6637 渡辺みんなの党代表、映像流出者は「英雄になる」 阿比留瑠比

さて、本日も中国漁船衝突事件のビデオ映像公開問題について取り上げます。仙谷由人官房長官は昨日の記者会見で、映像が流出して以降、海上保安庁に激励の電話が相次いでいることについて次のように不快感を示しました。
「公開して『よくやった』というのか。犯罪行為を称揚することで、そういう気分は日本国中に少々あるかも分からないが、同意はしない」
仙谷氏は、国会で答弁した通り、ビデオ映像を地検か所轄の警察署の倉庫に眠らせておきたかったわけでしょうから、そういう感想になるのでしょう。また、菅直人首相は昨日の衆院予算委員会で流出について「政府としては管理不行き届きだった。おわびしたい」と陳謝しました。
でも、世間は必ずしもそうは考えていませんね。どうせおわびするのなら、「ビデオを隠蔽してきてごめんなさい」と言ってほしいという国民の方が多いのではないでしょうか。そもそも、隠すような内容だったのか。国民の知る権利を軽視していたのではないか。そこで、9日付の在京各紙から、関連する記事とコメントを拾って、少し愚考してみたいと思います。
まず、拓殖大の遠藤浩一教授は産経新聞でこう指摘しています。
「領土にかかわる問題なのだから、政府がこざかしい逃げ道をつくるたぐいのものではない。映像の公開は制限するものだったのか。菅内閣は、中国が行っているような統制をやっている」
この点については、毎日新聞の社説も次のような記しています。
「衝突時のビデオはそもそも、国家機密として『守るべき情報ではない』(渡辺喜美みんなの党代表)との指摘もある。そのでないと言うのなら、政府はその理由を説得力をもって説明すべきだ」
これは重要な視点ですね。この流出問題に関しては、検察当局が国家公務員法違反容疑で捜査に乗り出したわけですが、そもそもビデオ映像は守秘義務の対象となるのかどうかという疑問が示されたわけです。
これに関し、今朝の各紙には次のような記述がありました。
「最高裁は1978年、守秘義務の対象は、形式的な秘密指定の有無で決まるのではなく、『実質的に秘密として保護に値する』かどうかで決まると判断した」(朝日)
「国家公務員法の守秘義務違反で刑事責任を問うには『部外秘』などと形式的に秘密扱いされていただけでは不十分で、保護するのに値する実質的な内容がなければならない、という説が有力だ」(日経)
「流出直前には一部国会議員にも限定公開されており、最高検幹部は『(容疑者が起訴され)裁判になったら、映像の秘密性が争いになるだろう』と話す」(日経)
「流出させた人物を特定しても、映像が国家公務員法で漏えいが禁止されている『職務上知ることのできた秘密』かどうか、『公判で議論となる余地はある』(検察幹部)という」(東京)
「元毎日新聞記者の西山太吉氏らが外交文書の公開を求めていた訴訟で、今年四月の一審東京地裁は『国民の知る権利をないがしろにした』と外務省を批判、原告勝訴の判決を言い渡した」(東京
…こうした一連の指摘を読んでみると、あるいは容疑者が逮捕され、裁判になったとしても、必ずしも有罪になるとは決まっていないようですね。行政処分の対象であることは当然だとしても、仙谷氏が「犯罪行為」と言い切ったの適当なのかどうか。もし無罪判決が出たら、政府は大恥をかくことになります(まあ、そのときにはもう菅政権ではないでしょうが)。
国民の素直な気持ちは、政府が知る権利を無視して隠してきた映像を白日の下にさらしてくれた人物を、なじるよりも称賛したい部分が大きいでしょうし、菅政権の隠蔽体質にはイライラさせられていますしね。
この問題について、きょうのみんなの党の役員会で、渡辺氏が再び次のようなあいさつをしています。
《尖閣ビデオの犯人捜しが行われている。これも本末転倒の話だ。大変だ、犯人捜せということになっているが、そもそもこのテープは、国家機密漏洩罪を科して守るに値する国家機密なのかということを問いたい。そういう秘密性、いわゆる実質秘といわれるような秘密性は全くないと私は思う。
犯人捜しをやって、恥の上塗りをやることはやめた方がいい。仮に流出した人が見つかったとする。彼は英雄になりますよ。民主党のためにも、こういう愚かなことはすぐやめるように申し上げておきたい》
とは言っても、もう捜査が始まっているので今さらストップは無理でしょうね。自業自得ですが、菅政権はすでに負のスパイラルに陥ってしまっているので、もう何をやっても裏目に出るだけでしょう。今回のように中途半端にあがけばあがくほど、深みにはまっていくだろうと。
正確な日時は知りませんが、今週末にも発表されるであろう時事通信の世論調査では、おそらく内閣支持率は20%台でしょう。昨日のNHKでは31%でしたが、3割を切ると政権は非常に苦しくなります。鳩山内閣は、支持率が2割前後まで落ち込んだ時点で瓦解しました。
菅首相は昨日、「どこまで頑張りきれるか分からないが、物事が進んでいる限りは石にかじりついても頑張りたい」と述べました。この言葉の中で私は、「どこまで頑張りきれるか分からないが」という部分に菅首相の本音、苦しい胸の内が表れているように思いました。
仙谷氏の言動からも、日々、軌道を外れさまよい、血迷っている様子がうかがえますし、この政権はもう長くないだろうなと感じています。菅首相が言うようには、もう「物事は進んでいる」ということはなくなるでしょう。まあ、みんな自分たちが招いた事態であり、自分自身で掘った墓穴なわけですが。
杜父魚文庫

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