6455 小村寿太郎を僭称する柳腰官房長官 阿比留瑠比

《柳腰(やなぎごし)シダレヤナギを思わせる、すんなりした細い腰つき。美人の腰の形容》(岩波国語辞典)《柳腰(やなぎごし) 柳腰(りゅうよう)の訓読。細くてしなやかな腰つき》(広辞苑)
さて、衆院予算委員会はきょう、中国漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりした場面を撮影したビデオ映像の提出を、那覇地検に求める議決をしました。だからといって、ただちに事態が進展し、国民の目に事実が明らかにされると決まったわけではありませんが、とりあえず一定の前進だと受け止めます。
で、このビデオ公開をしぶっている仙谷由人官房長官についてでありますが、昨日の衆院予算委員会で実に面妖な答弁をし、勝ち誇っていました。
「弱腰だ、弱腰だと言うが、『柳腰』というしたたかで強い腰の入れ方もある。しなやかに、したたかに中国に対応していく」
…この人は一体、何を言っているんだろうかと、しばし呆然としました。それはいくらなんでも言葉の使い方が違うだろうと。「柳腰」の意味するところは、冒頭に記した通りであり、あえて柳腰外交という言い方をするとすれば、相手を誘い入れるような文脈上、おかしな話になってしまいます。
ところが、質問者の自民党の石原伸晃幹事長はその点を突っ込まなかったので、不満を覚えていたところ、本日の衆院予算委で、やはり自民党の鴨下一郎氏が質問していました。たまたま仙谷氏は定例記者会見のため不在でしたが、以下のようなやりとりです。ばかばかしい質疑ですが、同時になぜか、菅政権の深刻な宿痾のようなものも感じてしまいました。
鴨下氏 「官房長官が、弱腰の反対語として柳腰外交と。これは外交としてありえない」
菅直人首相 「私からコメントは控えた方がいいと思う。ご本人にお尋ねいただきたい」
鴨下氏 「訂正しておいた方がいいんじゃないですか。いろいろなところで笑いものになっているんですよ。仙谷お姉がこういうことを言ったと。日本の名誉のために、柳腰外交という言葉は訂正した方がいい。柳腰じゃないでしょう。二枚腰外交だとか、粘り強い外交だとか、こういうんだったらいいですよ」
古川元久官房副長官 「詳細はご本人でございますが、私が聞いておりましたところで感じたところは、それは柳腰という言葉遣いをいたしたかもしれませんけれども、しなやかにですね、そしてまたしたたかにやっていくと。官房長官はその中身をご説明していたと思います」
鴨下氏 「中国の語源には、柳腰という言葉は、どちらかというと、女性がしなをつくるというような趣旨なんですよ。外交の中で、中国に対するメッセージが、柳腰外交だってもし出るとすれば、これは日本の名誉のため訂正しておいた方がいい」
古川氏 「官房長官は、中国で言われているような意味で柳腰というのを使ったわけではなくて、しなやかでしたたかな外交をすると申し上げたわけです」
鴨下氏 「決してポジティブな言葉ではないと理解してください」
…それで、ここまでなら相変わらず仙谷氏の日本語はちょっと変だなあ、どうしてこんなこと言うかなあ、菅氏はいつも「逃げ菅」だなあで終わったわけですが、その仙谷は本日午後の記者会見でまたやらかしてくれました。自分のおかしな言葉遣いに反省を示すどころか開き直って自己正当化を試み、あろうことか自分を日露戦争後に苦労してポーツマス条約を締結した小村寿太郎になぞらえるかのような増上慢ぶりをあらわにしたのです。ホント、誠意の欠片もないな、この人は。
記者 「柳腰外交」というのは言葉遣いが間違っているときょうの予算委で指摘されたが、どう考えるか。
仙谷氏 別に女性が弱いとか、か弱いとか、あるいは柳腰だから弱いということは、どこかの辞書に書いてあるかはわかりませんけど、私は女性ほど強いものないと思っている。(←最初から論旨のすり替え)
この種の話を、一時、大きい声を出すとかね、なんとかで、強面でいったら良かったんだとか、強腰で良かったんだとかそういう話では決してないと思う。(←言葉遣いがおかしいと指摘されただけなのに、話を牽強付会にねじ曲げています)
やっぱ少なくともわれわれは、1984年の日清戦争以降、「なめられてたまるか」とか「負けてなるものか」とか、その気負いだけで突き進んだ部分が1911年以降、日本の破綻に結びついたと総括して(←何の話をしているのか)、従って、1905年のポーツマス条約について、これは完全に弱腰外交どころか、日比谷公園が焼き討ちされたところのでいった。そのぐらい、大騒動に発展したわけです。(←国民は者知らずで道理の分からぬバカだと言いたいらしい)
政府が日本とロシア、あるいは中国、あるいはその他の英国、フランス、ドイツと中国を占領していた国々との関係での力関係をほとんど考慮することなく、そういう実情を、当時の政府もあまり教えていなかった。(←ビデオをいまだに公開していないくせに何を言うのか)
それでこんな、賠償金も取れずに(小村寿太郎が日本に)帰ってきたと。そういう平和条約を結んだのはけしからんということで、あの事件が起こった。(←柳腰の話がいつのまにかこんな問題に!自分の弁舌に酔っています)
外交全体としては、いろんな現実的な二国間、およびそれを取り巻く周辺の力関係や状況変化というものを考えながら取り結んでいかないといかんなということを改めて思っておりまして、その観点から釈放だけを取り出してどうのとか、逮捕だけを取り出してどうのとか、これはやっぱりあんまり声高に叫ぶことはよろしくないんじゃないかなと、ま、そんな総括でございます。(←要するに、中国には勝てっこないので、大人しくしていましょうということですね)
記者 現在の日中関係を踏まえていうならば、その「柳腰外交」はできていると考えるか。
仙谷氏 少なくとも、わが党になってからは、わが党の政権になってからは、できているんじゃないかと思っておりますが。
…なるほど、言葉の真の意味での柳腰外交は確かにできているかもしれませんね。あーあ、こういう人たちだと分かってはいても、本当に嫌になりますね。幸い、菅内閣の支持率は、フジテレビの新報道2001の世論調査(首都圏対象)では、9月23日調査の63.2%から10月7日調査の44%へと、わずか2週間で19.2ポイントも急落しています。このまま「下り最速の伝説」を塗り替えていってほしいものだと心からそう願います。
やっぱり、このていたらくでは、ビデオはなかなか公開しないでしょうね…。情けない。
杜父魚文庫

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