6350 中国漁船は故意に衝突?! 古森義久

こういう見方もあります。
□米ヘリテージ財団研究員 ディーン・チェン氏
中国漁船衝突事件は、中国海軍の艦船が今年4月に沖縄本島と宮古島の間を通過した活動を含め、昨年来の中国海軍の活発な動きとの関係でみる必要がある。従って、日本は中国人船長を釈放したが、これですべてが終わったわけではない。
では、中国政府がかつてない強硬姿勢を見せた背景には何があるのか。
一つは、中国が経済成長と軍拡で自信を深め、大国になったと自覚し、それにふさわしい行動をとろうと考えていることだ。これらの行動は区別はつきにくいが、覇権主義と受け止めることもできる。
中国は同時に、インドとは、(同国東部にあり中国と国境を接する)アルナチャルプラデシュ地方、東南アジア諸国とは南シナ海(の島々の領有権)、米国とは宇宙の衛星破壊実験をめぐり、覇権主義の姿勢を押し出してきている。
中国は国内で社会不安が増大しているがゆえに、対外的に強硬な姿勢をとらざるを得ないとの見方がある。従って、対外的に融和姿勢をとるわけにはいかず、国内の愛国主義をかき立てているのだろう。
ただ、日中関係には先の大戦が暗い影を落としており、その意味で現在の事態を過小評価すべきではない。中国の指導者が単に自国民の感情をあおっているだけでなく、中国国内からわき起こる純粋な愛国主義の発露とみるべきだ。
次に、今回の事件が偶発的なものか、組織的なものかは分からない。
中国が昨年3月、南シナ海で米調査船「インペッカブル」の活動を妨害したように、われわれは、中国漁船が主権にかかわる活動に使われたとみている。この一件は、今回の衝突事件で、中国政府が漁船を仕立て故意に起こしたのではないか、という根本的な疑問を惹起(じゃっき)する。
中国は今年7月、軍事作戦を支援する際、民生物資の動員を可能とする「中国国防動員法」を施行した。こうした軍と民生部門のあいまいな状態はとても危険だ。何かあった場合、民間の漁民が危険にさらされる可能性がある。
米政府は一貫して、領有権についての立場は示さない。しかし、日本の施政下にある領域への武力攻撃に対し、共通の危険に対処することを明記した日米安全保障条約が、尖閣諸島に適用されるのは明白だ。もし、尖閣諸島周辺で日本への武力攻撃があり、日本が日米安保条約の発動を求めた場合、米国はこれに応えるだろう。
中国政府は、米国が日本の強力な同盟国であり、何かあれば日本のために動くということをはっきり認識すべきだ。中国がこの問題で強い態度に出れば出るほど、破滅的な事態が起きる可能性はそれだけ大きくなる。(談)
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【プロフィル】ディーン・チェン
1966年生まれ。86年、米プリンストン大卒、米マサチューセッツ工科大(MIT)院博士課程。米議会技術評価局で中国の軍需産業に関する調査員を経て、米海軍分析センター中国研究所研究員。専門は中国政治、軍事。44歳。
杜父魚文庫

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