「北朝鮮が韓国の島に砲撃を加え、韓国軍も応戦したという報道があり、私にも3時半ごろに秘書官を通して連絡がありました」・・・正直といえば、まさに正直な菅首相の発言だが、隣国での砲戦という非常事態を報道で知ったというのは、この内閣の危機管理意識の欠如を示している。
菅首相が官邸入りしたのは、北朝鮮が韓国の延坪島を砲撃した午後2時半から2時間以上も経った後だった。米ホワイトハウスのギブス大統領報道官が北朝鮮の砲撃を「強く非難する」との声明を発表したが、日本政府はどうだったか。韓国の李明博大統領と電話会談した形跡もない。
李明博大統領は多くの韓国民の犠牲を出しながら、驚くほど自制を保っている。軍事的な報復よりも国際社会に北朝鮮の暴挙を訴える姿勢である。隣国として李明博大統領を支持する動きをいち早く示すべきではなかったか。
<[ソウル 23日 ロイター] 韓国軍や同国メディアによると、北朝鮮は23日、黄海の南北境界水域に近い韓国の延坪島に砲撃した。島では建物が炎上し、韓国軍が応戦した。今回の砲撃は、北朝鮮が金総書記の後継者を決め、同国でウラン濃縮活動が明らかになるなかで起こった。
就任以来、対北朝鮮強硬路線をとってきた李明博(イ・ミョンバク)韓国大統領は、確固とした対応をとるべきとの考えを示した。韓国国防省は、北朝鮮による延坪島砲撃は明らかに休戦協定違反であり、意図的に計画された攻撃、との見解を示した。
韓国統一省は、25日に予定していた南北赤十字会談を無期限延期すると発表した。
韓国YTNテレビは、北朝鮮が少なくとも200発の砲弾を発射したと報道した。韓国軍は、砲撃により、韓国側の兵士2人が死亡、17人が負傷し、民間人にも3人の負傷者が出たとしている。
一方、北朝鮮は、今回の交戦について、韓国から攻撃してきたと主張。
北朝鮮国営の朝鮮中央通信社(KCNA)は、「われわれが繰り返し警告したにもかかわらず、韓国が午後1時から数十発の砲弾を発射した。われわれは直ちに強力な反撃を行った」とする短い声明を伝えた。 北朝鮮側の被害については触れなかった。
韓国軍の幹部は、KCNAの報道に関連し、北朝鮮からの砲撃が始まる前に、定例の軍事訓練を実施し、訓練の一環で砲弾の発射もしたが、北朝鮮を狙ったものではない、と説明した。
韓国軍幹部は「われわれは、通常の訓練をしていた。訓練上の砲弾は西に向けて発射しており、北には向けていない」と述べた。
金融市場では、砲撃の報道を受け、韓国ウォンがオフショア市場で売られ、ウォンの1カ月物ノンデリバラブル・フォワード(NDF)は約4%下落。米10年国債先物TYc1は上昇し、円JPY=は下落した。朝方の欧州市場でも、株が下落している。またリスク警戒感とドル高で、原油先物も下落している。
韓国銀行(中央銀行)は23日、砲撃という事態を受け、緊急会合を開催。声明で、金融市場の状況を注意深く監視し、政府と協力し、必要なら市場安定化措置を講じると表明した。
国際社会からは、懸念や批判の声が出た。中国は、砲撃に懸念を表明したものの、韓国、北朝鮮のどちらの側にもつかないよう慎重を期し、南北双方が「平和に貢献するためにさらに行動すべきだ」と発言、6カ国協議の再開が不可欠との認識を示した。
米ホワイトハウスは23日、北朝鮮の砲撃を「強く非難する」との声明を発表した。 声明は「米国は北朝鮮の攻撃を強く非難し、北朝鮮に攻撃的な行動の停止を求める」と表明。
「米国は同盟国である韓国の防衛と地域の平和・安定の維持に強くコミットしている」とし、韓国と緊密な連携を取り合っていることを明らかにした。
米当局者は匿名を条件に、在韓米軍は情勢を注視しているが、現時点で北朝鮮による砲撃への対応には関与していないと述べた。ロシアのラブロフ外相は、朝鮮半島の緊張の高まりは「甚大な危険」だとの認識を示し「すべての攻撃を即時停止する必要がある。甚大な危険が存在しており、それを回避する必要がある。地域の緊張が高まっている」と述べた。(ロイター)>
杜父魚文庫
6738 北朝鮮の砲撃を首相は「報道で知った」 古沢襄

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