新任の外務大臣の前原誠司氏はいまから5年ほど前、ワシントンでの講演で中国を「現実的脅威」と呼びました。大規模な軍拡を続ける中国が脅威であることは明白でした。
当時の前原氏は民主党の代表でした。その前原氏はワシントン訪問後、すぐに中国を訪れ、同じように中国を脅威と呼びました。
ところがその後、日本で同じ民主党の仲間からその発言を非難されました。反中だなどという例のレッテルを貼られたわけです。そしてすごすごとその「中国は現実的脅威」という認識を引っ込めてしまったのです。
さてそれから五年、いよいよ日本の外務大臣となった前原氏は中国をどうみているのでしょうか。中国の軍事力の拡張は当時より激しくはなっても、少しも衰えてはいません。
さあ前原外相、いまの中国は脅威なのでしょうか。以下は前原氏のワシントンで講演での発言についての報道です。
======
訪米中の民主党の前原誠司代表が民間シンクタンクの講演で、中国の軍事力強化を明確に「脅威」と位置付け、憲法改正でも集団的自衛権の行使を容認するなど、従来より一歩踏み込んだ発言を行った。外交・安保政策で政権担当能力があることを印象付けるねらいがある。前原代表は十一日から中国・北京に直行するが、中国要人との会談でも「毅然(きぜん)とした発言」を貫けるか。
「実際には中国政府が公表している二倍から三倍の軍事費が使われているのではないかとの指摘もある。現実的脅威だ」
前原代表は八日夕(日本時間九日午前)、ワシントン市内の戦略国際問題研究所(CSIS)での講演でこう断言した。
中国の軍事力については、国内の専門家から拡大路線に対する危惧(きぐ)が指摘されているものの、政府は「私は中国脅威論はとらない」(小泉純一郎首相)とのスタンスを維持している。
前原代表が「脅威」という表現を用いて中国の軍事大国化に懸念を表明した背景には、「小泉政権よりも現実的な民主党の外交認識を示す」(保守系若手)狙いがある。「中国脅威論」は米国政府の基本認識でもある。党内には「米国内だから言えたこと。問題は中国の指導部に同じことを直接言えるかどうかが肝心だ」(同)との見方もある。
中国では、唐家●国務委員との会談が確定したほか、胡錦濤国家主席らとの会談が調整されているが、「実現するかどうかはギリギリまで分からない」(同行筋)という状況。党関係者によると、前原代表が先月三十日に王毅駐日大使と会談した際、対中政策の基本を「対話と関与、そして抑止の両面で対応すべきだ」と説明したのに対し、王大使は「『抑止』という言葉に強い警戒感を示していた」という。
CSISでの講演では、現行憲法上、「保有はするが行使できない」とされる集団的自衛権問題に前向きな姿勢を示した。民主党の「憲法提言」は、「制約された自衛権」という表現を記しただけで、集団的自衛権の行使を認めるかどうかは「決めていない」(枝野幸男党憲法調査会会長)。前原代表の発言はこの点でも党の見解を大きく踏み出した。
民主党では昨年、訪米した岡田克也代表(当時)が「憲法を改正し国連決議がある場合は海外での武力行使を可能にすべきだ」と発言したものの、帰国後、小沢一郎元代表代行に酷評され、発言をトーンダウンさせた。前原代表が中国でも国内でも「持論」を貫けるか、真価が問われる。(2005年12月10日 産経)
杜父魚文庫
6289 前原外相、中国は脅威ですか 古森義久

コメント