6748 やっと出た「蛮行」発言 花岡信昭

北朝鮮の韓国砲撃に対して、菅首相は対北非難を避けた。それが、一夜明けて、対策本部を設置し、その初会合でやっと発言した。その部分の産経配信記事。
<初会合で首相は「一般市民が生活している地域に対する砲撃であり、許しがたい蛮行だ」と強く北朝鮮を非難。その上で「韓国だけでなく、わが国を含む東アジアの情勢にとって極めて憂慮すべき状況を生み出している。北朝鮮に強い影響力を持つ中国にも一緒に北朝鮮の対応を抑える努力を求めていく」と中国政府の努力を促した。>
「蛮行」という強い言葉を用いた。これをなぜ、砲撃のあった23日に言えなかったのか。こういうのを「後だしじゃんけん」という。
国家の危機管理対策において、首相の発言は本来は重みのあるものだ。それによって、国民は安心もするし、この複雑な朝鮮半島情勢への理解も進む。なにやら菅政権はこの緊急事態を国会正常化、補正予算成立の環境づくりに「利用」する構えのようだ。
「こんなときに与野党がいがみあっている場合ではない」というのは、通りがいいようにも見えるが、日本のおかれた立場を踏まえ、国際社会に恥ずかしくない対応を取ってからの話だ。
いうまでもないが、朝鮮半島は日本の隣に位置している。半島の向こう側(黄海)で起きた砲撃戦とはいえ、日本の安全保障体制が問われる局面だ。北朝鮮は当面は再度の砲撃などやらないだろうが、3回目の核実験を行う可能性も残されている。
東アジアの緊張は一気に高まった。日本がどういう手を打つか。それによって、国際社会で日本の存在感が試されることになる。そこには、一内閣の命運を超えた重大な意味合いがある。
北朝鮮の韓国砲撃を菅政権は国会運営に利用するらしい。どうもそういう流れになっている。まあ、政治の世界のことだから、そういう気持ちは分かる。
であるにしても、「神風だ」「天祐だ」といった話が表に出たら、いくらなんでもまずい。ネットの世界では「神風」発言をめぐって大変なことになっている。
筆者あたりも旧知の民主党幹部あたりと、そういったやりとりはするが、それもこれも非公式なオフレコレベルの話だ。韓国側の兵士2人に加えて、民間人2人の死亡も明らかになったのだ。浮かれていてすむ話ではない。これに関する産経ネット配信記事。
首相、失地回復に躍起 混乱国会も棚上げムードで「神風だ」
全閣僚を集めた対策本部開催、党首会談、日韓首脳電話会談-。北朝鮮による韓国・延坪(ヨンピョン)島への砲撃を受け、菅直人首相は24日、最近にない精力的な動きを見せた。支持率が「危険水域」まで下落した直後の「有事」発生を、汚名返上のチャンスととらえているのは明らかだ。政府・与党内からは「神風だ」(民主党中堅)との本音も漏れている。
「許し難い蛮行だと言わざるを得ない」
首相は砲撃事件の対策本部の会合で、激しい言葉を使って北朝鮮を非難した。これに先立つ閣議でも「重大な事案だ」と強調した。
首相は「有事に頼りになる指導者」を強く意識しているようだ。事件の第一報が「報道」だったと明かした23日の発言が問題視されると、周辺が24日、「外交ルートを通じ外務担当秘書官から一報が入り、その後、首相がテレビをつけたらニュースでやっていた」と報道陣に“訂正”する念の入れようだ。
仙谷由人官房長官が「柳腰外交」と表現した対中外交敗北の撤を踏むまいとしているフシもうかがえる。この日は中国にクギを刺すことも忘れなかった。
首相は対策本部会合で「北朝鮮に強い影響力を持つ中国も一緒になって、北朝鮮の対応を抑えていく努力を求めていくことが必要だ」と指摘。李大統領との電話会談でも「中国が北朝鮮に働きかけることも含めて、強く求めていきたい」と強調した。
苦戦続きだった国会でも、今回の有事が政権の防波堤となりつつある。
同日夕の党首会談では、みんなの党の渡辺喜美代表が「自衛隊を暴力装置と言った官房長官は辞めるべきだ」と主張。しかし、別の野党党首は「TPOがあるからね」と渡辺氏と距離を置く姿勢を示した。政権の思惑通りの展開だ。
党首会談に同席した仙谷氏は「補正予算を早期に成立させるべきと主張した党首もいた」と明かし、野党側にも審議促進論があることを、わざわざ強調した。
「不謹慎かもしれないけど、国会対策上にとっては天佑(てんゆう)になるかもしれないな」。民主党ベテランは、周辺にこうささやいた。菅政権に批判的な小沢一郎元代表に近い中堅も皮肉混じりに語った。
「閣僚を辞めさせても補正予算案(の成立)が思い通りにならなかった政権にとっては、まさに幸運じゃないか」
杜父魚文庫

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