6743 北朝鮮の砲撃がオバマ政権を揺さぶる 古森義久

北朝鮮軍が韓国領の延坪島を激しく砲撃しました。さあ朝鮮戦争が再発するのか。朝鮮半島情勢はやはり超大国で韓国の同盟国のアメリカの存在抜きには論じられません。
北朝鮮の韓国領への砲撃はアメリカに対する挑戦であり、挑発です。ではアメリカはどう対応するのか。オバマ政権はいま激しく揺さぶられています。
【ワシントン=古森義久】米国のオバマ政権は北朝鮮軍による韓国の延坪島への砲撃事件に対し23日、北朝鮮の行動を非難し、同盟国としての韓国の防衛の 誓約を言明しながらも、軍事衝突の拡大を防ぐ姿勢を明確にした。だが北朝鮮が核兵器開発につながるウラン濃縮の新施設を誇示した直後に砲撃を実行したことは核 問題での北の姿勢のさらなる硬化と挑発であり、米国はこれまでの対北朝鮮政策の根幹からの変更を迫られることともなろう。
                   ◇
米大統領報道官は米東部時間の23日午前5時すぎ「米国はこの攻撃を強く非難し、北朝鮮が好戦的な行動を停止し、朝鮮戦争休戦協定を完全に順守することを求める。米国はわが同盟国の韓国の防衛とこの地域の平和と安定に責務を有する」という公式声明を発表した。
オバマ政権が朝鮮半島での軍事衝突を忌避する姿勢は同政権のソン・キム6カ国協議担当特使の22日夕の言明でも明らかにされていた。同特使はワシントン でのセミナーで北朝鮮のウラン濃縮による新たな核武装の危機に対してオバマ政権としての「軍事オプションの回避」を繰り返し強調した。
北朝鮮が核兵器の存在を顕示しても米国はなおその除去のために軍事力を使うことはないという基本方針であり、今回の砲撃にオバマ政権としては南北間の全 面戦争や軍事衝突拡大の危険はまず全力で抑えるという対応がうかがわれる。そのためには北朝鮮に最大の影響力を持つ中国との協議も当然、進めるだろう。
オバマ政権は北朝鮮がウラン濃縮施設を公開し、ウラン爆弾開発への新たな道を誇示したため、21日にはボズワース北朝鮮担当特別代表を中国や韓国に急派したばかりだった。
米国政府の対北政策の分岐点ともいえるこの時期に北朝鮮側が韓国の島への砲撃という危険な軍事行動に走ったことは韓国だけでなく米側にとってさらなる重大な挑発だといえる。とくにオバマ政権が北の核開発阻止のためにとってきた、時間を十分にかけて相手の動きを待つという「戦略的忍耐」策は北朝鮮のウラン濃縮施設公表と韓国領砲撃によって踏みにじられたとさえいえよう。
北朝鮮が米国に今求めるのは6カ国協議の再開の前提条件としてもあげる(1)国連主導の対北経済制裁の解除(2)朝鮮戦争の平和条約締結をも視野に入れた米朝2国間交渉の開始-に加え、北朝鮮をパキスタンのような事実上の核兵器保有国として認知することだとみられる。
北朝鮮はそのためには核問題でも譲歩を拒み、さらに軍事衝突をも辞さない強硬な行動パターンを米側に突きつけ、「オバマ政権が核問題への対処では北朝鮮との2国間の直接の交渉以外に方法がないと判断するところまで追い込む戦術」(ラリー・ニクシュ前議会調査局朝鮮問題専門官)を取っているとの見方が米側では広がっている。
北の延坪島砲撃もこの戦術の一環とみられるわけだが、この種の攻撃が常に本格戦闘へと拡大する可能性を考えれば、あまりにも危険な賭けだといえる。
オバマ政権が当面、軍事衝突をあくまで避ける構えだとはいえ、韓国は米国の同盟国であり、在韓米軍の存在は大きい。
オバマ政権はすでに、北朝鮮の脅威に対して韓国や日本を含む西太平洋全域での空軍力と海軍力を増強させる「抑止強化」の政策を進めつつあるが、その動きは今後、具体的かつ敏速となるだろう。黄海や日本海へのより頻繁な米海軍艦艇の出動、グアム島への戦略爆撃機の恒常的な配備などが予測される。
杜父魚文庫

コメント

タイトルとURLをコピーしました