6762 韓国軍の反撃は効果がなかった? 古沢襄

韓国の金国防相が辞任に追い込まれたが、北朝鮮の延坪島(ヨンピョンド)砲撃の直後、韓国軍はいったん待避していて、即座に反撃していないことが明らかになっている。13分後にK-9自走砲で、80発あまりを打ち返したが、北朝鮮軍の被害は微少とみられている。
韓国国会・国防委員会に所属する民主党の徐鍾杓(ソ・ジョンピョ)議員は、「対北朝鮮監視体制であるワッチコンが、2段階へと格上げされた現状の中、いまだに(北朝鮮軍の)被害状況が明らかになっていなのは納得できない」とし、「人命被害は把握が難しくても、航空衛星などで、少なくとも陣地やバラックなどの被害はある程度把握できるだろう」と疑問を呈している。
東亜日報によれば「韓国軍が公言しているのとは違い、北朝鮮軍の被害は微々たるものではないかという声が持ち上がっている」ということの様だ。
北朝鮮の海岸砲は海岸絶壁の洞窟の中にあり、コンクリートの壁で遮蔽されているので、韓国軍のK-9自走砲のでは、ほとんど打撃を与えられないというのが、軍事専門家の見方だという。
朝鮮半島の軍事バランスを論じる軍事専門家たちは、精強韓国軍が相当に弱体化しているとみる向きが多い。たしかに朝鮮戦争当時よりも韓国軍の装備は飛躍的に強化されている。しかし、この精強韓国軍が弱体化した原因は、皮肉にも「漢江の奇跡」といわれる韓国経済の躍進に求める指摘が多い。
国全体が豊かになり、尚武の気風が失われるのは韓国だけでない。軍の根幹となる士官学校の志願者も減る。将校のみならず戦力の要となる下士官も長期勤務を忌避して、民間に転職するケースも増えている。
韓国と対峙する北朝鮮が同じような経済発展をして、北朝鮮軍が弱体化してくれていれば、南と北の軍事バランスがとれるのだが、生憎そうはなっていない。北朝鮮では先軍政治の名のもとで軍人が最上級のエリート階級となっている。
士官養成のため男子の万景台革命学院、姜健総合軍官学校、金日成軍事総合大学、女子の康盤石遺子女大学が難関として知られている。士官でなくとも高等中学の卒業生は多くが兵役につき、この中から地上軍の一般兵科の将校になれる道が開けている。
装備では韓国軍に劣る北朝鮮軍だが、延坪島の砲撃戦をみるかぎり北朝鮮軍の士気が高く、戦闘行動も上をいくとみておいた方がいい。食糧不足で北朝鮮軍兵士の脱走が相次ぐという情報をまともに信じているわけにはいかない。
<23日、北朝鮮の延坪島(ヨンピョンド)砲撃挑発直後、韓国軍はK-9自走砲で、80発あまりを打ち返したが、これまで北朝鮮軍の被害状況はなかなか知られておらず、疑問を生んでいる。
軍当局は25日、北朝鮮軍の被害状況について、「情報資産を活用し、確認しているところ」とだけ明らかにした。しかし、西海(ソヘ)5島周辺地域で、韓米両国が、最新の情報監視体制を稼動していることを考慮すれば、被害規模の把握が、余りにも遅いのではないかという指摘が出ている。韓米両国はこれまで、無人偵察機や航空衛星、最先端光学レンズを取り付けた観測装備などで、北朝鮮側の動向をつかんできた。また、必要によっては傍受部隊を通じ、北朝鮮軍の通信内容を把握したこともある。
陸軍将校出身の国会・国防委員会所属の民主党の徐鍾杓(ソ・ジョンピョ)議員は、「対北朝鮮監視体制であるワッチコンが、2段階へと格上げされた現状の中、いまだに被害状況が明らかになっていなのは納得できない」と主張し、「人命被害は把握が難しくても、航空衛星などで、少なくとも陣地やバラックなどの被害はある程度把握できるだろう」と指摘した。実際、昨年11月、南北海軍の警備艇が大靑島(テチョンド)周辺で衝突した時は、救急車が移動し、負傷兵が運ばれる北朝鮮軍の状況を、韓国軍の観測装備がつかまえたこともある。
これを受け、韓国軍が公言しているのとは違い、北朝鮮軍の被害は微々たるものではないかという声が持ち上がっている。軍当局が、「K-9自走砲は1発の被害地域(50X50メートル)が、北朝鮮軍海岸砲の被害地域(15X15)より広く、威力は10倍に達する」と言い、「80発なら、北朝鮮軍の陣地も相当被害をこうむっただろう」と主張してきた。
しかし、ケモリ基地の海岸砲弾の多くが、海岸絶壁の洞窟の中にあり、曲射砲であるK-9自走砲の打ち返しでは、ほとんど被害がないだろうというのが、軍専門家ら概ねの見方だ。軍は、バラックなどの主要施設を狙って打ち返したと明らかにしたが、相当な打撃は期待できないという反論も少なくない。北朝鮮軍の砲撃は、事前に緻密に準備されただけに、砲撃前に兵力などを他のところに移動させた確率が高いという理由からだ。
韓国軍が第1次の打ち返しで、火力を集中させた北朝鮮のムド海岸砲基地から、第1次射撃に続き、第2次射撃が再び行われたことも、我々の対応射撃が予想ほどの威力はなかったという証拠だという指摘もある。
米自由アジア放送(RFA)は25日、「英国や米の専門家らの衛星写真の分析からも、23日、北朝鮮軍が延坪島に先制攻撃を行った事実が、再度確認された」と話し、「英軍事情報会社『IHSジェインス』の衛星写真分析家は、『衛星写真から、北朝鮮より延坪島の被害状況がさらに大きいのを見れば、誰が先に攻撃を行ったのか推測するのは難しいことではない』と語った」と報じた。
軍関係者は、「初期対応が消極的だという批判が湧き上がっており、民間人まで犠牲になったことが明らかになったのに、北朝鮮軍の被害が少ない場合、その影響は相当なものになるだろう」と懸念した。(東亜日報)>
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