米中関係ではレアアースという稀少金属の不足がユニークな摩擦を引き起こしています。このレアアースをめぐっては日本と中国との間でも対立があります。
レアアースの不足がハイテク産業に悪影響を与えることは、再三、指摘されてきましたが、実はアメリカ側では高度兵器類にも支障を引き起こすことが強調されています。そのへんの実情について報告しました。
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【ワシントン=古森義久】米国では、中国が輸出を規制したハイテク製品に不可欠な希少金属レアアース(希土類)を、一連の高度兵器製造に必要としており、安全保障への影響を最も深刻に懸念していることが、米連邦議会の報告でこのほど明らかにされた。対策としてはまず、中国の輸出規制に国際的に挑戦することが勧告されている。
中国が全世界生産の97%を占めるレアアースの輸出を規制し始めたことは米国でも大きな波紋を呼び、連邦議会の議員の法案審議用の資料を扱う議会調査局は、「レアアースのグローバルな供給網」という報告を作成した。
報告で注視されるのは、日本での議論ではまず出てこない軍事面への影響である。同報告はネオジム系やサマリウム系のレアアースが
(1)ジェット戦闘機のエンジンの電気システム
(2)ミサイル誘導システム
(3)電子妨害防止システム
(4)水中機雷探知システム
(5)ミサイル防衛システム
(6)人工衛星の動力と通信システム・・・などに使われてきたと強調している。
報告はレアアースは近年、米国内ではもう生産されず、ほぼ100%輸入に依存していることを伝え、中国が輸出の規制を進めれば、「米国の兵器製造に不可欠な材料が不足することで国家安全保障への重大な支障が起きうる」と警告している。
報告は、中国の実情について、中国国内のハイテク製品の増産などによりレアアースの国内需要が急増してきたことを認めながらも、国内における備蓄戦略や国際市場の操作意図をも指摘している。
米国の今後の対策としては、米国内でのレアアースの生産の再開や備蓄の増大、輸入先の分散などのほかに、中国政府の輸出規制策には不当な点もあるとして、世界貿易機関(WTO)などを通じて、日本など他のレアアース主要消費国とも連帯しての「中国の輸出政策への国際的な挑戦」を勧告している。
報告によると、米連邦議会には、レアアース確保のための政府の対応措置を求める法案がすでに4件、提出されたという。
杜父魚文庫
6282 中国のレアアース輸出規制はアメリカの軍事に悪影響 古森義久

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