■外交、共和党と衝突必至
【ワシントン=古森義久】米国中間選挙で共和党が躍進し、オバマ政権の外交はどのような影響を受けるのか-。同政権はそもそも外交面で目立つ成果をあげていないため、下院で多数派を取った共和党側からの批判は重みと鋭さを増すこととなろう。
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▼審議でも主導権
オバマ政権は中東政策でも、イランと北朝鮮の核兵器開発の阻止策でも、着実な成果があげられず、中国に対しても当初の融和の姿勢を逆に利用された形と なってきた。しかし議会では上下両院とも民主党多数だったため、外交に関する公聴会の内容や法案、決議案の提出でも共和党側の露骨な批判はこれまでかなり 抑えられてきた。
ところが新議会では下院で共和党が多数を取り、外交関連の委員会の委員長ポストを握り、審議でも主導権を得るため、政権非難の噴出も予測される。
米国外交の主要部となる中国政策で民主党は、全体に貿易面では国内の雇用保護の立場から共和党よりも強硬だが、オバマ政権は中国の人権弾圧や軍事拡張に はわりとソフトな対応である。だが共和党側は元来、この領域での対中批判が強く、下院での多数派の特権を駆使し人権や軍事の面でのオバマ政権の対中「軟 弱」を攻撃することも予測される。
▼「普天間」で違い
対日政策でも民主党多数の議会から政権批判が出ることは少なかったが、今後は下院では日米同盟、とくに米軍普天間飛行場問題などでもオバマ政権とは異なる見解が容易に表明されるメカニズムができあがることになる。
アフガニスタンやイラクへの米国の関与では、共和党側は従来、民主党よりも積極策を唱えており、オバマ政権のアフガンからの米軍撤退計画に対しては厳しい視線を向けることになる。
▼CIA尋問制約
テロリズム対策全般では両党の姿勢の差異は少なくなってきたとはいえ、オバマ政権が議会民主党の支持を得て進めた中央情報局(CIA)のテロ容疑者尋問方法の制約について、共和党下院側はすでに公聴会を開いて、同政権の姿勢に反対を表明する方針を明らかにしている。
オバマ政権にとってさらに懸念の対象となるのは、ロシアとの間で結んだ新戦略兵器削減条約(新START)の上院での批准だといえる。条約の批准には、上院全体の3分の2の67票が必要だが、中間選挙での民主党議席の減少によりこの勝算が揺らいだわけだ。
杜父魚文庫
6606 オバマ政権 対中「軟弱」、揺らぐ新START批准 古森義久

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