国会開会中の毎週木曜日には、自民党の各派閥がだいたい例会だか総会だかを開きます。で、それぞれ各派の幹部があいさつを述べるのですが、これは普通、当たり障りのない話が多くてあまり面白くないものだし、ましてや今は野党で影響力も乏しいので、あまり記事にはなりません。
そんな中で、ここのところ、志帥会(伊吹派)の伊吹文明会長が百人一首のパロディーで政権批判の句を詠んでいるのが目をひきます。メディアの関心を呼ぼうと考えたのか、あるいはヒマなのか…例えば、10月21日の総会ではこんなことを述べました。
《「しのぶれど 色に出にけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで」。平兼盛の歌だ。パロディー風に言うと、「しのぶれど 答弁に出にけり わが本音 恫喝傲慢 人の問ふまで」。詠んだ人は、仙谷朝臣弁多という人だ。》
…まあ、句(パロディー)のうまい下手は問いませんが、率直な感想ではあるように思います。それでこの一回だけなら、「ふーん」で終わったのですが、伊吹氏はその翌週の28日にもこんなあいさつをしました。
《この前、百人一首のパロディーを出したところ、もう一首ぐらいいいだろうと言われたので一生懸命考えた。「菅がため しゃしゃり出でて 答弁す 我が衣手に 火が降りつつ」という一首をもってあいさつを終えます。》
…これは、光孝天皇の「君がため 春の野に出でて 若菜つむ 我が衣手に 雪は降りつつ」からとったものですね。悪くはないけれど、元歌のロマンチックでかつ引き締まったような雰囲気は台無しです。まあ、菅直人首相と仙谷由人官房長官に関する描写に、それを求める方が無理があるのでしょうが。
さらに伊吹氏は、以下のように本日4日も一首披露してくれました。人前で自作(?)の歌を詠むのが楽しくなってきたのでしょうか。今後もずっと続ける気でしょうか…。何か勘違いしているような気もしないではないですが、こうなってくるとちょっと楽しみでもあります。
《毎回、百人一首を一つずつやっているので、今日は「支持率は うつりにけりな いたづらに 尖閣国後 遅れ取る間に」と。詠み人は、菅太政大臣だ。》
…面白いのですが、小野小町の元歌「花の色は うつりにけりな いたづらに 我が身世にふる ながめせしまに」は私もとても好きなだけに、少し複雑な気分になりますね。そういえば、半村良氏の小説「ながめせしまに」もしみじみとして好きな作品です。
さて、すっかり現代の狂歌師となった伊吹氏は、はたして来週の総会ではどんな句を詠むのでしょうか。きっとまた、仙谷朝臣弁多と菅太政大臣が登場するのでしょうね。なんだか野党の「明るい悲哀」も感じてしまいます。
今朝、出勤途上、だんだん冬の空気に近づいてきたなあと感じ、なんとなく写真に風景を収めました。朝晩冷えますので、訪問者の皆さんにおかれては、風邪などひかないようにご自愛ください。
杜父魚文庫
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