「いじましい」の一言に尽きる。31日ハノイから帰国する菅首相は、中国の温家宝首相から首脳会談を断れた埋め合わせに控え室で一〇分間雑談したことをもって、”一〇分間の首脳会談”ができたと胸を張った。日本には「武士は食わねど高楊枝」の喩えがある。これほどまでして首脳会談にすがる根性が情けない。
福山哲郎官房副長官は「自然な形で」偶発的に行われた・・・と説明したが、こんなことを嬉々として記者団にコメントする様では、中国から足元をみられてしまう。首脳会談が出来なかったブリュッセルでは、偶然を装って廊下に椅子に腰を下ろしての束の間の”首脳会談”でお茶を濁したが、その恥の上塗りでないか。
中国が日本の首脳と会談をしたがらないのなら、こちらも毅然として振る舞うべきではないか。腐っても”鯛”、世界第二の経済大国の地位が中国に奪われても、日本はアジアの大国の地位は揺らいでいない。東南アジアの諸国は日本に対する信頼を捨ててはいない。
中国と喧嘩する必要はないが、菅首相も仙谷官房長官も対中外交で腰がひけている。ハノイでのASEAN外交は中国の態度にとらわれずにASEAN域内の日本の支援を強く打ち出す機会だった筈である。見るべきASEAN貢献策も打ち出せずに、中国との首脳会談拒否で振り回された日本外交は情けないの一語に尽きる。僅かに前原外相の毅然たる姿勢だけが救いとなった。
クリントン米国務長官は、日米中三国による外相会談を提唱した。中国は反発して応じる気配をみせないが、日中首脳会談ができないのなら、米国を巻き込んだ三国外相会談で一から出直すことも考慮しなくてはならない。
菅内閣の対中外交が無策のままだと国内から尖閣諸島に自衛隊の駐留派遣論が生まれるだろう。しかし尖閣諸島に自衛隊を派遣しても、あの狭い無人島に地下陣地を構築することは不可能である。金門島のような地下要塞を築くことは出来ないから、二〇〇人程度の自衛隊を裸のまま駐留させることになる。
中国軍が本気になって尖閣諸島を占領する挙にでれば、海上自衛隊を出動させて撤収するはめとなる。軍事的なオプションは避けるべきである。また無策なままに終始すれば、中国軍が尖閣諸島に派兵する危険性がある。ここはクリントン米国務長官の提唱に乗って外交交渉で中国の野望を封じる手しかない。
杜父魚文庫
6580 僅かに前原外相の毅然たる姿勢だけが救い 古沢襄

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