6398 西ドイツ政府と核兵器保有で極秘協議 古沢襄

日本政府が1960年代後半に当時の西ドイツ政府と核兵器保有をめぐり極秘に協議していたとするNHK報道は大スクープといえる。この時期は私が自民党担当から外務省担当になった時と重なっている。佐藤栄作氏が沖縄返還を政治課題と位置付けたのは池田内閣の頃に遡る。
首相となった佐藤氏は沖縄返還の具体的なプランを描いているが、私が知るかぎり核抜き本土並を最初から考えていたわけでない。ひとつには米側にその考えがないことと、外務省が核抜き本土並の沖縄返還を空論として問題にしなかった事実がある。
佐藤内閣になって椎名外相時代に外務省担当となったが、外務事務次官は下田武三氏。古武士のような風格の人であった。外務省には法眼ドクトリンというタカ派思考のプロ集団が久しく残っていた。米ソ冷戦時代の産物といえる。下田次官当時にはタカ派思考が薄れていたが、核抜き本土並の沖縄返還を受け付ける下地はまったくなかったといえる。
佐藤氏が政治家のカンで核抜き本土並の沖縄返還に踏み切った時期は定かでない。ただ私が知っているのは、外務省から核抜きの根強い反対に直面していた事実である。
下田氏は外務事務次官から駐米大使に転じている。米国に赴任して一時帰国した下田大使は首相官邸で佐藤首相と会い「沖縄返還は本土並の条件なら早期決着が可能だが、核抜き返還を条件に加えるなら、現下に国際情勢から早期決着は困難」と意見具申している。1969年1月のことである。
この時には佐藤氏は「核付き返還なんて考えられない。あくまで核抜きでいく」と下田氏の意見を退けた。背景には佐藤側近の木村俊夫氏(官房長官)や密使としてキッシンジャー大統領補佐官との交渉に当たった若泉敬氏の動きがあった。二元外交というよりは、外務省サイドを退けた佐藤外交といっていい。
この流れからみると、外務省が西ドイツ政府のスタッフと核兵器保有をめぐり極秘に協議したのは、首相官邸とは別の動きといえる。それは核抜きによって、日本の安全保障が危うくなるという外務省なりの危機意識から、独自に核保有を検討することであったのかもしれない。だが多くの関係者がすでに亡くなっているので、真相を確かめるのは困難であろう。
首相官邸があずかり知らぬことだったら、トーキング・ペーパーも処分されていた可能性がある。
<前原誠司外相は4日、日本政府が1960年代後半に当時の西ドイツ政府と核兵器保有をめぐり極秘に協議していたとする3日のNHK報道について、省内で事実関係を調査するよう松本剛明副外相に指示した。この時期は佐藤栄作首相が非核三原則を表明し、定着していく時期と重なっており、副外相は記者会見で「実際に話があったのか、関連文書が残っているか調査し、どう議論が行われ、我が国の外交にどうつながっていったか調べる」と述べた。
報道によると、69年に外務省幹部が旧西ドイツ外務省幹部と箱根などで協議し、日本側が核兵器を保有する可能性を示して西ドイツに協力を求め、西ドイツが難色を示したと伝えたという。ドイツに残っていた西ドイツ外務省の機密資料で判明したとしている。
これについて、協議に参加した元外交官は毎日新聞の取材に対し「69年2月上旬に東京で西ドイツ外務省と意見交換し、箱根で接待をしたことは事実だ。ただ、テーマは一般的なもので、核保有を巡る議論をした記憶はまったくない」と語った。元外交官によると、日本側は、のちに事務次官になった村田良平氏(故人)ら数人、西ドイツ外務省からも数人が参加したという。
仙谷由人官房長官は4日の記者会見で「佐藤内閣に(核保有を検討する)方針が一部にでもあったのか、日本の選択肢を狭めないために自主的に動いたのか分からない。調査を待ちたい」と語った。(毎日)>
杜父魚文庫

コメント

  1. ほり より:

    中国の共産党・・・中国覇権主義
    まず中国は「尖閣諸島」に上陸、つぎに「沖縄(琉球王国)」・・・
    本『ショーダウン』ペンタゴン(国防総省)の元高官二人「ジェッド・バビン氏」「エドワード・ティムパーレーク氏」
    しかも「米国大統領は日本側からの再三の防衛支援の要請にも応じず、日本の首相に『米国は中国との戦争はしたくない』と告げて、不介入を表明し、国連への調停を求めるように通告する」。 だそうだ・・・
    日本は核武装を持つべきだ。
    主な核武装論者 (Wikipedia)
    伊藤貫(国際政治・米国金融アナリスト)
    中川八洋(筑波大学名誉教授 歴史人類学専攻)
    副島隆彦(常葉学園大学 教育学部特任教授)
    中西輝政(京都大学大学院人間・環境学研究科教授)
    志方俊之(帝京大学教授。元陸将。元陸上自衛隊北部方面総監)
    福田和也(慶應義塾大学教授、文芸評論家)
    平松茂雄(「沖縄と共に『自立国家日本』を再建する草の根ネットワーク」専任講師、国家基本問題研究所評議員)
    西部邁(秀明大学学頭)
    兵頭二十八(軍学者)
    小林よしのり(漫画家)
    橋下徹(弁護士、大阪府知事)
    勝谷誠彦(コラムニスト)
    西村眞悟(政治家)
    田母神俊雄(軍事評論家)
    石原慎太郎(作家、東京都知事)
    櫻井よしこ(評論家、ジャーナリスト、国家基本問題研究所理事長)
    元谷外志雄(アパグループ代表)
    和田秀樹(精神科医)
    星野秋史(星秋リコネサンス代表

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