6502 中国の「世論戦争」に備えよう 古森義久

中国が主権を拡大し、領土を収奪する際に使う軍事、非軍事の手段の紹介を続けてきましたが、非軍事の戦術の一つに「世論戦争」というのがあります。米中経済安保調査委員会の報告です。
▽世論戦
この戦術はマスコミを利用して世論を中国にとって有利な方向へ動かそうという内容である。いわばプロパガンダであり、目的は相手国の意志をくじき、中国側の 主権に関する主張がより多く受け入れられるようにすることだ。
その目的は主権に関して中国と争っている国に対して国際的にみて否定的な意見をより多く広め ることにあるともいえる。
要するにネガティブ・キャンペーンである。報告はその中国の世論戦争の実際の方法について次のように記していた。
「中国政府による世論戦の手段としては中国政府高官のメディア向け発言、中国官営の新聞や雑誌への記事掲載、外国の刊行物への意見広告の掲載、PR企業やロビイストへの宣伝の委託、国連など国際機関での中国政府代表の活動などがある。中国政府は中国の主張に反対する主張を否定し、反論する場合に頻繁にこうした手段に頼る。中国の利益や念願に反対する外国の政府や機関に対して国際的にネガティブな意見を生み出すことが目的である」
こうしたネガティブな意見づくりの「世論戦」の実例として報告は北京オリンピックの聖火リレーでの反中抗議運動への中国当局の対応をあげていた。
「とくにフランスでの抗議運動の後、中国の官営メディアはチベットへの支援者の抗議活動を激しく糾弾する記事を多数、掲載し、聖火リレーへの抗議をチベット分 裂主義者たちによる中国社会を不安定にして、北京オリンピックを阻止しようとする策謀として描こうとした。国営の新華社通信は『ダライ・ラマ一派がオリン ピックの聖火リレーを妨害すればするほど、また西側の一部の政治家とメディアがその動きを利用して中国への攻撃や非難を増せば増すほど、われわれ中国側は 全世界の人民と団結して、北京オリンピックを成功させねばならない』との主張を報じた」
しかし中国のこうした世論戦争は実際にどれほどの効果を発揮するのだろうか。その効果を数量的に、あるいは科学的に表示する方法はもちろんないだろう。だがときには明らかにその効果が出たと思われるケースもある。
報告が指摘するそんな実例は台湾に対しての世論戦だった。
「中国の 主権に対する一般の認識を中国側に有利に変えようとする国際世論戦術でとくに効果があると思えるのは、台湾の主権の主張とその外交承認に関してである。中 国は単に世論戦に留まらず、中華民国を承認している諸国に対しては大型の経済援助まで使って、その承認を取り消させ、中国との外交関係を結ぶように迫るの だ。この方法が成功した事例は多数ある」(つづく)
杜父魚文庫

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