6524 小康状態の「アキ菅」政局 花岡信昭

菅直人首相に新たなニックネームがついたらしい。これまでは、なにかあるとすぐカーッとなることから「イラ菅」という“愛称”が一般的だったのが、このごろは「アキ菅」とか「スッカラ菅」などと言われているようだ。
この記事を見て、また「イラ菅」ぶりを発揮されてしまうと困る(筆者はかつて書いた記事に対し、菅氏ご本人から直接、抗議電話を受けて対応に往生した経験がある)のだが、日本政治の最高の地位にいるのだから、こうした雑音のたぐいは笑って聞き流してほしい。それでこそ宰相の名に値する。
「アキ菅」「スッカラ菅」といったニュー・ニックネームがついたのはそれなりの理由がある。とりわけ経済政策をめぐり、どうもよく分かっていないようだとか、経済学者O氏の言うことしか聞こうとしないといった風評が飛び交っているからだ。
まあ、高位にある人は知っていても知らないふりをして部下を立てるということもあるようだから、せいぜい、ひそかに勉強していってほしいものだ。
そこで、政局はいったいどうなっているのか。菅首相にとってはありがたい展開なのだろうが、民主党代表選前後の緊迫感がすっかり消えて、一気に静かになってしまった。
小沢一郎氏が強制起訴近しという状況を迎えて、その行動が制約されていることが大きいようだ。小沢氏周辺では、一時は「30人で小沢新党を結成しよう」といった強硬論が浮上したりもしたようだが、それも沈静化した。
一方で自民党谷垣執行部は、石原伸晃幹事長、小池百合子総務会長、石破茂政調会長の新3役体制で反転攻勢に出る構えだが、もうひとつ迫力が出てこない。周辺からは「なにせ野党の経験があまりないもので、なにをどうやったらいいのかノウハウがない。かつての社会党のように何でも反対が通用する時代でもないし・・・」といったぼやき声も聞こえてくる。
臨時国会の焦点である補正予算は、公明党の賛成を得られそうな展開になっていて、衆参ねじれにより法案が全く成立しないといった最悪の事態は回避できそうだ。これも政局の沈静化に結びついている。
そうした中で、国会では仙谷由人官房長官の答弁ぶりだけが突出している。答弁の仕方が傲岸不遜だとか、関係のないことを延々としゃべっているだとか、評判は芳しくない。
尖閣問題で「弱腰だ」とやられたら「そうではなく柳腰だ」とはねつけた。柳のように柔軟にしたたかに対応しているということを強調したかったのだろうが、柳腰というのは本来はなよなよとした細い腰の美人を指す形容だ。
それを指摘されてもなお、「柳腰で間違ってはいない」と開きなおる。あるいは、新聞の見出しが気に入らないと、記者会見で堂々と批判したりもする。
仙谷氏はかつて東大全共闘の闘士、在学中に司法試験に合格した秀才だ。社会党から民主党に移り、「反小沢」の急先鋒と位置付けられるにいたった。
実際の仙谷氏は政治の裏表を熟知した苦労人タイプである。「日韓併合100年談話」や一連の「親中的尖閣外交」に見られるように、左翼の闘士に本家帰りした側面はあるのかもしれないが、国会や記者会見の場で目立っているのはある種の「やらせ」「ポーズ」と見るほうがいい。
つまりは、なんとも頼りなげな菅首相が矢面に立たされないよう、意識的にヒール(悪役)を演じているのである。そこに政治家としての度量の大きさを示そうという高度な「政治演出作法」が透けて見える。
もっとも、このごろは「仙菅大和」という言葉も出回っている。いうまでもなく「戦艦大和」の洒落である。そのあとには、「撃沈した悲劇」がついてまわる。撃沈前夜の静けさが政局の小康状態を生んでいるのだとすれば、ここはきっちりと見据えていく必要がある。
杜父魚文庫

コメント

  1. より:

    民主党の大臣達は最近壇場の国旗に礼をする者が多くなった
    最初の頃は、前原ぐらいのものだったがなかなかよろしくなってき。国旗国歌を嫌う大統領、首総が何処にいますか。
    こんなリーダーをほっておく国民も国民、左翼であろうが右翼であろうが国民である。まして国会議員である以上
    国家国民の為無我の境地で努力せよ。

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