6427 ノーベル平和賞が中国共産党の面子をつぶす 古森義久

ノーベル平和賞が中国の獄中作家の劉暁波氏に決まりました。ノーベル委員会もたまには味なことをするものです。
中国政府は当然ながら激怒です。アメリカの大手メディアもいっせいに「中国政府を激怒させる」とか「これで中国と外部世界との緊迫が高まる」と報じています。
しかし報道の基調はみな歓迎です。それにしても中国共産党は対応が下手ですね。ノルウェー政府を威嚇するなんて。国内での報道をシャットアウトするなんて。
授賞がどうしたの?ノーベル賞なんて、たいしたことないよ、という態度をウソでもいいからとれば、被害は最小ですむのに。とは思いませんか。
実はいまの中国外交部の女性報道官は私の北京在勤中、頻繁に顔を合わせていて、チベット旅行にも引率側として一緒に加わっていたほどなので、助言してあげたくなります。
さてこの授賞が国際的にどんな余波をもたらすか。まずはニュースを掲げます。
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ノルウェーのノーベル賞委員会は8日、今年のノーベル平和賞を、中国で投獄中の著名な民主活動家、劉暁波(りゅう・ぎょうは)氏(54)に授与すると発表した。「長年、中国で基本的人権のため、非暴力的な手段で闘ってきた」ことなどが授賞理由。中国政府は授賞しないよう圧力をかけていたが、ノーベル賞委員会は屈しなかった。
国内では報道管制
劉氏は1989年の天安門事件の際に天安門広場でハンストを行い逮捕された。96年には政府批判の公開書簡を発表、3年間の労働矯正処分を受けた。2008年には、一党独裁体制の廃止や民主選挙、人権の尊重などを訴えた文書「08憲章」の起草にかかわり、発表直前に拘束された。今年2月、国家政権転覆扇動罪で懲役11年、政治的権利剥奪(はくだつ)2年の判決が確定し現在、遼寧省錦州市の刑務所に投獄されている。
中国の傅瑩(ふえい)外務次官は6月、「劉氏に平和賞を授与すれば、ノルウェーと中国の関係は悪化するだろう」と、賞を与えないようノーベル賞委員会に圧力をかけていた。
中国外務省の馬朝旭(ば・ちょうきょく)報道局長は8日、劉氏について「中国の法律を犯した犯罪者。ノーベル賞の趣旨に反し、平和賞を侮辱するものだ。中国とノルウェーの関係に損害をもたらすだろう」と非難する談話を出した。中国国内では、劉氏の平和賞受賞を報じていたNHKの海外テレビ放送のニュース番組の画面が突然真っ暗になり、視聴できなくなった。インターネットも規制された。
「自由」求める欧米
ノーベル賞委員会委員長のトールビョルン・ヤーグラン元ノルウェー首相は、この日の授賞理由の発表で「中国政府は毎年、(民主・人権活動家に平和賞を授与しないよう)圧力をかけてくる。これは尋常ではない」とした上で「中国に(民主化を進めるべきだとの)メッセージを送ることが必要。そうしなければ、われわれが人権活動家を裏切ることになる」と強調した。
フランスのベルナール・クシュネル外相はこの日、フランスと欧州連合(EU)が何度も劉氏の解放を求めてきたことを指摘した上で「フランスはあらためて解放を要求する。フランスは世界中の表現の自由をめぐる問題に強い関心を抱いている」と述べた。
ドイツ政府スポークスマンもこの日、「劉氏自ら授賞式に出席できるようにすべきだ」と語り、中国政府に劉氏の解放を要求した。欧米では今後、劉氏救出の世論がさらに高まりそうだ。
一方、菅直人首相(63)はこの日、記者団に「普遍的価値である人権について、ノルウェーのノーベル賞委員会がそういう評価をし、メッセージを込めて賞を出した。そのことをしっかりと受け止めておきたい」などと述べただけだった。
尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖の中国漁船衝突事件で中国の恫喝(どうかつ)に屈した日本と、平和賞の独立性を守ったノルウェー。一体どちらが大国だろうか。
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産経新聞の社説が授賞の決定前にわかりやすい解説と主張を書いているので、背景や意味を考えるうえでは役に立ちます。以下はその紹介です。
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ノーベル賞発表の季節を控え、中国がノーベル平和賞の受賞者選考に圧力をかけていることが明らかになった。無理を通して道理を引っ込めるような姿勢を強める中国の外交スタイルと、国内の人権弾圧を如実に表す行動というべきだろう。
10月8日に発表が予定されるノーベル平和賞には、過去最多の237個人・団体が候補として推薦を受け、ノルウェーのノーベル賞委員会で受賞者選考が進められている。選考過程は公開されないが、最有力候補の一人と伝えられるのが中国で服役中の民主活動家、劉暁波(りゅう・ぎょうは)氏だ。
中国共産党の一党独裁体制の廃止を求めて2008年に発表された「08憲章」の起草者といわれ、憲章発表の直前に逮捕されて国家政権転覆扇動罪で懲役11年の判決を受けた。平和的な手法で改革を訴える文書を発表するだけで長期の投獄生活を強いられる。そうした国家のあり方は、大国になればなるほど異様に映る。
その異様さがもたらす受難があるからこそ、劉氏の受賞が有力視されているのだが、中国当局にそうした発想はないようだ。
ノルウェー・ノーベル賞委員会のルンデスタッド事務長によると、中国の傅瑩(ふえい)外務次官は今年6月、「中国に対する非友好的な態度になるだろう」と述べ、中国反体制活動家に平和賞を与えないよう露骨に圧力をかけたという。
同事務長は中国がここ数年、「いかなる反体制活動家にも授与するな」と繰り返してきた事実も明らかにしている。
2年前には、やはり国家政権転覆扇動罪で投獄されている人権活動家の胡佳(こか)氏がノーベル平和賞の有力候補と伝えられ、中国外務省の報道官が強い不快感を表明している。胡佳氏には同年、優れた人権活動家を表彰するサハロフ賞が欧州議会から贈られた。
衛生管理がずさんな売血事業でエイズが広がった河南省の売血スキャンダルの告発者で知られる女性医師の高耀潔(こう・ようけつ)さんは昨年、「身の危険が迫ってきた」として82歳で故国を捨て米国に逃れた。
北京五輪の後、リーマン・ショックに端を発する先進諸国の経済危機を糧に経済的な影響力を強めた中国の人権状況は、大国化により悪化している感すらある。今年のノーベル平和賞はそうした内外の情勢を踏まえ、高度な判断が逆に必要かもしれない。
杜父魚文庫

コメント

  1. リュウギョウハに惑わされるな より:

    中国共産党の報道規制は間違ってないと思う。
    そもそも社会の秩序を乱した犯罪者であることには間違いない。しかも重罪であることはよく知られている。
    そんな日本でいうところの中核派のスパイを報道するのは悪影響を及ぼしかねない。だから報道規制は絶対必要だし、今後の中国にとっても世界にとってもあってしかるべきだと思う。
    リュウギョウハは一生刑務所で暮らすべきだ。
    過激派を英雄視する最近のノーベル賞に権威はもはやない。今こそ孔子平和賞を!

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