韓国の中央日報が「自滅を招く中国の高声外交」という批判コラムを掲げた。中国は日本を激しく攻撃しているが、張り手を食らった日本に土下座までしろというのは”やり過ぎ”と言っている。「日本はすでに今回の件で十分に屈辱を受けた」のに中国は緒戦の勝利の気分に浮かれ過ぎている。
どうも日本にとって面白くない表現だが、当たっている面はある。外交が不得手な菅内閣の”だらしのなさ”が韓国の目には、そう映るのであろう。
しかし別の波及効果があった。中国に遠慮してきた米国だったが、尖閣諸島の衝突事件で、アジアにおける米国の役割を再認識することになった。中央日報は「アジアに戻ってきている米国に注視する」と結んでいる。
尖閣諸島の一角が中国によって破られれば、中国の外洋海軍は大手を振って西太平洋に出てくる。そのことの重要性に米国は遅まきながら気がついたのであろう。
<攻撃をする時は逆襲に注意しなければならない。 むやみに相手を攻めると不本意に弱点を表すこともあり、それが逆襲を受けるきっかけになったりもする。 攻勢が守勢に変わるのはあっという間だ。 攻撃をするにしても自らの立場を考慮しながら慎重にしなければならない。 何でも度が過ぎるとよいことはない。 それがこの世で生きる理致だ。
中国が日本を激しく攻撃している。 緒戦の勝利の気分に浮かれ、この際、日本を痛い目に合わせようと気勢が上がっている。 紛争水域で操業して拘禁された自国漁船の船長をありったけ圧力手段を動員して釈放させ、日本政府に謝罪と賠償までも要求している。 張り手を食らった日本に土下座までしろという注文だ。 中国ならそうできるのか。 易地思之(相手の立場で考える)の知恵はどこへ行ったか。 行き過ぎた力自慢はブーメランになって戻ってくることを知らないのだろうか。
5つの無人島と3つの暗礁からなる東中国海(東シナ海)の尖閣諸島(中国名・釣魚島)は面積をすべて合わせても7平方キロメートルにすぎない。 海上路の要衝で、周辺に石油とガスが大量に埋蔵されているというが、このいくつかの島のために戦争をするというのはナンセンスだ。 日米同盟が崩れない限り、中国が武力で尖閣諸島を占領することはないだろう。 どっちみち戦争をするものでないのなら、中国もこの辺りで退くのが上策だ。 日本はすでに今回の件で十分に屈辱を受けた。 これ以上の屈辱を強要するのは度が過ぎる欲であり、無理なことだ。 中国が言う実用主義と現実主義の外交原則にも合わない。
領土主権に関する限り譲歩はないという断固たる立場を、中国はこの機会に日本に示したかったはずだ。 19世紀末の日清戦争で勝利した際に日本が尖閣諸島を自国領土に編入させたことに悔しさを抱いているだろう。 日本から受けた歴史的な屈辱を返そうという思いもあるはずだ。 しかしいま尖閣諸島を実効的に支配している国は日本だ。 力を動員した圧力は反発を呼ぶ。 愛国主義で武装したネットユーザーの世論を中国政府が無視できないのは、日本政府が国民の反中世論を無視できないのと同じだ。 中国を重視するというのが執権民主党の外交路線だが、世論に逆らってまでそうすることはできないものだ。 向かい合って走る途中、今回は日本が先に立ち止まったが、次もそうするという保証はない。
中国がいま注目すべきものは尖閣諸島ではなく米国だ。 アジアに戻ってきている米国に注視する必要がある。 昨年11月の韓日中歴訪中にオバマ米大統領が東京サントリーホールでした演説は、米国のアジア復帰を知らせる信号弾だった。 演説でオバマ大統領は「米国はアジア・太平洋国家だ」と宣言した。 アジアに向かう米国の足取りが速まっている。 ASEAN(東南アジア諸国連合)10カ国と「10+1首脳会議」を定例化し、東アジア首脳会議(EAS)への参加も公式化した。 来月末にベトナムで開催されるEASに米国はオブザーバーとして参加するが、正会員になるのは時間の問題だ。 原子力協定の締結を契機にインドとの協力を加速化する一方、中国と隣接するベトナムとの軍事・経済協力にも拍車を加えている。 南シナ海の南沙群島と西沙群島の領有権紛争に沈黙してきた米国が、最近になって国益と直結するという理由で露骨に介入したのも目を引く変化だ。
米国の動向は基本的に21世紀の力の中心がアジアに移動しているという判断ためかもしれないが、中国に対する牽制意図を否定することはできない。 周辺国に対する中国の圧力が強まるほど、アジア周辺国はワシントンに寄りかかるしかない。 中国が周辺国に声を高めるほど、米国が介入できる余地を広め、自らを隔離させる副作用を生む。 天安(チョンアン)艦事態と今回の尖閣紛争で中国が見せた強圧的な態度は、安保的な側面で韓国と日本の対米依存を強める結果として表れる可能性が非常に大きい。 米国のアジア復帰の動きが速まる中、オーストラリア-インド-ベトナム-日本-韓国をつなぐ対中包囲網が徐々に表面化している。 中国が自ら招いた側面があることは看過できないだろう。
「中国脅威論」と「中国責任論」はともに中国にとっては負担だ。 米国は「G2」の帽子をかぶせて中国責任論を浮き彫りにする一方、アジア周辺国の中国脅威論に便乗して中国への牽制と圧力を強化している。 開発途上国にすぎない中国はまだ前途は長いという論理で責任論から免れようとする一方、「和平崛起論」で中国脅威論に対応している。 しかしいつまでこうした対応が通用するかは疑問だ。 米国が築いておいた国際秩序に乗って経済的な利益を極大化しながらも、それに見合う役割はしていないという不満の声が多い。 また経済力を基礎に力の外交を露骨化しているという批判の声もますます強まっている。
内部的に中国は数多くの問題を抱えている。 貧富の格差に地域格差、民族葛藤、不正腐敗、人権・環境・エネルギー問題などだ。 内部問題の解決法を自分なりに見つけるまではひとまず声を低め、自国の穴を冷静に見つめる必要がある。 力を信じて声を高め、自国の弱点につまずいて自滅するような不幸な事態が起きないよう注意しなければならない。 稲は実るほど垂れ下がるものだ。(中央日報)>
杜父魚文庫
6351 自滅を招く中国の高声外交 韓国紙 古沢襄

コメント
日本創新党 中国人漁船船長の釈放に抗議する署名のお願い
http://www.nippon-soushin.jp/information/signature02.html