尖閣諸島付近で発生した日本の巡視船と中国漁船の衝突事件は、これまでの日中関係で最悪の事態となった。日本側は過剰な反応を慎む姿勢だが、中国全土で反日運動が広がる気配があって、中国政府は日を追って対日非難を強めている。
この事態について米ウオール・ストリート・ジャーナルや仏AFPなど欧米系のメデイアが大きく取り上げている。抑制的な報道を守っている日本のメデイアとは対照的といえる。日中間のあつれきは米国にも微妙な影響が及びそうだが、日中両国間の仲介に乗り出す気配はない。
<【北京】中国政府は19日、尖閣諸島(中国名・釣魚島)付近で起きた日本の巡視船と中国漁船の衝突事件で日本が漁船船長の拘置を延長したことを受けて、日中間の閣僚など高官レベルの往来を停止した。この結果、両国関係は5年間で最悪の事態となった。
中国政府はまた、日本の出方次第では「強い対抗措置」を講じると述べており、今週、中国全土でナショナリスト的な抗議運動が展開される恐れがある。また両国間の通商関係にも打撃となりかねない情勢だ。
日中両国は天然ガスが埋蔵されているとみられる尖閣諸島をめぐり、しばしば対立してきたが、中国がアジア水域で海軍力を急速に強化しているだけに、今回の日中間のあつれきは米国にも微妙な影響が及びそうだ。
米国は輸出を増やすとともに、アジア地域で支配を強めようとする中国に拮抗(きっこう)すべく、この地域でのプレゼンス強化に努めている。
米政府当局者は、多くのアジア諸国当局者とともに、中国がグローバルな舞台で自信を深めるにつれて、地域的な争点をめぐってますます強硬なトーンをとっていることに懸念を表明している。米海軍大学のジョナサン・ポラック教授(アジア・太平洋問題専攻)は、アジア地域の安定を守り、紛争を平和的に解決することが米国の最優先課題だと述べた。
また同教授は、米中貿易・経済関係は近年急速に拡大しているが、米政府はアジアにおける米国の伝統的な同盟国との関係は引き続き重要だとのメッセージを中国政府に送りたいと考えていると述べ、「米国は中国との戦いを求めていないが、引き続き東アジアと東アジア水域に対する米国のコミットメントを強化し続けるだろう」と語った。
ホワイトハウスのギブズ米大統領報道官は、オバマ米大統領が今週ニューヨークで開催される国連総会に出席する際、菅直人首相、中国の温家宝首相と個別に会談する予定だと述べた。またクローリー米国務次官補(広報担当)は19日、「われわれは(日中の)緊張の高まりを承知しているが、外交的に解決可能だと信じている」と述べ、これは日中両国間の問題であり、米国は関わっていないと語った。
日中両国の紛争は他の多くのアジア諸国、例えばインド、ベトナム、フィリピンも注視している。これら諸国も中国と領土ないし領海紛争を抱えており、中国の海軍力増大を懸念しているためだ。
新華社通信によると、中国政府は19日、日本との閣僚、省レベルの往来を停止したほか、航空路線増便の交渉中止、石炭関係会議の延期などの措置を取った。
中国外務省の馬朝旭報道官は「中国は日本が直ちに漁船の船長を無条件で釈放するよう要求する」と述べ、「日本が誤ったことを次から次へと主張すれば、中国は強い対抗措置を講じる」と警告した。
中国は漁船船長の拘置以降、日本の丹羽宇一郎中国大使を5度にわたって呼び出し、尖閣諸島周辺の天然ガス共同開発協議を延期した。新華社電によれば、19日には日本側が中国漁船船長の拘置延長を決めたことを受けて、同大使をまたも呼び出し、「強い憤りを表明し、日本の拘置延長に強く抗議した」という。
今回の問題で、菅首相と中国の温首相が国連総会出席に伴い非公式に会談する公算が小さくなっている。
中国指導部は、2005年の同様の争いで反日暴動が起きたことの二の舞いにならないよう、国内のナショナリスト的な抗議を抑制してきたが、対日抗議を認めるべきだとの国内的な圧力にさらされている。
これに対し日本は尖閣諸島が中国のみならず台湾も絡む係争水域であるとの主張を受け入れない構えで、国内問題として処理する方針。日本はまた、中国の漁船が意図的に日本の巡視船に衝突してきたと主張、撮影したビデオでもそのことが確認できるとしている。18日に就任したばかりの前原外相は「この水域に領海問題は存在しない」と述べた。
アナリストらは、中国からの今後の「対抗措置」としては、同諸島周辺での一方的な天然ガス開発ないし日本製品のボイコットが考えられるとしている。
一部では、中国が円高にすることによって日本製品の輸出を閉め出すかもしれないとみる向きもある。中国政府が最近数カ月間、膨大な外貨準備を使って円資産を購入しており、円高の一因と批判されている。ただし、これまで中国が意図的に円高に誘導しているとの証拠はない。(ウオール・ストリート・ジャーナル)>
<【9月20日 AFP】東シナ海(East China Sea)の尖閣諸島(Senkaku Islands、中国名:釣魚島)付近で起きた中国のトロール漁船と日本の海上保安庁巡視船との衝突事件で、日本の裁判所は19日、公務執行妨害容疑で逮捕・送検された漁船船長の拘置期限の10日間延長を認めた。これをうけ、中国外務省は同日、閣僚級以上の交流の停止などの対抗措置を発表した。
中国外務省の馬朝旭(Ma Zhaoxu)報道局長は同日の記者会見で、拘置されている中国人船長の即時釈放を求め、認められなければ「強い対抗措置をとる」と警告した。
国営新華社(Xinhua)通信によると、対抗措置には閣僚級の交流停止に加え、日中間の航空路線増便に関する交渉の中止や石炭関係会議の延期も含まれているという。
週内には国連(UN)総会に合わせ、菅直人(Naoto Kan)首相、中国の温家宝(Wen Jiabao)首相双方がニューヨーク(New York)入りするが、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領とそれぞれ別々に会談する。
さらに、新華社によると、王光亜(Wang Guangya)外務次官は19日夜、丹羽宇一郎(Uichiro Niwa)駐中国大使と電話で会談し、船長の拘置延長に抗議の意を示し、事件は日中関係を著しく損なうもので、今後おこる結果の責任は全て日本側にあると警告した。(AFP)>
杜父魚文庫
6284 過去最大の日中間のあつれきに 古沢襄

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