米戦略国際問題研究所(CSIS)研究員、ラリー・ニクシュ氏は中国人船長釈放などについて、次のように語った。
日本が中国漁船の船長をこの時点で釈放したことは唐突に過ぎ、いかにも中国の圧力に屈したようにみえる。私が日本側の当事者だったら、明らかに違法行為を働いた中国船長はもう少し拘束を続け、もっと尋問して、厳しく扱っただろう。日本の法律に従っての最大限の拘束をしただろう。
日本の検察はこれまでの尋問で、この船長が日本側への侵犯や海上保安庁の船への衝突をまったく個人の次元で実行したのか、それとも中国当局から指示を受けてそうしたのか、を解明したのだろうか。この点は極めて重要だといえる。その点をあいまいなままに釈放したとすれば、日本の大きな誤りだろう。
今回の船長釈放はアジアの他の諸国からみれば、中国が領土紛争でも一方的に行動し、攻撃的な態度をとって、その行動を通用させてしまうという強硬なイメージを鮮明にした。
日本としてこれからまず注意すべき第1の点は、中国側の「民間活動家」に尖閣諸島への強引な上陸や付近領海への侵入を許さないようにすることである。第2には、中国側の尖閣付近での軍事演習に気をつけ、日本側の領海やそのすぐ外側では軍事活動をさせないよう配慮することだ。中国側の軍事部隊の進出を許すと、尖閣問題は性格を変え、日本側を不利にしてしまう。
日本政府が中国漁船の船長を釈放したのは米国政府の圧力もあったからだという推測もあるようだが、オバマ政権にとって日本と中国が尖閣の問題で対立をエスカレートさせることは好ましくないという認識はやはりあっただろう。オバマ政権でも国務省はこの釈放に内心、ほっとしていると思う。
その一方、国務省は尖閣諸島が日米安保条約の適用を受け、もし軍事攻撃を受けた場合は日米共同防衛の対象になるということをかつてなく明確に言明した。米側のこの点での日本支援誓約は重視してよいだろう。
日本側も米国と連帯して中国の領土拡大の動きに反対するならば、最近のクリントン国務長官が表明した、南シナ海での中国の覇権的な姿勢への反対に明確に同調すべきだ。同長官は南シナ海の諸島への中国の領有権を認めず、南シナ海の航行の自由はすべて保障されるべきだと主張したのだが、日本の態度がまだはっきりしない。尖閣でも中国との衝突を機に、この点での対米協調を考えたらどうだろうか。(談)
米戦略国際問題研究所(CSIS)研究員 ラリー・ニクシュ氏 米国議会調査局で30年以上、アジア情勢を分析し、歴代政権の外交政策に関与してきた。朝鮮問題の専門家でもあり、北朝鮮への制裁強化に消極的な中国に対し、「米国、日本、韓国の3カ国が連携し、中国に圧力をかけていくことが必要」などとも語っている。
杜父魚文庫
6343 中国の日本領海への再侵入や軍事演習を許すな 古森義久

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