6674 オバマ大統領はアメリカ国民の多数派に背を向けられた 古森義久

オバマ大統領がアジア歴訪の最後に日本を訪れました。まもなく同大統領は日本を離れ、ワシントンに戻ります。しかしアジア諸国ではオバマ大統領は威力を発揮できませんでした。
ひとつにはつい先日の中間選挙でオバマ氏が代表する与党の民主党がそのリベラル派の「大きな政府」策を国民多数派から排除される形で大敗を喫したことがあります。どうしても対外的にも自信を失ったような感じです。
オバマ大統領がいま本国で直面する反オバマというか、オバマ離れの傾向についての解説の紹介を続けます。私自身が日本ビジネスプレスの連載コラム「国際激流と日本」に書いた記事です。
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上院議員選挙では、開票が始まって最初の当選確実がケンタッキー州のランド・ポール氏(47)、続いてフロリダ州のマーコ・ルビオ氏(39)と報じられたのも象徴的だった。
2人とも共和党の新人、しかも反オバマの急先鋒のティーパーティー(茶会)に強く支援された候補だった。ティーパーティーは草の根の保守派として、オバマ政権と民主党議会首脳の「巨大な政府支出」に最も激しく反対してきたのである。
新議会の下院議長となる共和党院内総務のジョン・ベイナー議員も、勝利宣言で「この選挙結果は、オバマ大統領の『大きな政府』と『巨額の政府支出』に有権者が拒否を突きつけたことの表れだ」と強調した。そして「個人の自由」「個人の責任」こそが米国の社会の基盤であり、経済回復のカギだとも力説した。
ベイナー議員は、「米国では伝統的に、政府からの支援よりも個人の努力や競争が繁栄を生むのだ」と唱える。自分自身が貧しい家庭に育ち、職探しに苦労したことに触れた際は、感極まって声を詰まらせ、保守派の思いの根底に「政府」対「個人」の対立構造があることを見せつけた。
最短時間で起きた最大のイデオロギーシフト
今回の共和党の躍進は、つい2年前、オバマ氏を先頭に民主党が政府でも議会でも国民の圧倒的信認を取りつけて主導権を握った事実を思うと、革命的にさえ見えてくる。
2年前は、「これで民主党は、行政、立法の両方の権力を今後40年は保持できる」(民主党政治活動家ジェームズ・カービル氏)という予測さえあった。
だが、中間選挙の結果が示したのは、「かつてない最短期間で起きた、最大のイデオロギーのシフト」(共和党系政治評論家ビン・ウェバー氏)であった。
オバマ大統領は白馬にまたがりさっそうと入城しながらも、結局、落馬した王子にも例えられる。その過程では、国民皆保険を目指した医療保険改革、景気回復対策、気候変動対応策、破綻大企業の国有救済策など、巨額な政府資金の投入による大胆かつ大規模なリベラル施策が相次いで取られた。
だが、国民の大多数の目には「明らかに過激すぎる」と映り、背を向けた。その動きには、オバマ大統領の指導者としての資質への失望もにじんでいた。(つづく)
杜父魚文庫

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