6686 ロシアは歯舞群島と色丹島の返還も凍結か 古沢襄

北方四島の返還交渉は鳩山一郎内閣の当時、河野一郎農相によって突破口が開かれた。戦後の政治家の中で一度は総理大臣になって欲しかったと思うのは緒方竹虎氏と河野一郎氏。いずれも朝日新聞出身のジャーナリストだが、この二人が総理大臣になっていたら、戦後の保守政治の流れは大きく変わっていたであろう。
河野氏は昭和29年(1954)の第一次鳩山内閣で農相に就任し、第二次、第三次鳩山内閣で農相を留任して日ソ漁業交渉、日ソ平和条約交渉でフルシチョフ共産党第一書記を向うに渡り合い、日ソ共同宣言を実現した陰の実力者であった。
日ソ共同宣言の合意によって、日本はソ連との戦争状態を終結し、外交関係を回復、ソ連は日本の国連加盟を支持することになった。さらに日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡すとしている。
1956年12月18日の国連総会でソ連と東欧諸国は日本の国連加盟に賛成し、全会一致による日本の加盟が実現している。だが、北方領土の全面返還を求める日本と、平和条約締結後の二島返還で決着させようとするソ連の妥協点が見出せないまま日ソ平和条約の締結が見送られたまま今日に至った。
河野氏は北方四島の返還は、日ソ共同宣言に基づき歯舞群島と色丹島の返還を先行させ、国後、択捉両島の返還は継続交渉とし、さらには国後、択捉両島周辺の海域における日本漁民の安全操業に保証を求める妥協案を模索したといわれる。この路線は橋本元首相、森元首相に形を変えて引き継がれている。
だが、ロシアは15日付の有力紙コメルサントで菅・メドベージェフ首脳会談後のロシア政府が今後、北方領土の歯舞、色丹両島の引き渡し交渉にも応じない方針だと報じた。これが事実だとすれば、ロシアは日ソ共同宣言で約束した平和条約締結後の二島返還をも否定したことになる。少なくともロシアは領土交渉を事実上凍結する立場に転じた可能性がある。
杜父魚文庫

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