家と向き合うというのは、言うほど簡単なことではない。中国は民主党政権が外交不在とみて、対日攻勢を強めてきている。日本ナショナリズという観点だけで中国の対日攻勢に立ち向かうのは危うい。これも小泉時代とは違う点であろう。
様々な不安定要素を抱えながら菅改造内閣はスタートした。これからは内閣支持率だけが頼みの政権運営では乗り切れない課題が山積している。ふたたび菅VS小沢の権力闘争を繰り返せば、民主党政権が沈没することになりかねない。
自民党が20%前後の支持率で低迷していることに気を許してはいけない。野党は新聞やテレビの露出度が低いから20%前後の支持率で低迷するのが当たり前なのである。自民党政権下の野党・民主党も20%前後の支持率で低迷したではないか。
民主党政権が無為無策を露呈し党内抗争に明け暮れれば、支持率が急降下することが経験則からいっても明らかでである。
杜父魚文庫
6274 小泉時代とは似て非なる菅改造内閣 古沢襄

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