6648 世界の金融システムは金に主役を務めさせるべき 宮崎正弘

ゼーリックの爆弾発言に世界の金融界経済界が湧いている。尖閣ヴィデオ騒ぎに隠れているが、世界経済の今後を占う構想の準備かも。
ゼーリック世銀総裁。ロバート・ゼーリックは貿易交渉のタフネゴシエーターとして知られ、ブッシュ政権でUSTR代表、ついで国務副長官へ出世し、さらにブッシュ政権最後の年に世界銀行総裁へジャンプした(一説にライス国務長官と対立したため)。世界経済に大きな発言力をもつ。
ゼーリック世銀総裁は、英紙フィナンシャルタイムズ(9日付け)に寄稿して「ゴールドスタンダード」(金本位制)を正面に捉えた。ゼーリック世銀総裁は「将来の世界の金融システムは金(ゴールド)に主役を務めさせるべきではないか、と言った。
このため「すわっ。一大事。やっぱり金本位制への復帰だ」とエコノミストは色めき立った。
G20出席のためソウルへ向かう途中、ゼーリック世銀総裁はシンガポールに立ち寄り、「発言の真意が誤解されている。私は金本位制復活を言ったのではない」と発言を修正した。
「30年代の大恐慌の原因と言われる金本位制への復帰を考えてはいない」とも。ならば、金価格が暴騰している状況をとらえて「金の見直し」とは、いかなる意味なのか?
ゼーリックの定義によれば、世界経済システムは、「ブレトンウッズ3」にさしかかっており、新しい議論によってつぎの未来像が形成されるだろうが、ドル、ユーロ、円、ポンドというIMFの通貨バスケットに徐々に人民元が加わり、しかしドルの主軸は、まだまだ維持されるだろうという基本認識にかわりなく、「しかし」としてゼーリック世銀総裁は続けた。
「ゴールドの役割は基準点(Reference Point)と「代替金融資産」(Aleternative Monetary Asset)であろう」。
▲ゼーリック発言の狙いはWTOの為替ルール
つまり金高騰は世界の金融システムが安定を欠いているからで、ゼーリック世銀総裁は、むしろこの議論からWTOのルールに波及し、「通貨や為替管理が、関税の低減による裨益から量的制限のごまかしに使われないようにするために、輸出補助金や為替操作をしている国にこそ罰則を与えるべきである」と続けているのである。
 
G20ソウル入りを前に、それとなく中国を批判する文脈の中で金本位制復帰、ブレトンウッズ3など、世界のエコノミストが驚倒する発言が飛び出したことに留意したい。
この日、11月10日、人民元は史上最高の1ドル=6・6325元をつけた(対日本円レートは1人民元=12円40銭)。 
 
杜父魚文庫

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